コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(15)スペイン

spain

スペイン (人口約4694万人)

 米田真由美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スペインは2020年10月下旬の非常事態再宣言以降、2021年1月26日が感染拡大ピークと言われており、現在はピーク時の12パーセントほどの感染者数で、大きく減少傾向にあります。週平均の感染者数は約5,000人、コロナ患者のICUの占有率も順調に下がっているとのことです。変異株については、5月時点で4人のインド型変異株の症例が確認されています。

1月末から2月初めにかけて医療用酸素が足りなくなるのではないかというほど医療が緊迫した状態だった時期もありましたが、現在、アリカンテ大学病院はスペインおよび欧州のなかでも最もコロナによる病床占有率が低い病院となっています。地域としての感染防止対策が功を奏したのか、天候によるものなのか、いくつか要因があると言われていますが、第4波と言われた時期にかなり厳しい規制が強いられていたマドリード周辺やスペイン北部に比べ、アリカンテ市は段階的かつ順調に規制緩和が行われたように思います。その間も、国内、州内外の移動規制は徹底して行われていましたが、ドイツやフランスなど自国の規制が厳しい国からの渡航者が後を絶たなかったのも事実です。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

5月末現在、1回目のワクチン接種完了者は人口の35パーセント、2回目完了は16パーセントで、この1か月で急ピッチに進んでいます。現在50代の1回目が進んでおり、6月中旬には2回目も完了予定、40代の接種も始まります。

都市部では郊外に大型接種会場が開設され、非常に清潔な環境においてスムーズに接種が可能ということです。

予約の方法、接種会場の規模や場所については年齢や地域によって差はありますが、スペインの場合、国民医療保険が発行している保険番号で接種システムの管理を行なっています。

バレンシア州の場合は、携帯電話のショートメッセージサービスで接種日時が送られてきます。指定の会場へは健康保険カードとIDカードを持参するだけです。健康保険カードとID番号が紐づけられていることが迅速な接種体制に繋がっているのでしょう。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

規制については5月9日に緊急事態宣言が解除され、全国的な規制緩和がありましたが、引き続き、各自治体で独自の規制を設けています。

州をまたいだ移動の規制がありましたが、現在スペイン国内であれば行き来は自由になっています。

飲食店などの規制については、都市間で異なります。マドリードの場合、屋外であれば6名まで、屋内は4名まで、私的な集まりも6名までとなっていますが、アリカンテでは最大10名までが店内飲食も可能です。夜間の外出制限はバレンシア州とバレアレス諸島を除いて全国で解除されています。

また、カタルーニャ州ではマスク義務撤廃の動きもあったようですが、現時点では外出時のマスクは義務のままとなっています。

支援金や援助金については、業種ごとに各自治体で行っているものがいくつかありますが、申請し、審査を通過しても受け取りまでに時間を要するため、即効性のある支援としては機能していないように思えます。また、給与の70パーセントまでが補償される一時休職補償については今年12月までの延長が決定しました。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

在宅勤務については相変わらず推奨されてはいるものの、今年の夏以降テレワークを廃止する会社も出てくるようです。 私の勤務する大学も、9月以降は全職員出勤とすることが決定したばかりです。

学校については前回の第2弾レポートの頃から、学級閉鎖的な個々の対応はあったものの学校全体が休校となることは一度もなく今年度を終えることができそうです。

昨年9月当初は子供よりも親が職場で感染してくるなど、社会生活の始まりとともに感染者も増え、特にクリスマス休暇明けは規制を強化しなかったために感染が拡大し、各学校で混乱も見られました。しかし現在は落ち着いた状況が続いており、卒業式などの学校行事も野外へと会場を移して開催されるなど、可能な範囲で通常の生活を取り戻しつつあります。

 ⑤近況について、ご自由にお書きください。

スペインは先日、5月末にイギリスと日本を陰性証明なしでの渡航OKの安全国リストに加え、さらに6月7日以降はワクチン接種済みであれば安全国からでなくとも観光客を受け入れることを発表するなど、観光産業の巻き返しに躍起になっています。ワクチン接種が世界的に進んでいるなかで、観光立国のスペインとしては、経済的な面の復興に大きな期待を寄せています。

5月9日の非常事態宣言解除から3週間経った今、町はコロナ以前の活気が戻っているといってもおかしくない様子です。飲食店は予約で満席、道にも人があふれかえっています。

とはいえ、まだまだコロナが終息したわけではありません。今後も国、国民の動向を観察しつつ、気を引き締めて感染予防策を講じ、コロナと生きる2回目の夏を迎えたいと思います。

週末のアリカンテ市内繁華街の様子

週末のアリカンテ市内繁華街の様子


米田真由美(よねだ・まゆみ):スペイン・アリカンテ在住のコーディネーター・通訳者。アリカンテ大学語学教育センター勤務。