コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(24)オーストラリア

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オーストラリア(人口約2499万人)

徐廷美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第2弾の報告から感染状況に大きく変化はなく、新規の市中感染者はほぼゼロという状態が続いていた。新規感染者のほとんどは海外からの入国者で、隔離先のホテルの従業員が感染するケースが数件あった。しかし、5月下旬からビクトリア州メルボルンで市中感染者が出始め、州政府がロックダウンを決定している。

ただ、それでも1日の新規感染者数は15人前後にすぎない。そのため、医療現場が大きな影響を受けることはなく、一般の受診者はコロナ以前とほぼ同じように医療が受けられている。病院のスタッフも、元々マスクの習慣はないため、マスクなしで業務を行っている。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2月下旬からワクチン接種が開始された。まず医療関係者のなかでも、コロナ患者に接触する確率の高い救急医療従事者に優先接種され、4月ごろからその他の医療職、そして現在では医療関係者の家族にまで接種対象が広がっている。

一方で、老人施設や障がい者施設でのワクチン接種も並行して行われてきた。ワクチンにはファイザー社とアストラゼネカ社製が使用されている。副反応として血栓症が見られるとの情報を受けて、アストラゼネカ社製のワクチンへの懸念が高まっているが、政府は50歳以上には血栓症のリスクが少ないとして、50歳以上の対象者にはアストラゼネカ製を勧めている。

現在、ワクチン接種が完了した人は54万人で、人口の2.2パーセント。市中感染がほとんど見られないためか、積極的にワクチンを接種しようという感覚があまりないように見受けられる。

筆者も看護師であり、すでに2回の接種を完了した。ワクチンの接種は、地域の大型公立病院にハブセンターが設置され、本人確認、問診、接種、接種後の副反応の経過観察という流れが、多くのスタッフによって管理されていた。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在でも、オーストラリア人と永住権者の海外渡航は原則禁止されている。個人的事情がある場合は申請して、許可を受ける必要がある。

また、永住権者を除く外国人の入国は厳しく制限され、ほぼ国境を封鎖している状況だ。元々オーストラリアは観光国であり、外国人留学生も多かったため、外貨収入が激減したダメージは大きいだろう。国内の移動制限はなかったが、今回のメルボルンのロックダウンにより、一部地域の移動が制限された。

小中高校は通常通り対面授業で行われているが、大学ではオンライン授業が主流となっている。市中でのマスク着用義務はないが、メルボルンのクラスターの発生に伴い、一時的に公共交通機関でのマスク着用が義務化された。

飲食店と娯楽施設は通常通りの営業を続けている。5月からシドニーを中心としたニューサウスウェールズ州では、18歳以上の住人を対象に飲食クーポンと娯楽クーポンがそれぞれ50ドル分ずつ配布され、経済の活性化を図ろうとする姿勢が見られた。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

ほとんどの新規感染者が海外からの帰国者であったため、イギリス型変異株の流入は早くからあったと思われる。今回のメルボルンの市中感染では、デルタ株(インド型変異株)の発生というニュースもあり、より感染力が高いとの報告もあるため、危機感が広がっている。6月中旬に入って、シドニーでもインド変異株の小規模クラスターが発生し、危機感が多少高まっている様子が見られる。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

市民生活はほとんどコロナの影響を受けておらず、買い物や外食など日々の生活には全く支障がない。しかし、いまも在宅勤務をしている人は多く、大学生もオンライン授業が中心なので、バスや電車の混雑はあまりない。また、海外渡航の禁止によって海外旅行を楽しむことはできず、全体的にレジャーも差し控えている印象がある。

また先に述べたように、観光業、航空業、教育産業への打撃が続いているため、政府としてはワクチン接種を推し進め、国境開放へとつなげていきたい考えだ。筆者は一時滞在者であるため、原則オーストラリアから出ることへの制限はない。

しかし、そうした一時滞在者(労働ビザ、学生ビザ、ワーキングホリデービザ、観光ビザ保持者)がオーストラリアへ入国するのは、非常に難しく、ほぼ認められていない(一部、労働ビザ保持者には渡航許可がおり始めている)。オーストラリアへの行き来が、もう少し制限なくできるようになることを願っている。


徐廷美(そ・じょんみ):オーストラリア・シドニー生活6年目。日豪両国の看護師資格をもち、現在は大学院で看護学を専攻している。