コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(6)アメリカ合衆国

united states of america

アメリカ合衆国(人口約3億人)

N.K.

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年5月22日現在、ジョンズ・ホプキンス大学の報告によるとアメリカ全土のコロナウイルス感染者総数は3309万人、死亡者は58万人を超えた。しかし、新規感染者数は減少傾向にあり、現在の1日の平均感染者数はピークだった今年1月(30万人)の11パーセントほどの数になった。

一方で、コロナウイルス変異株も広範囲で検出されており、テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州は日本政府に新型コロナウイルス変異株流行地域と指定され、それら4州から日本に入国する場合にはより厳しい制限が設けられている。

国外からアメリカへ入国する場合は、PCR検査による陰性証明書、または感染から回復したことを示す診断書の提示などが義務付けられており、入国後7~14日間の自己隔離を要請している州や地域もある。また、アメリカ入国前14日以内にインド、中国、イラン、シェンゲン協定(*)加盟国のヨーロッパ26か国、英国、アイルランド、ブラジル、南アフリカ共和国に滞在歴のある外国人に対しては現在も入国禁止措置がとられている。

*ヨーロッパの国家間において、出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを許可する協定のこと。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2020年12月からアメリカ各州で医療従事者や高齢者施設入所者を優先したワクチン接種が始まり、その後65歳以上の住民、日常生活に不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーと呼ばれる人達へと接種対象が広げられ、今年4月19日以降は全州において16歳以上のすべての人を対象とする接種が行なわれている。また、5月中旬になると多くの州で12歳から15歳までの子どもへのワクチン接種も開始された。

アメリカでは現在ファイザー製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製の3種のワクチン使用が承認されている。ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンについては接種後に血栓症が報告されたとして今年4月に一時使用が停止されたが、安全性の確認後、接種再開が承認された。

5月22日現在、アメリカでは人口の49.5パーセントがワクチンを1回以上接種し、39.3パーセントが必要回数のワクチン接種を完了している。一方で、1日当たりの接種回数は減少しており、政府や地方自治体は接種率を上げるための働きかけを続けている。例えば、ウェストバージニア州では若者のワクチン接種率を上げるため、ワクチンを接種した16歳から35歳の住民に100ドル(約1万900円)を支給、オハイオ州では接種を終えた人のなかから5人に抽選で1人100万ドル(約1億900万円)が当たる宝くじ方式を導入するなど、さまざまな特典をつける動きもある。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在アメリカではワクチンの普及と感染者数の減少に伴い、規制も緩和されて経済活動も再開され始めたが、昨年3月以降多くの地域で外出禁止令が発令されるなど行動制限が要請されて、経済的にも大きな打撃を受けた。

今年3月11日にバイデン大統領は新型コロナウイルス追加経済対策法案に署名し、1兆9000億ドル(約207兆円)規模の支援を盛り込んだ同法が成立した。これにより、3回目となる給付金として、高額所得者を除く米国籍保有者及び米国居住者に1人あたり1,400ドルが配られることになり、失業保険の追加給付も延長されることになった。

また、5月13日に米国疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン接種を完了すれば、混雑した屋内や公共交通機関を利用するときなどを除いて、屋内外を問わずマスク着用やソーシャル・ディスタンスの確保は必要ないとの新しい方針を発表した。ただ、実際の対応については自治体や企業の判断によって異なるため、混乱もみられるようだ。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

大学勤務の私は昨年3月中旬から14か月以上在宅勤務を続けており、その間、職場に行ったのはオンライン授業に必要な機器や教材を取りに行くための2回だけだ。

昨年8月末、私の勤める大学でも対面授業とオンライン授業を取り入れたハイブリット式授業で新年度をスタートさせたが、結局、実験などの特殊な授業を除くほとんどの授業はオンラインで実施された。今年8月末からの新学期は完全対面授業を再開するとの連絡が大学からきているが、まだ詳しい方針などは決まっていないようだ。

現在アメリカの300校以上の大学では、秋からの対面授業に出席する条件として、学生のワクチン接種の義務化を表明している。一方で、大学が学生のワクチン接種歴の提示をもとめることを禁じる方針を示した州もあり、このワクチン接種の義務化をめぐっては議論が続きそうだ。

感染者数が減少しているとはいえ、人口の過半数がワクチン接種を完了していない状態での規制緩和は時期尚早との声も聞かれる。コロナウイルス終息までにはまだまだ時間がかかるだろう。


N.K.:大学講師。アメリカ東部在住。