コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(8)ネパール

nepal

ネパール(人口約2861万人)

勝井裕美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年5月22日現在、感染者の累計は505,648名。第二弾のレポートを書いた2020年9月以降徐々に感染者が増え、10月には1日の新規感染者数が5,743名になったが、その後緩やかに減っていき、2021年3月には1日の新規感染者数は100名前後に落ち着いた。

しかし、インドでの感染者急増とそれに伴うロックダウンを避けてインドに出稼ぎに行っていた労働者の多くが帰国した際に、隔離等の感染対策がほぼ取られなかったため、国境付近で感染者が増えていった。

加えて、2020年末から政情が不安定になり、政治集会や支援者による行進が全国各地で行われたり、また3月下旬から文化的行事で多くの人が集まったが、その際に十分な感染対策が取られなかったりした。そのため、首都カトマンズを中心に4月中旬以降、感染者が急増し、5月12日には最多の9,238名の新規感染者を記録した。検査数が足りていないことも影響していると思われるが、陽性率(1日の検査数当たりの陽性者数の割合)は5月以降40%前後を推移しており、実際の感染者数はもっと多いと思われる。

現在、病床は足らず、医療体制はひっ迫している。患者は、酸素不足で入院できなかったり、病院にいてもただ廊下や建物入り口に座って待機せざるを得ない状況にある。

ネパール国内にはウイルスの遺伝子を解析する公的機関がないため十分な検査ができていないが、最近の感染の多くはインドで最初に確認された変異株B.1.617が多いとみられている。昨年の感染時よりも若い人が重症化しており、知人の知人まで広げると亡くなった方の話の数が格段に増えた。

この悲惨な状況に対し、最近ではネパール政府のみならず国連、WHO(世界保健機関)がネパールへの支援を呼びかけた。それに呼応して酸素シリンダーや酸素濃縮器など医療資機材の支援を各国政府が表明している。

レストランは営業不可だが、朝だけテイクアアウトなどをしている店も

レストランは営業不可だが、朝だけテイクアアウトなどをしている店も

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

これまでに211万名以上が第1回目接種を受けた。インド政府から無償提供されたアストラゼネカ社のワクチン100万回分を使った接種第1回目が2021年1月から医療関係者対象に始まり、その後、購入分100万回分と合わせて接種対象は高齢者にまで広がった。

また、中国政府が無償提供した80万回分のワクチンの接種が中高年まで対象を広げて行われた。まさに中国とインドのワクチン外交が繰り広げられている。しかし、インドでの感染者急増によって、既に購入予約ずみのアストラゼネカ社のワクチン(製造会社はインドのSerum Institute)の到着は10月以降になる見込みで、第1回目の接種を受けた人が第2回目を受けられない事態になりつつある。

ワクチンは基本的には、居住地域の行政事務所に接種登録をして指定されたコミュニティセンターや病院で接種する。しかし、感染者が急増した4月後半からは病院の前に接種待ちの行列が朝からでき、一時混乱が見られた。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

中央政府は2021年4月に入り、各郡(日本の都道府県に相当)や市町村に対して、人々の行動を規制する権限を与えた。4月中旬からProhibitory Order(行動規制)というロックダウンを課す郡が増え、5月17日現在77郡中74郡がProhibitory Order中である。例えば、首都カトマンズでは4月29日からProhibitory Orderが始まった。現在、食料品店や生活必需品店以外の営業は禁止、それらの店も朝10時までのみ営業可、車両通行は原則禁止、バス・飛行機の公共交通機関も停止、食料品や薬を買いに行くときだけ朝の10時までだけ外出可となっている。カトマンズへの出入りも交通許可証がないとできない。

国際線も停止中だが、エベレストに登頂していた人など数千人の外国人観光客がネパール国内に取り残されていると言われ、今後、いくつかの国が自国民を帰すために臨時退避便をアレンジすると思われる。

休業補償などはない。労働者の8割を超える日雇い労働者等のインフォーマルセクターの人々は仕事をなくし、食費や家賃支払いにも困っている。朝の買い出し時に出会う物乞いが増えた。

医療関係者や食料品運搬業者は通行できるが、警察の車両チェックあり

医療関係者や食料品運搬業者は通行できるが、警察の車両チェックあり

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

カトマンズのProhibitory Orderと同時に私も在宅勤務となった。買い物が朝しかできないので、6時半ごろ起床して、運動不足解消のためストレッチをしてから、買い物がてらに1時間ほど散歩している。そして、毎朝9時のオンライン定例会議に間に合うよう戻るというのが最近の日課となっている。普段であればカトマンズにいて会える距離にいる日本人とオンラインでおしゃべりするのが息抜きである。

ロックダウン生活が始まってまだ1か月だからか、感染者急増を怖がってか、多くの人が行動規制に従っている。一度昼間に外に出てみたことがあるが、通りにはほとんど車も人影もなく静かだった。

車両通行禁止

車両通行禁止

⑤近況について、ご自由にお書きください。

昨年に続いて2回目のロックダウン生活なので、どこで何が買えるか、どこで情報が得られるかがわかっており、昨年ほどの生活上の不安はない。ただ、異常に高い陽性率のなか、ひたすら感染しないようにしなくては!と思いながら生活している。

