コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(1)フランス

france

フランス(人口約6706万人)

白仁高志

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

フランスは昨年(2020年)夏に、一時、ロックダウンが解除されました。その後また感染者数が増えて、10月30日に2度目のロックダウンが始まりましたが、春のロックダウンほど厳しいものではなく、ひとりで運動をする目的での外出が1日1時間、自宅から10kmまで、内務省のウェブサイトからダウンロード可能な証明書携帯を条件として認められました。

春とは違って学校も閉鎖されませんでしたが、食料品など日常生活に必要なものを売る店以外のカフェやレストランなどは営業を停止し、テニスクラブ、ジムなどのスポーツクラブも閉鎖されました。この2回目のロックダウンは、例えばイギリスで行われたものと比べて緩やかだったので、なかなかその効果が現れず約 2か月間続きました。2回目のロックダウンの解除にもかかわらず、私が所属するパリ北郊外のクレイユ(Creil)のテニスクラブは閉鎖が続き、今年(2021年)4月になってようやく再開されています。その後、3月に感染者数が1日あたり約3万人となり再度急増したため、3月19日に3度目のロックダウンが始まり、今回は学校も3週間休校になりました。

5月14日時点で、フランスのこれまでの感染者数の総数は584万8,154人、死者が10万7,452人(フランス公衆衛生局データ)。2回目のロックダウン以降、感染の大部分は、英国、南アフリカなどの変異株によるものとなっています。3回目の外出制限は以下のようなスケジュールで緩和される予定です。

5月3日、日中の外出制限の終了。

5月19日、夜間外出禁止を午後7時以降から9時以降にして、商店、カフェ・レストランのテラス席が営業を再開し、美術館、映画館、劇場も人数制限をして再開。

6月9日、夜間外出禁止を午後11時以降とし、カフェ・レストランの店内での営業を再開、体育館の再開、テレワークの緩和。6月30日、外出禁止令の終了。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ワクチン接種は、2020年12月27日に老人用施設に入所している高齢者、医療従事者などから始まり、2021年4月12日から55歳以上、5月10日から50歳以上、5月12日から全ての成人が対象となります。5月14日の時点で、国民の約30パーセントにあたる1929万9,124人が1回目接種済みとなっています(フランス公衆衛生局データより)。

私が住んでいるクレイユ市でも市内に集団接種センターがあり、また、接種用の巡回バスも市内を回っており、事前に電話で予約して接種が受けられます。今後、8月までに成人全員(5200万人)が接種を受けるには1日約60万回の接種が必要で、国民全員の接種が完了するのは現在のペースだと2021年12月4日になります(covidtracker.frの情報より)。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

上述のように、現在はフランス国内での移動制限が解除されています。各県によって違いはあるものの、マスクは引き続き、ほとんどの公的な場所で義務化されています。また、入国・出国制限については、EU圏外からフランスへ入国する人は出発前の72時間以内にRT-PCR検査(RNAを対象として逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いた検査)を受けて陰性証明をもらい、搭乗時に航空会社に提示して、到着後1週間、隔離生活をし、1週間後にもう一度検査をすることが義務付けられています。

休業補償については、翻訳の仕事をしている私のような業種の例ですが、外出制限期間中の各月の収入が2019年の同じ月よりも50パーセント以上減った場合にその差額が全額フランス政府により補償されます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

これまで夜7時以降の夜間外出制限が続いてきたので、窮屈な思いをしている人が、特に若い人たちに多いものと思われます。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

感染者数、死者数は漸減傾向ですが、まだ完全に収まっていないなかで、フランス政府は制限措置を緩和していこうとしており、再度の感染者数増加がないかどうか注意深く見守る必要があると思っています。


白仁高志(しらに・たかし):フランス語・英語の翻訳・通訳者。フランス・パリ郊外のクレイユ在住。現在、日本に一時帰国中。


コロナ終息に向けて:各国レポート「第三弾」をはじめます

世界じゅうが新型コロナウイルスの脅威にさらされはじめてから、すでに1年半近く。

コロナ終息を願ってはじめたこのブログの第一弾からちょうど1年、日本が第二波に見舞われた直後の第二弾からも半年以上たちます。

現在、日本では変異株の感染が増え、2021年5月19日の新規感染者数は全国で5,819人、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県に緊急事態宣言が出され、さらに「まん延防止等重点措置」が実施されている区域もあります。

一方でワクチン接種がはじまっているものの他の先進国に比べてなかなか進まず、2か月後に開幕が「予定」されている東京オリンピックについても不確定要素が多く、新型コロナウイルスをめぐる状況はまだまだ先行きがみえません。

では、海外はどうなのでしょうか。変異株が驚異的な広がりをみせている国、何度目かのロックダウンに突入している国、ワクチン接種率があっというまに高まって人々がどんどんマスクをはずして外出している国……。日々さまざまなニュースが入ってきますが、どれも断片的です。各国の実情まではなかなかみえてきません。

「各国レポート」第三弾はコロナ終息期に予定していましたが、そんないまだからこそ、各国から寄せられるレポートが貴重な記録と情報源になるのではないかという思いから、これまでご協力いただいた方々に第三弾の執筆をお願いしました。

第二弾のように第三弾も、以下の質問に答えていただくという形をとります。

  1. 新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?
  2. ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか?
  3. 現在、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
  4. 変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
  5. 近況について、ご自由にお書きください。

これまでと同じく、今回もまたあくまで執筆者の個人的なレポートです。また、執筆していただいた日とブログへのアップ日には何日間かのタイムラグがありますので、その間に状況が変わっていることがある点もご了承ください。

各国からの報告を1日に1~2か国の割合で紹介していく予定です。

たくさんの方にお読みいただけることを願っております。

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