リベルには、いろいろな人が訪ねてきます。
翻訳者、編集者、外国人、大学教授、大使館の方…、ときにはアナウンサーやタカラジェンヌが来ることも。
そして今日の到来者は、女子高生のTさん。
彼女が通っている都内の私立女子高では、1年生の夏休みに「憧れの仕事をしている人に取材をしてレポートを書く」という宿題があるそうです。
わたしの訳書『タラ・ダンカン』シリーズの大ファンのTさんは、訳者に会いにいこうと、ネットで調べて、ある日オフィスに電話をくれたのです。
セーラー服姿の可憐なTさんの最初の質問は、
「翻訳という仕事の魅力はなんですか?」
おっと、いきなりど真ん中に直球が来ました。
うーん。
毎日、翻訳は大変だとか、報われないとか、ぶつぶつ言っていて、そういえば、翻訳の魅力について久しく考えたことがなかったなあ・・・
3秒後。
「まずは、外国と日本の懸け橋になれるっていうスケールの大きさかな」
「2つ目は、自分の言葉で表現する《アーティスト》でありながら、原文を忠実に再現する《職人》でもなければならないこと」
「最後は、性別・年齢に関係なく、できあがった原稿だけで評価してもらえること」
Tさん、目をきらきら輝かせながらメモをします。
それから質問は、タラ・ダンカンの翻訳のことに…。
なんでもTさんは、中学1年生のときにタラ・ダンカンを読んで初めて本の面白さを知ったとか。
12巻上下で計24冊をあっという間に読破。
「X巻の上」とか言われただけで、表紙の絵、裏表紙の紋章、帯のコピーまで全部言えるんだそうです。
タラ・ダンカン (1~6巻)
タラ・ダンカン (7~12巻)
このシリーズ、12年かかって昨年ようやく完結しました。
翻訳した量は400字原稿用紙にして1万枚以上。
実にいろいろなことがありましたが、完結して1年経ってからもこんなコアなファンが訪ねてきてくれるとは!
「数か月後に進路を決めなきゃならなくて、これまでは理系の科目のほうが得意だったんですけど、翻訳家になれるなら文系もいいかなと思いはじめています」というTさん。
書籍翻訳をしていてよかった…と思える一日でした。
(Y)