また、ネパールのような社会保障の整っていない発展途上国では、感染症そのものだけではなくロックダウンによる経済的影響が、もともと経済的に厳しい人々に顕著に表れてしまう。NGOとしてできることをやらねばと他のNGOと検討を進めており、できるだけ早く形にしていきたいと思う。


勝井裕美(かつい・ひろみ):特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会 (https://www.shaplaneer.org/)ネパール事務所長。ネパール・ラリトプール市在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(7)チェコ共和国

Czech

チェコ共和国(人口約1065万人)

岡戸久美子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第2弾のレポートを提出したあたりから感染者増加の兆候が見え始めていたチェコでは、その後感染が急速に広まり、2020年10月5日に非常事態宣言が発令されました。人口当たりの新規感染者数が欧州最悪を記録し、多少の規制緩和があったかと思えばすぐに規制が強化されるといったことを繰り返しながら、非常事態は今年4月の宣言解除まで188日間継続する結果となりました。

これまでの死者数は3万人を超えます。居住地区からの自由な移動の制限、夜間外出禁止、店舗や飲食店の営業停止などにより不自由な生活や経済的不安を募らせた人々がロックダウン反対デモを行ったり、警察と衝突したりといったニュースもありました。

プラハの旧市街広場

プラハの旧市街広場

今年3月にはコロナに感染して亡くなった方々を悼み、25,000もの十字架がこの石畳に描かれました。いまでもこのように、一部消えずに残っています。

チェコ3ー2

十字架が描かれた石畳

しかしワクチン接種が功を奏したのか、感染状況が改善傾向にあるとしてこの4月から段階的に規制緩和が進んでいます。

学校は人数制限のためのローテーション授業の段階を経て、やっと全員が登校できるようになり、屋外のみ営業が許可されることとなった飲食店では早速たくさんの人々がビールを手に集っています(ただし利用者は陰性を証明する書類等を携帯する必要あり)。少しずつですが、やっと生活を楽しむにぎやかな声が聞こえるようになってきました。今度こそ終息に向かってくれることを願ってやみません。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2020年のクリスマス以降、医療従事者や高齢者など優先順位に基づき順にワクチン接種が進んでおり、現在、一般の40代の人々のワクチン接種予約が可能となっています。6月初めには16歳以上のすべての人が予約対象となる見通しで、接種費用は公的健康保険でカバーされます。

ただし、チェコの公的保険制度の対象とならない外国人長期滞在者(駐在員など)については5月末をめどに予約開始できることをめざしていまだシステムが改修中で、費用は自己負担となるようです。

現在チェコで認可されているワクチンは4種(ファイザー・ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン)、接種するワクチンを自分で選ぶことはできません。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

上述のように、規制は徐々に緩和されてきている段階ですが、国内全企業には週1回の抗原検査を全従業員に実施するよう義務付けられており、職場で家族以外の人と接触する場合は個人事業主でもその対象となります。(費用は保険負担)

現在は終了していますが、法定隔離が必要となった被雇用者への手当支給、FFP2などの防護マスク着用義務(通常のマスク不可)にともなう防護マスクへの付加価値税の一時的な免除などの措置もありました。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

十分な検証がなされないままのワクチン普及に対する懸念の声もありますが、変異株の広がりなどで規制が極限まで強化されてゴーストタウンと化していた街に少しずつ活気が戻り、子どもたちの笑い声が聞こえるようになった背景にはワクチンの普及があるのでは、と個人的には感じています。とはいえ、こちらのワクチンは日本で認可されていないものもあり、どのワクチンを接種するか自分で選択することができないため、もう少し様子をみたいと思っています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

規制緩和がはじまり、やっと厳しい時期を乗り越えたのではという希望と喜びも大きいですが、改めて過去の各国レポートを振り返ってみると、まだまだこの先どうなるのかわからないといった不安はあります。

チェコでは昨年、第1波を封じ込めたとして夏のホリデーシーズンに観光を全面開放したことや、その後感染者が増えつつあるのを知りながらロックダウンを避け続けたことがひどい感染拡大を招いたのではという見方があります。どんな状況にあっても、気を抜いてはいけないのだと改めて感じました。まだまだ気を引き締めつつ、一刻も早くあらゆる地域の状況がよくなることを願うばかりです。


岡戸久美子(おかど・くみこ):英語翻訳者・通訳者。チェコ共和国プラハ在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(6)アメリカ合衆国

united states of america

アメリカ合衆国(人口約3億人)

N.K.

