コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(4)中国

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中国(人口約14億人)

高希

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

現在(5月16日)中国本土では700人くらいの感染者がいて、そのうち半分は無症状です。感染者は海外からの新規入国者、すなわち輸入症例がほとんどです。まれに現地の病院で検出される本土症例もあります。例えば、先週(5月13日)、安徽省と遼寧省ではそれぞれ5人くらいの感染者が相次いで確認されました。新規入国者との接触による感染なのか、海鮮市場を訪れたことが原因なのか、感染ルートはまだはっきりしていませんが、現在追跡調査が行われています。いずれにしても、変異株の可能性があります。

中国ではすでに4月頃に輸入症例で変異株が検出されていましたが、蔓延はしていません。全国的に感染人数が少ないため医療現場は圧迫されていませんが、新規入国者の検疫、感染ルートの追跡やワクチン接種などの業務が増えており、医療従事者はいまなお強いストレスを感じているのではないかと思います。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか。

ワクチン接種については、現在(5月16日)、全国では3億人以上の人が接種を終えており、接種の申請にはみな積極的です。接種の順番は地方によって少し違いますが、基本的には医療従事者、国際航空の関係者などが団体接種や優先接種などの仕組みにより早めに接種できます。

一方、一般の人は所属のコミュニティのガイダンスに沿って、指定されたクリニックや病院に申請すれば接種できます。中国では、1回目のワクチン接種から1か月経ってから2回目を接種するようになっています。私はまだ接種していませんが、変異株への効果や副反応などを心配しているので、少し様子を見てから決めようと思っています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

中国では去年(2020年)の後半から、すでに国内の感染蔓延が終息して、人々は心配なく日常生活を送っています。ただし、公共交通機関に乗るときや人出が多い場所ではマスク着用を義務付けられ、行動ルートを追跡できるQRコードの提示を求められるといった防疫対策が講じられています。

国内外への移動はほとんど制限がありませんが、外国からの入国拒否や海外の感染蔓延などの影響で、海外への移動はずいぶん減っているのが現状です。一方、国内旅行は非常に盛んで、今年のゴールディンウィークの国内旅行者数は2億人を超え、コロナ禍の前より増えています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

日本の新聞でも報道されたと思いますが、海外へ買い物に行けない中国人はいまや自国で爆買いをしています。有名ブランドショップ店頭の長蛇の列や市内免税店の賑わいは、コロナ禍によって抑えられた中国人の購買意欲をつぶさに表しています。

また、コロナ禍はネットショッピングの利用増加にもますます拍車をかけました。もともとeコマースは中国の人々の生活に深く浸透しており、「タオバオ」をはじめ様々なネットサービスが発達していました。コロナの影響で、お年寄りや遠隔地に住む人など、多くの人がeコマースの便利さを体験することになりました。

そのほか、去年中国で話題になったひとつに「直播(ジーボー)」があります。「直播」とはライブ配信を意味します。内容は通信販売とほぼ同じですが、有名人やインフルエンサーがライブ配信をしながら商品を紹介し、テレビではなくECサイトやSNSサイトを媒体にして売るという仕組みです。手軽にいつでもどこでも見られ、格安に商品を買えることで中国の人々を魅了しました。

例えば、中国で有名な「直播」で人気のインフルエンサーViyaは、去年の独身の日(11月11日)に52億人民元(約883億円)の売り上げを記録しました。消費者はリアル店舗で買い物をするより、ECサイトや「直播」で買うようになりました。

このように、中国では発生から半年くらいでコロナが終息したとはいえ、コロナによる人々の消費行動の影響は大きく、いまもなお変化しつづけています。パンデミックが1年間あるいは2年間も続いている国々では、どれだけの変化が生まれているのでしょうか。世界をより良くする変化でありますように。コロナによって生まれ変わった世界が見られることを楽しみにしています!


高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住。