野球ファンにはいわずもがなですが、「バッキー・デント」とは、1970年代にニューヨーク・ヤンキースで活躍した大リーガーの名前です。
小説の舞台は、1978年のニューヨーク。
ヤンキーススタジアムでピーナツ売りをする30代の売れない小説家テッドは、ある日、疎遠だった父が末期がんだと知らされる。レッドソックスが勝つと病状がよくなり、がぜん元気になる父……。
そんななか、レッドソックス vs ヤンキースの最終決戦の日がやってくる。
ヤンキース一打逆転のチャンスに打席に立ったのは、お世辞にも打撃が好調とはいえないバッキー・デントだった……
実在の試合をクライマックスに不器用な父と息子の姿を描く、笑って泣ける物語。
著者はなんと、アメリカの人気ドラマ『Xファイル』でモルダー捜査官を演じるディヴィット・ドゥカヴニーなのです。
ドゥカブニーは数年前に『ホーリー・カウ』というハチャメチャ痛快小説でデビューし、その才能が高く評価されました。
二作目の本書でもテンポのいい文体、博識ぶり、そしてダメ人間へのまなざしは健在です。
「人生は敗者のものだ」という帯の言葉に、思わず手に取りたくなるのでは?
(Y)