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年5月22日現在、ジョンズ・ホプキンス大学の報告によるとアメリカ全土のコロナウイルス感染者総数は3309万人、死亡者は58万人を超えた。しかし、新規感染者数は減少傾向にあり、現在の1日の平均感染者数はピークだった今年1月(30万人)の11パーセントほどの数になった。

一方で、コロナウイルス変異株も広範囲で検出されており、テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州は日本政府に新型コロナウイルス変異株流行地域と指定され、それら4州から日本に入国する場合にはより厳しい制限が設けられている。

国外からアメリカへ入国する場合は、PCR検査による陰性証明書、または感染から回復したことを示す診断書の提示などが義務付けられており、入国後7~14日間の自己隔離を要請している州や地域もある。また、アメリカ入国前14日以内にインド、中国、イラン、シェンゲン協定(*)加盟国のヨーロッパ26か国、英国、アイルランド、ブラジル、南アフリカ共和国に滞在歴のある外国人に対しては現在も入国禁止措置がとられている。

*ヨーロッパの国家間において、出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを許可する協定のこと。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2020年12月からアメリカ各州で医療従事者や高齢者施設入所者を優先したワクチン接種が始まり、その後65歳以上の住民、日常生活に不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーと呼ばれる人達へと接種対象が広げられ、今年4月19日以降は全州において16歳以上のすべての人を対象とする接種が行なわれている。また、5月中旬になると多くの州で12歳から15歳までの子どもへのワクチン接種も開始された。

アメリカでは現在ファイザー製、モデルナ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製の3種のワクチン使用が承認されている。ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンについては接種後に血栓症が報告されたとして今年4月に一時使用が停止されたが、安全性の確認後、接種再開が承認された。

5月22日現在、アメリカでは人口の49.5パーセントがワクチンを1回以上接種し、39.3パーセントが必要回数のワクチン接種を完了している。一方で、1日当たりの接種回数は減少しており、政府や地方自治体は接種率を上げるための働きかけを続けている。例えば、ウェストバージニア州では若者のワクチン接種率を上げるため、ワクチンを接種した16歳から35歳の住民に100ドル(約1万900円)を支給、オハイオ州では接種を終えた人のなかから5人に抽選で1人100万ドル(約1億900万円)が当たる宝くじ方式を導入するなど、さまざまな特典をつける動きもある。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在アメリカではワクチンの普及と感染者数の減少に伴い、規制も緩和されて経済活動も再開され始めたが、昨年3月以降多くの地域で外出禁止令が発令されるなど行動制限が要請されて、経済的にも大きな打撃を受けた。

今年3月11日にバイデン大統領は新型コロナウイルス追加経済対策法案に署名し、1兆9000億ドル(約207兆円)規模の支援を盛り込んだ同法が成立した。これにより、3回目となる給付金として、高額所得者を除く米国籍保有者及び米国居住者に1人あたり1,400ドルが配られることになり、失業保険の追加給付も延長されることになった。

また、5月13日に米国疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン接種を完了すれば、混雑した屋内や公共交通機関を利用するときなどを除いて、屋内外を問わずマスク着用やソーシャル・ディスタンスの確保は必要ないとの新しい方針を発表した。ただ、実際の対応については自治体や企業の判断によって異なるため、混乱もみられるようだ。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

大学勤務の私は昨年3月中旬から14か月以上在宅勤務を続けており、その間、職場に行ったのはオンライン授業に必要な機器や教材を取りに行くための2回だけだ。

昨年8月末、私の勤める大学でも対面授業とオンライン授業を取り入れたハイブリット式授業で新年度をスタートさせたが、結局、実験などの特殊な授業を除くほとんどの授業はオンラインで実施された。今年8月末からの新学期は完全対面授業を再開するとの連絡が大学からきているが、まだ詳しい方針などは決まっていないようだ。

現在アメリカの300校以上の大学では、秋からの対面授業に出席する条件として、学生のワクチン接種の義務化を表明している。一方で、大学が学生のワクチン接種歴の提示をもとめることを禁じる方針を示した州もあり、このワクチン接種の義務化をめぐっては議論が続きそうだ。

感染者数が減少しているとはいえ、人口の過半数がワクチン接種を完了していない状態での規制緩和は時期尚早との声も聞かれる。コロナウイルス終息までにはまだまだ時間がかかるだろう。


N.K.:大学講師。アメリカ東部在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(5)マダガスカル

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マダガスカル(人口約2697万人)

フランス語情報センター翻訳チーム
(中平信也、脇るみ子)

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

マダガスカルには依然として入ることができないので、第三弾レポートも日本からマダガスカルの現状をお伝えする。

前回の報告では2020年8月21日の統計から「第一波のピークは越えた」とご報告した。マダガスカル政府も毎日行っていたコロナ禍関連の統計結果の発表を週に一度に変えた。ところが、2021年に入ると、同統計結果の数字は急速に悪化しはじめ、3月28日には過去最悪を記録した。また、国境封鎖を行っているにもかかわらず、南アフリカ型の新型コロナウイルスの感染が確認された。第一波よりも今回の第二波の方がより多くの感染者、重症者、死者をもたらしている。

5月9日現在の状態は以下の通り。
検査数:192,294件
感染者数:39,162人(うち、重傷者数:309人)
快復者数:36,261人
死亡者数:729人(昨年は1年を通じて約300人)
治療中の患者数:2,172人

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

第一弾のレポートでご紹介したように、マダガスカルには伝統生薬アルテミシアを原料としたコロナ予防/治療薬CVO(Covid Organics)が存在し、大統領自らがこの治療薬の宣伝をし、輸出も行っていた。このため、当初は「ワクチンは不要」との態度をとっていた。しかし、猛威をふるう第二波への対策を求められた政府は、CVOによる予防・治療以外の選択肢を国民に提供するため、5月2日、ワクチンの接種を発表した。

