今月の新刊5冊目(2017年7月)

italia 『リラとわたし――ナポリの物語1』

世界でシリーズ累計550万部を突破した話題作が、ついに日本に上陸!

早川書房刊

早川書房刊

60代の作家、エレナ・グレコのもとに、長年の親友リラが失踪したという電話が入る。しかも、本人の姿がないだけではなく、まるでリラという人間などもとから存在しなかったかのように、彼女にまつわるものすべてが消えたという。
リラの家族は必死で行方を追おうとするが、エレナには、リラが自分の意思で姿を消したのだという確信があった。そしてエレナは、そんなリラに対抗するかのように、リラと自分の物語を何もかも詳細に記しはじめた……。

本好きでまじめなエレナと、ずば抜けた頭脳をもつ奔放なリラ。
戦後間もないナポリの下町を舞台に繰り広げられる、波瀾万丈な友情の物語。

イタリア、アメリカをはじめ、世界各地で大ブームを巻き起こしている「ナポリ四部作」の第一部にあたる本作では、リラとエレナの幼少期から思春期までの物語が描かれます。

著者のエレナ・フェッランテは、1943年生まれということ以外はすべて謎の作家。2016年には米TIME誌の〈世界で最も影響力のある100人〉に選ばれています。

ジュンパ・ラヒリ、ヒラリー・クリントン、グウィネス・パルトロウなど、各界の著名人も絶賛のリラとエレナの世界に、この夏、ぜひ浸りきってみてください。

(N)

今月の新刊4冊目(2017年7月)

france 『エル(ELLE)』

いま最も話題のフランス女優、イザベル・ユペールがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、みごとゴールデン・グローブ賞に輝いた話題の映画『ELLE』

これは、その原作です。

早川書房刊

早川書房刊

50代のミシェルは、親友のアンナと番組制作会社を経営している。パリ郊外の一軒家に独り暮らしの彼女は、ある日、家に押し入ってきた覆面の男にレイプされる。直後に、「またやるぞ」というSMSが送られてきた。犯人はいったい誰なのか……。

離婚した元夫、独り立ちできない一人息子、息子の嫁(別の男とのあいだの子を産もうとしている)、何十歳も年下の男を家に連れ込んでいる高齢の母親、親友のアンナ、アンナの夫、向かいに住む夫婦……などなど、登場人物はひと癖もふた癖もありそうな人物ばかり。

こう書くと、いかにもミステリー小説のようですが、単なる犯人探しや謎解きの物語ではありません。

むしろ、犯人がわかってからの展開になんともいえない怖さが……。

映画では、イザベル・ユペール演じる主人公をはじめどの女性も不気味なほどしたたかに描かれていて、そこが面白いのですが、原作では、一人一人の登場人物とのミシェルとの関係や心理的葛藤がもっと深く丁寧に描かれている分、映画より共感をもって受け入れられるのではないでしょうか。

映画を観てから原作を読むもよし、小説を読んでから映画を観ても楽しめます!

(Y)

今月の新刊2冊目、3冊目(2017年7月)

france 『おやすみえほんくん』『ぷんぷんえほんくん』

おやすみえほんくんは、青い表紙に寝ている顔。
ぷんぷんえほんくんは、真っ赤な表紙に怒っている顔。

あああ

パイ インターナショナル刊

開けてみると、見開きの右ページいっぱいにいろいろな顔のえほんくん。
左ページのネズミくんが、えほんくんの顔に突っこみをいれたり、チュッをしたり……。

子供はお母さんの真似が大好きです。
自分がいつの間にかお母さん役のネズミになって、最後には眠たがっているえほんくんを寝かしつけ、怒っているえほんくんをにっこりさせる。そんな絵本です。

小さいお子さんがいる方へのプレゼントにも最適!

(Y)

 

今月の新刊1冊目(2017年7月)

isreal 『ユダヤ人の起源――歴史はどのように創作されたのか』

“タブーを破り、イスラエル本国をはじめ、
世界各国で反響を巻き起こした画期的大著、
ついに文庫化”

筑摩書房刊(ちくま学芸文庫)

筑摩書房刊(ちくま学芸文庫)

本書は、「聖書」と「シオニズム」に焦点を当てて、これまでの「ユダヤ人観」「ユダヤ史観」を検討しながら、「ユダヤ人の起源」を探っていきます。
その結果、一般的に広く考えられている「ユダヤ人の概念」、つまり「ユダヤ人とは歴史的に独立した単一民族である」という見方は、事実とはちがう単なる神話にすぎないという結論が導かれます。

「国家」「国民」、ときには「民族」といった概念は人間がつくりだしたものにすぎない。
そうやって都合よくつくりだされた神話を信じた人間たちがいかに争い、血を流し合ってきたか……。

著者は、現代ヨーロッパ史を専門とするテルアビブ大学の名誉教授。
イスラエル人自らがユダヤ人についての既成概念に大きな一石を投じた書として、2008年にイスラエルで刊行されるや世界中で話題になりました。
その後フランス語版や英語版がぞくぞくと出版、日本でも2010年にランダムハウス講談社から刊行されました。

7年の時を経て、待望の文庫化です。

(T)

今月の新刊5冊目(2017年6月)

italia 『死の天使ギルティネ』(上・下)

昨年9月に刊行された『パードレはそこにいる』の続編です。
今回の舞台は、「パードレ」の事件から約半年後。

早川書房刊

早川書房刊

前作で固い絆で結ばれたかに見えた、勇猛果敢な女性捜査官コロンバとコンサルタントのダンテだが、ちょっとした諍いが原因で関係がぎくしゃくしている。

そんななか、ローマで衝撃的な事件が発生。
テルミニ駅に到着した急行列車の先頭車両の乗客が、全員死亡していたのだ。すぐにイスラム過激派が犯行声明を出すものの、犯人の足跡は一向にたどれない。業を煮やしたコロンバはダンテに犯人探しを依頼するが……

なんと、現在執筆中の次作が最終幕だとか。
名残惜しいですが、早く読みたくてたまりません!