これを受けて5月7日、COVAXファシリティ(WHO主導によるワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み。富裕国とワクチンを購入することが出来ない貧困国の格差を縮めることを目的とする)によるアストロゼネカ社のワクチン25万回分(2回の接種を前提として12万5,000人分)がイヴァト国際空港に届けられた。

COVAXは、受け取る側の国に対して、ワクチン配布と並行して接種を実施するスタッフの訓練や、適正温度でのワクチンの管理と運搬まで行い、最大で支援適格国の国民20パーセントに対して無償でワクチン接種の便宜を提供する。アストラゼネカ社のワクチンは、一般的な冷蔵庫の温度である2~8度での保管が可能であり、他社製に比して安価である。今回到着分は、医療関係者と国防関係者、高齢者を対象に優先接種が行われる。

他方、駐マダガスカル日本大使館が在留邦人の接種希望者を募ったとのことだ。マダガスカルのフランス大使館はマダガスカル在住フランス国籍保有者とEU加盟国の在留者にフランス大使館内に設置した会場でワクチンの接種を開始しているが、日本大使館がマダガスカル在住日本人にいつ接種を始めるのかは不明である。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

5月2日の政府発表により、国家保健非常事態宣言が2週間延長された。同宣言の詳細は第一弾のレポートで報じているが、その基本は、夜間外出の禁止(午後9時から午前4時まで)、コロナ蔓延地域の封鎖、学校の閉鎖(バカロレア試験クラスを除く)、集会の禁止などによる人流の抑制である。国際便の運航は引き続き停止しており、外国からマダガスカルに入国することは原則できない。在留外国人が帰国のためにマダガスカルを出国することは許可される。また、国内便も5月5日から全面的に運休。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

夜間外出禁止は以前からのことであり、私たちが拠点としているマダガスカル第二の都市トアマシナではJICAの港湾拡張プロジェクトの建設作業が通常通り継続されている。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

トアマシナの上記プロジェクト関係者には、血液採取によりコロナ感染の有無の検査が行われている。現地にいる日本人プロジェクト・マネージャーは検査結果が陽性で南アフリカに搬送された。また、私たちの関わる現地法人ソマコワ社にも2名のマダガスカル人に陽性者がでた。この2名は自宅静養中だが、ソマコワ社の唯一の日本人には「以前にコロナに罹患したが現在は完治。感染の恐れが残っているので要注意」との検査結果が伝えられた。

「以前にコロナに感染していた」という看過しがたい結果だが、マダガスカルのコロナ検査には精度に問題があると検査を始めた頃から言われているので、私たちは誤診だと思っている。おそらく、血液中にコロナウイルスによりできる抗体に似た抗体があっただけだろう。先進国を中心にコロナはその猛威を低下させているが、マダガスカルはコロナ感染に細心の注意を払わなければならない時期にまだある。


株式会社フランス語情報センター翻訳チーム:代表の中平信也(なかだいら・しんや)とパートナーの脇るみ子(わき・るみこ)で運営。どちらも日本在住のフランス語通訳・翻訳者。マダガスカルと日本のあいだを定期的に往復している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(4)中国

china

中国(人口約14億人)

高希

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

現在(5月16日)中国本土では700人くらいの感染者がいて、そのうち半分は無症状です。感染者は海外からの新規入国者、すなわち輸入症例がほとんどです。まれに現地の病院で検出される本土症例もあります。例えば、先週(5月13日)、安徽省と遼寧省ではそれぞれ5人くらいの感染者が相次いで確認されました。新規入国者との接触による感染なのか、海鮮市場を訪れたことが原因なのか、感染ルートはまだはっきりしていませんが、現在追跡調査が行われています。いずれにしても、変異株の可能性があります。

中国ではすでに4月頃に輸入症例で変異株が検出されていましたが、蔓延はしていません。全国的に感染人数が少ないため医療現場は圧迫されていませんが、新規入国者の検疫、感染ルートの追跡やワクチン接種などの業務が増えており、医療従事者はいまなお強いストレスを感じているのではないかと思います。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか。

ワクチン接種については、現在(5月16日)、全国では3億人以上の人が接種を終えており、接種の申請にはみな積極的です。接種の順番は地方によって少し違いますが、基本的には医療従事者、国際航空の関係者などが団体接種や優先接種などの仕組みにより早めに接種できます。

一方、一般の人は所属のコミュニティのガイダンスに沿って、指定されたクリニックや病院に申請すれば接種できます。中国では、1回目のワクチン接種から1か月経ってから2回目を接種するようになっています。私はまだ接種していませんが、変異株への効果や副反応などを心配しているので、少し様子を見てから決めようと思っています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

中国では去年(2020年)の後半から、すでに国内の感染蔓延が終息して、人々は心配なく日常生活を送っています。ただし、公共交通機関に乗るときや人出が多い場所ではマスク着用を義務付けられ、行動ルートを追跡できるQRコードの提示を求められるといった防疫対策が講じられています。

国内外への移動はほとんど制限がありませんが、外国からの入国拒否や海外の感染蔓延などの影響で、海外への移動はずいぶん減っているのが現状です。一方、国内旅行は非常に盛んで、今年のゴールディンウィークの国内旅行者数は2億人を超え、コロナ禍の前より増えています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

日本の新聞でも報道されたと思いますが、海外へ買い物に行けない中国人はいまや自国で爆買いをしています。有名ブランドショップ店頭の長蛇の列や市内免税店の賑わいは、コロナ禍によって抑えられた中国人の購買意欲をつぶさに表しています。

また、コロナ禍はネットショッピングの利用増加にもますます拍車をかけました。もともとeコマースは中国の人々の生活に深く浸透しており、「タオバオ」をはじめ様々なネットサービスが発達していました。コロナの影響で、お年寄りや遠隔地に住む人など、多くの人がeコマースの便利さを体験することになりました。

そのほか、去年中国で話題になったひとつに「直播(ジーボー)」があります。「直播」とはライブ配信を意味します。内容は通信販売とほぼ同じですが、有名人やインフルエンサーがライブ配信をしながら商品を紹介し、テレビではなくECサイトやSNSサイトを媒体にして売るという仕組みです。手軽にいつでもどこでも見られ、格安に商品を買えることで中国の人々を魅了しました。

例えば、中国で有名な「直播」で人気のインフルエンサーViyaは、去年の独身の日(11月11日)に52億人民元(約883億円)の売り上げを記録しました。消費者はリアル店舗で買い物をするより、ECサイトや「直播」で買うようになりました。

このように、中国では発生から半年くらいでコロナが終息したとはいえ、コロナによる人々の消費行動の影響は大きく、いまもなお変化しつづけています。パンデミックが1年間あるいは2年間も続いている国々では、どれだけの変化が生まれているのでしょうか。世界をより良くする変化でありますように。コロナによって生まれ変わった世界が見られることを楽しみにしています!


高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住。


 

コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(3)アイルランド

アイルランド

アイルランド(人口約490.4万人)

石川麻衣

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

1日の感染者数は300人から400人の間を2か月ほどさまよっている状態ですが、病床利用率は1月のピーク時に比べれば大幅に下がりました。カトリック教徒が大半を占めるアイルランドでは、クリスマスは欠かすことのできない行事。クリスマスに合わせて去年の12月に規制を一気に緩めたのが大きな間違いでした。これを機に感染者数が跳ね上がり、変異種の影響もあって数字が下がらす、レベル5のロックダウンが5か月間も続きました。

レストラン(一部、テイクアウトは継続)、パブ、小売店、プール、理髪店、劇場、映画館、ジムなどすべてクローズ。仕事や身内の介護といったやむを得ない理由がない限り、活動範囲は5キロメートル圏内にとどめなければなりませんでした。

クリスマス前に一時的に賑わったダブリンの中心街

クリスマス前に一時的に賑わったダブリンの中心街

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

昨年末あたりから、医療従事者や高齢者を優先にワクチン接種がはじまりました。70歳以上のグループに入る夫も4月末にワクチン1回目を、5月頭に2回目を無事に接種。ワクチン接種に関わっている近所の看護師さん曰く、目立った副反応の事例はあまり聞かないそうです。夫も痛くもかゆくもなかったようで、その日の終わりには打ったことすら忘れていました。

現時点(5月23日)で、全人口の10.5パーセントが2回目の接種を終えています。高齢者や、医療従事者、重症化するリスクの高い人たちなどの優先グループを経て、今月から40代の人たちの受付が開始されます。一時は、登録しているGP(一般開業医)から直接「接種しに来てください」と連絡が来るかたちでしたが、4月15日より、69歳以下の年齢層は、国の政府機関が運営するHSE(国民保険サービス)のウェブサイト上で予約するようになりました。

基本的に滞りなく進んでいますが、ワクチン接種予約を含む国民保険サービスシステムがロシアを拠点とする犯罪集団によるサイバー攻撃を受け、現在、大きな問題になっています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

最近は、「ウォークイン・テスト・センター」が各地にでき、症状がなくても予約なしに立ち寄って無料で検査ができる施設が開設されました。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

アイルランドの冬は夜が長く、太陽の当たる時間が短いのですが、冬の暗さとロックダウンが相まって、青少年が非常に不安定でした。多くの労働階級(貧困層)がコロナ禍で職を失うことにより、アイルランドに根付いた階級差がさらに表面化したように思います。

長期化した学校閉鎖も影響したのか、労働階級の住む地域で、青少年の犯罪が目立ちました。去年のハロウィン前後は花火の投げ合いが問題になり、冬の間は、ご近所さんの車の窓が立て続けに割られ、殺傷事件が後を絶ちませんでした。家の近くでは、有望視されていたサッカー少年がナイフを使った喧嘩に巻き込まれて亡くなり、また職場からの帰宅途中だった50代のアジア系女性も若い男の子に首を刺されて亡くなりました。

警察が没収したナイフは、数えきれません。そして規制が緩みつつあるいま、今度はストレスを溜めた若者1,000人以上が夜な夜なダブリンのとある広場に集い、酔っ払って大暴れ。苦情が相次ぎ、広場そのものが閉鎖されるという事態に発展しました。