(N)

今月の新刊4冊目(2017年6月)

great britain 『ドールハウス――ヨーロッパの小さな建築とインテリアの歴史』

ロンドンのヴィクトリア&アルバート(V&A)子供博物館所蔵のドールハウスを写真とともに紹介する、美しく貴重な1冊です。

パイ インターナショナル刊

パイ インターナショナル刊

著者はV&Aの元キュレーターで、ドールハウスとおもちゃの専門家。
解説も読みごたえたっぷりです。

「はじめに」を読んでドールハウスの歴史に詳しくなったあとは、思わず「かわいい!」と声をあげてしまう作品、細部へのこだわりぶりに感動する作品、こんなドールハウスもあるのか!と驚く作品の数々を美しい写真、詳細な解説とともに楽しめます。

17世紀から2000年代のものまで掲載されているので、ヨーロッパの建築とインテリアの歴史も俯瞰できます。

(N)

今月の新刊3冊目(2017年6月)

japan 『「欠点」を「強み」に変える就活力』

今月は、翻訳本ではなく、弊社がプロデュースと編集協力をした和書も刊行されました。

サンマーク出版刊

サンマーク出版刊

ここ一カ月ぐらい、都心ではリクルートスーツに身を固めた就活生たちをよく見かけます。書店にも、就活突破の「ハウ・トゥー本」がずらっと並んでいます。

マスコミ就職作文塾で長年講師を務めてきたという著者は、「最近、学生たちが書くESや作文がとても画一的になっている。それは、本やネットで就活情報があふれ、若者のほうも就活にマニュアルを求めているからだ」と言います。

“あなたならでは”のESを書かなければ、あなた自身をアピールできるはずはありません。実はあなたが「欠点」とか「マイナス面」と思っていることにこそ、「自分らしさ」や「強み」が隠れているのです。

書き方のコツだけでなく、「合格」「いまいち」「ダメ」の三つに分けて作文やES例を紹介。なかには、面接官(=就活生の親世代)の心をつかんだという成功例もたくさんのっています。

テンプレートやマニュアルに陥らず“あなたらしさ”で勝負したい就活生必読!
大人が読んでも、自分の人生を振り返るきっかけとなる一冊です。

(Y)

今月の新刊2冊目(2017年6月)

italia 『復讐者マレルバ――巨大マフィアに挑んだ男』

手がつけられない悪ガキで、「マレルバ(雑草)」と呼ばれていた少年アントニオ(著者グラッソネッリの仮の名)。

長じて二枚目のギャンブラーとなり、放蕩生活を送っていたある日、アントニオとその家族が巨大マフィアに襲われた。

早川書房刊

早川書房刊

復讐者と化したアントニオは、賭博で稼いだ金で銃を手に入れ、仇敵を追い詰める……。

マフィアの殺し屋が自らの半生と犯罪を赤裸々に告白する、衝撃の回想録です。

著者のひとり、ジュセッペ・グラッソネッリは、1980年代から1990年代にかけてシリチア・マフィア「コーザ・ノストラ」と熾烈な抗争を繰り広げた新興マフィアの中心人物。1992年に逮捕され、現在も服役しています。

レオナルド・シャーシャ文学賞受賞作。

(S)

今月の新刊1冊目(2017年6月)

france 『ちいさな国で』

「ブルンジ」という国を知っていますか?
アフリカ大陸の中央部にあり、ルワンダと国境を接しています。
この二つの国は、歴史的な歩み、フツ族とツチ族という民族構成、1990年代に民族紛争から大虐殺や内戦が起きたなど、似ているところも多く、よく「双子」と形容されるそうです。

早川書房刊

早川書房刊

主人公は、父はフランス人、母はルワンダ難民という、ブルンジの首都に住む少年。
少年は12歳まではアフリカの色彩あふれる大地で幸せに暮らしていましたが、その後、一家は民族対立の激化に巻き込まれていきます……。

フランスで「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞したこの小説の魅力は、ルワンダやブルンジの民族紛争の悲劇を描きながらも、成長していく少年の喪失感や追憶が「詩情豊かに」綴られているところです。

著者は、主人公と同じ出自をもち、現在はフランスでラッパーとして活躍しているとか。「Milk Coffee and Sugar」 (白と黒をイメージさせるネーミングですよね)という音楽グループも結成しています。ミュージシャンとしての最新のソロアルバムのタイトルは『Pili Pili sur un croissant au beurre ピリピリ(唐辛子)ののったバタークロワッサン』。

思わず、Youtubeで探してみたくなりました。

(Y)

今月の新刊5冊目(2017年5月)

germany 『樹木たちの知られざる生活――森林管理官が聴いた森の声』

5月とはいえ、すっかり初夏の陽気ですが、この季節にぴったりの本が刊行されました。

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早川書房刊

表紙の緑がさわやかな『樹木たちの知られざる生活』です。
ドイツで長年、森林の管理に携わっていた著者が、樹木の秘密を教えてくれます。

木々はただ大きく成長し、葉を茂らせるだけではありません。
樹木どうしが互いにコミュニケーションをとりあい、助け合い、ときには縄張り争いをすることも。
音に反応し、数を数え、そして、じつは長い時間をかけて自ら移動する……。

そう、まさしく人間のように「生きている」のです。

ドイツで70万部売れ、34カ国に翻訳されているネイチャーノンフィクション。
これを読むと、周りの木々がこれまでとは違って見えるのではないでしょうか。

(Y)