長い冬を終えて、ようやく春を迎えた頃は、こちらの春の象徴でもあるスイセンの花が多くの人の心を癒しました。また、アイルランドには渡り鳥や野鳥が多くみられます。パンデミックを機に鳥を観察する人が爆発的に増えたとか。私もそのひとりです。鳥の種類の多さに魅了され、鳥の写真が100枚以上もたまってしまいました。規制が緩和されてから少し足を伸ばして野鳥を見に行くようになったものの、まだ店は閉まっていて公共トイレもゼロなので、トイレ対策が意外と大変です。

春の到来を告げる水仙。多くの人々を元気づけました

春の到来を告げるスイセン。多くの人々を元気づけました

⑤近況について、ご自由にお書きください。

コロナ禍で影響を受けた人への失業手当(補助金)が6月末で打ち切られるといわれていますが、もう少し延ばしてほしいという声もあります。近所でも、かつてお店があった場所が売りに出されているようで、「売り出し」の看板が目立ちます。在宅勤務になるだけで特に影響を受けなかった人や、多忙極まりない日々から逆に解放された人がいる一方で、職を失い、精神疾患に悩む人も増え、メンタルヘルス・サービスが追いついていない状態です。実際、ロックダウン中にドラッグ使用者が大幅に増えたと言われています。

定期的にダブリンの中心で行われているロックダウン反対デモには、陰謀説を信じる不思議な宗教団体の存在もあり、それが目立つ一方で、コロナ禍で職を失ったごく普通の人たちも参加しています。しかし、1年間の空白期間を経て発表された演劇作品は優れたものばかりです。長い間家にこもって自分自身と向き合った末に良い作品が生まれているのかもしれません。

そんななか、アイルランドの科学コンクールで、16歳の男の子が「3分間入れるだけで、入れたものがウィルスフリーになるケース」なるものを発明し、最優秀賞を受賞しました。そんな微かな希望を感じつつ、かたやコロナ疲れを少し感じながらも、夏は少し遠出して田舎でささやかな「ステイケーション(国内旅行)」を楽しもうと思っています。

鳥を観察する人が激増。ダブリンに生息する野鳥のひとつ、オオジュリン

鳥を観察する人が激増。ダブリンに生息する野鳥のひとつ、オオジュリン


石川麻衣(いしかわ・まい):通訳、英日翻訳家(主に演劇、芸術関係)、ナレーター。国際演劇協会会員。アイルランド・ダブリン在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(2)インド、バングラデシュ

インド bangladesh

インド(人口約13.66億人)、バングラデシュ(人口約1.63億人)

大橋正明

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

連日インドメディアは、自国の悲惨な状況とそれに対応した外国支援の動きを伝えている。実際5月13日時点のインドでは、4月以来新規感染者数がどんどん増え続け、5月6日には1日に41万人以上、死亡者数も4,000人を超した。病床や酸素の不足に加えて、医療インフラが乏しい地方への広がりも報じられている。この原因は、感染力が強いとされるインドの変異株が広がったこと、インドの与党BJP(インド人民党)の支持者が多いヒンドゥー教徒数千万人が参加するクンブメーラという大祭が通常どおり開催されたこと、いくつかの州で行われた州選挙でBJPなどが大規模集会を開催したことなどだろう。

インドの新規感染者数も、ここ数日は多少の減少を見せ、5月20日には約26万人になった。これ減少が持続的になるかは、もう少し様子を見る必要がある。この新しい変異株は、日本にとっても脅威になりかねない。

インドの爆発的感染拡大は、北隣のネパールでも西隣のパキスタンでもほぼ同様だが、ピークがインドより少し早い。ネパールでは1日の新規感染者が9,300人ほどの5月11日がピークで、その後少し減少を見せた。しかしその後、再び増加の気配もみせている。一方パキスタンでは、1日の新規感染者が6,000人を超えた4月中旬がピークで、その後少しずつ減少が続き、5月中旬には2,500人程度になったが、ネパールと同様にその後再び上昇している。

インドとミャンマーに挟まれたバングラデシュは、今回の流行のピークがパキスタンよりさらに早く、4月11日に新規感染者が約7,600人に上った。4月11日以降減少に転じ、5月半ばに1,000人以下になったが、5月18日には1,272人になりその後増加が続いている。

インドの新規感染者数も、ここ数日は多少の減少を見せている。インドがパキスタンやバングラデシュのような持続的減少に転じるかは、もう少し様子を見る必要がある。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

インドは世界で最も早く今年の1月中旬に予防接種を始めた国のひとつで、自国で開発や生産したワクチンを周辺国とも無償・有償でシェアしていた。5月13日の時点で1回でも接種を受けた人数は1.76億人と多いが、13億人を超す人口のうち、2回接種を終えたのは2.8パーセントでしかなく、まだ多くの国民が取り残されている。

その一方、前述のインド国内での爆発的な感染拡大で、ワクチンが国内でも不足しはじめ、予定していた近隣諸国への輸出や国際枠組みCOVAX(*)への提供がストップしただけでなく、ワクチン輸入に転じた。

バングラデシュはインドより少し遅れたが、同じ1月、インド製ワクチンを使って接種を開始した。5月13日時点で、1回でも接種を受けたのは931万人で、2回終えた人の割合は2.1パーセントである。先述のインドの状況変化でインドからの輸入が止まったことで、バングラデシュ政府は急遽中国やロシアを含めた他国からの輸入を模索しているが、かなり先になりそうだ。

その結果、そうした国々からの影響力が南アジアで強まることを、インドもバングラデシュも心配している。一方、これらの2国よりかなり遅れて接種が始まった日本だが、おそらくまもなく接種率で逆転するだろう。インドと南アフリカがWTO(世界貿易機関)に提案し米国を含めた多数の国が支持している、Covid-19対策関連の知的財産権の一時停止が早急に実現しないと、ワクチン生産には時間がかかり、貧しい国へのワクチンの適正価格での提供はさらに遅れるだろう。

*新型コロナウイルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的枠組み。WHO主導により、2020年に発足。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

インドの中央政府は、このパンデミックへの対応策を州政府に任せている。例えばデリー首都圏政府は、4月19日からロックダウンを始め、その後3回延長して、現在も続いている。インド第三の大都市コルカタを抱える西ベンガル州政府も、しばらく前から行動制限していたが新規感染者の増加が止まらず、5月16日から交通機関、オフィスやモール、学校の授業やあらゆる集会などを月末まで完全停止する。他の大都市や州も大同小異だ。

バングラデシュ政府も4月14日からロックダウンを開始し、同様に延長を繰り返し、5月23日までロックダウンの予定だ。公立の小学校も一年以上閉鎖が続いており、一部でオンライン授業が行われているが受講できない子どもも多く、教育の遅れや格差は深刻な問題だ。

南アジアでの感染拡大を受け、日本政府は5月12日から当分のあいだ、インド、バングラデシュ、パキスタン、ネパールからの日本人を除く来日者については、「特段の事情」がない限り上陸拒否を始めた。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

このようななか、ミャンマーから逃れバングラデシュの人口密度の高いキャンプ地で暮らす100万人ほどのロヒンギャ難民では、巷ほどのコロナ大流行が報告されていないことは不幸中の幸いだった。しかし、5月21日から1週間、ロヒンギャキャンプもCOVID-19の流行でロックダウンが始まった。これまでに 823 人のCovid-19の患者で、12人の死者(1.5パーセント)とのこと。このため、食料配給と医療関係以外の活動が停止された。

WHOの報告によると、4月11日までの時点でロヒンギャの患者の総数は465 人で死者10人(2.2パーセント)だったので、わずか40日間で新規患者が358人、新規死者が2人(0.6パーセント)増えたことになる。

「誰も取り残さない」を掲げるSDGsの時代に、この難民たちへのワクチン接種は、いつ誰の負担で行われるのだろうか。


大橋正明(おおはし・まさあき):聖心女子大学教授、聖心女子大学グローバル共生研究所客員研究員、SDGs市民社会ネットワーク共同代表、シャプラニール=市民による海外協力の会監事、日本バングラデシュ協会会長 。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(1)フランス

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フランス(人口約6706万人)

白仁高志

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

フランスは昨年(2020年)夏に、一時、ロックダウンが解除されました。その後また感染者数が増えて、10月30日に2度目のロックダウンが始まりましたが、春のロックダウンほど厳しいものではなく、ひとりで運動をする目的での外出が1日1時間、自宅から10kmまで、内務省のウェブサイトからダウンロード可能な証明書携帯を条件として認められました。

春とは違って学校も閉鎖されませんでしたが、食料品など日常生活に必要なものを売る店以外のカフェやレストランなどは営業を停止し、テニスクラブ、ジムなどのスポーツクラブも閉鎖されました。この2回目のロックダウンは、例えばイギリスで行われたものと比べて緩やかだったので、なかなかその効果が現れず約 2か月間続きました。2回目のロックダウンの解除にもかかわらず、私が所属するパリ北郊外のクレイユ(Creil)のテニスクラブは閉鎖が続き、今年(2021年)4月になってようやく再開されています。その後、3月に感染者数が1日あたり約3万人となり再度急増したため、3月19日に3度目のロックダウンが始まり、今回は学校も3週間休校になりました。

5月14日時点で、フランスのこれまでの感染者数の総数は584万8,154人、死者が10万7,452人(フランス公衆衛生局データ)。2回目のロックダウン以降、感染の大部分は、英国、南アフリカなどの変異株によるものとなっています。3回目の外出制限は以下のようなスケジュールで緩和される予定です。

5月3日、日中の外出制限の終了。

5月19日、夜間外出禁止を午後7時以降から9時以降にして、商店、カフェ・レストランのテラス席が営業を再開し、美術館、映画館、劇場も人数制限をして再開。

6月9日、夜間外出禁止を午後11時以降とし、カフェ・レストランの店内での営業を再開、体育館の再開、テレワークの緩和。6月30日、外出禁止令の終了。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ワクチン接種は、2020年12月27日に老人用施設に入所している高齢者、医療従事者などから始まり、2021年4月12日から55歳以上、5月10日から50歳以上、5月12日から全ての成人が対象となります。5月14日の時点で、国民の約30パーセントにあたる1929万9,124人が1回目接種済みとなっています(フランス公衆衛生局データより)。

私が住んでいるクレイユ市でも市内に集団接種センターがあり、また、接種用の巡回バスも市内を回っており、事前に電話で予約して接種が受けられます。今後、8月までに成人全員(5200万人)が接種を受けるには1日約60万回の接種が必要で、国民全員の接種が完了するのは現在のペースだと2021年12月4日になります(covidtracker.frの情報より)。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

上述のように、現在はフランス国内での移動制限が解除されています。各県によって違いはあるものの、マスクは引き続き、ほとんどの公的な場所で義務化されています。また、入国・出国制限については、EU圏外からフランスへ入国する人は出発前の72時間以内にRT-PCR検査(RNAを対象として逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いた検査)を受けて陰性証明をもらい、搭乗時に航空会社に提示して、到着後1週間、隔離生活をし、1週間後にもう一度検査をすることが義務付けられています。

休業補償については、翻訳の仕事をしている私のような業種の例ですが、外出制限期間中の各月の収入が2019年の同じ月よりも50パーセント以上減った場合にその差額が全額フランス政府により補償されます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

これまで夜7時以降の夜間外出制限が続いてきたので、窮屈な思いをしている人が、特に若い人たちに多いものと思われます。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

感染者数、死者数は漸減傾向ですが、まだ完全に収まっていないなかで、フランス政府は制限措置を緩和していこうとしており、再度の感染者数増加がないかどうか注意深く見守る必要があると思っています。


白仁高志(しらに・たかし):フランス語・英語の翻訳・通訳者。フランス・パリ郊外のクレイユ在住。現在、日本に一時帰国中。


コロナ終息に向けて:各国レポート「第三弾」をはじめます

世界じゅうが新型コロナウイルスの脅威にさらされはじめてから、すでに1年半近く。

コロナ終息を願ってはじめたこのブログの第一弾からちょうど1年、日本が第二波に見舞われた直後の第二弾からも半年以上たちます。

現在、日本では変異株の感染が増え、2021年5月19日の新規感染者数は全国で5,819人、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県に緊急事態宣言が出され、さらに「まん延防止等重点措置」が実施されている区域もあります。

一方でワクチン接種がはじまっているものの他の先進国に比べてなかなか進まず、2か月後に開幕が「予定」されている東京オリンピックについても不確定要素が多く、新型コロナウイルスをめぐる状況はまだまだ先行きがみえません。

では、海外はどうなのでしょうか。変異株が驚異的な広がりをみせている国、何度目かのロックダウンに突入している国、ワクチン接種率があっというまに高まって人々がどんどんマスクをはずして外出している国……。日々さまざまなニュースが入ってきますが、どれも断片的です。各国の実情まではなかなかみえてきません。

「各国レポート」第三弾はコロナ終息期に予定していましたが、そんないまだからこそ、各国から寄せられるレポートが貴重な記録と情報源になるのではないかという思いから、これまでご協力いただいた方々に第三弾の執筆をお願いしました。

第二弾のように第三弾も、以下の質問に答えていただくという形をとります。

  1. 新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
  2. ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか?
  3. 現在、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
  4. 変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
  5. 近況について、ご自由にお書きください。

これまでと同じく、今回もまたあくまで執筆者の個人的なレポートです。また、執筆していただいた日とブログへのアップ日には何日間かのタイムラグがありますので、その間に状況が変わっていることがある点もご了承ください。

各国からの報告を1日に1~2か国の割合で紹介していく予定です。

たくさんの方にお読みいただけることを願っております。

株式会社リベル

新年のご挨拶

 

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みなさま、あけましておめでとうございます。

昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中で予期せぬ事態が起こりました。

弊社では「コロナ終息に向けて」と題し、26か国からのレポートをこのブログでお伝えしました。レポート第一弾は第一波が少し落ち着きはじめた5月、その後は「終息に向けた」レポートがお伝えできると思いきや、4カ月後の第二弾のころには各国で第二波に見舞われてしまい、大変な年となりました。

そんななか、ステイホームとともに「本の力」が少し見直された年でもあったのではないでしょうか。

弊社では、翻訳した作品の刊行時期が予定より遅くなるなどがあったものの、昨年も100点以上のさまざまな言語の書籍を翻訳することができました。

ほかにも月刊誌『WIRED』のWEB版の翻訳、内閣府発行の小冊子の英・仏・西訳、ノンフィクションや児童向けの和書の英訳といった、定期刊行物の翻訳や日本語から外国語の仕事も多く手がけました。

お世話になったみなさまに、心からお礼を申し上げます。

2021年の幕開け、各国で感染者がさらに増え、東京をはじめ日本でもまた外出もままならい状況になっています。コロナ禍の終息時に予定しております「各国レポート第三弾」をお伝えできる日が一日も早く来ることを願ってやみません。

スタッフ・翻訳者一同、健康に留意し、いっそう精進してまいります。
みなさまもどうぞお体に気をつけてお過ごしください。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2021年1月
株式会社リベル