コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(19)コロンビア

colombia

コロンビア(人口約4,965万人)

ゴンサロ・ロブレド

 ①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月末現在、新型コロナウイルス感染者数の国別トップ10には、中南米のブラジル、ペルー、メキシコ、コロンビア、チリの5か国がランクインしています。ロイター通信の報告によると、7月末の世界の感染者の26.83%が中南米に集中しているとのことで、世界でもっとも感染者数の多い地域となってしまいました。

ブラジル:米国に次いで感染者数が2番目に多く、うち回復者数は世界一の300万人強。感染拡大の原因のひとつに、陽性でも間違って陰性と出てしまう不良品のPCR検査キットを、政府が326万ドルで購入していたことが挙げられており、この件では8月25日、キット購入の裏取引をした厚生省の官僚が逮捕されました。

ペルー:8月末現在、首都リマの病院は満員で、多くの患者が車椅子で寝ている状態です。自宅待機の患者たちが酸素を自前で調達しなくてはならないケースもあり、500~1500ドルといった高額で売り付けられる酸素ボンベを購入できずに亡くなる人もいるそうです。そんななか、複数の地域の組長たちがグループを作り、リマのもっとも貧しい地区を周り、彼らが持っているボンベに無料で酸素を入れる活動を広げています。

コロンビア: 感染ピーク時の7月26日には93.2%だった集中治療室の占有率は、8月末現在75%まで減少。感染者のうち、入院患者は全体の3.7%で、集中治療室の利用者は0.34%、それ以外の約95%は自宅で回復を待っている状態です。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

3月半ば以降、中南米のほとんどの国でなんらかの外出規制が敷かれましたが、地域によってその内容はさまざまです。

ペルー:3月に厳しい外出規制が出されたものの、5月からは少しずつ緩和しています。8月12日以降は、日曜日の外出を禁じ、違反者は逮捕されます。そんななか、8月23日の日曜日に、あるクラブが120人を集めてパーティを開催しました。警察が現場に踏み込んだ際、多くの人が将棋倒しになり、それによって13人が窒息などで死亡、6人が怪我をしました。逮捕者のうち15人がコロナに感染していたことが判明しています。

コロンビア:9月以降は少しずつ元の生活に戻していく計画のようですが、8月末までは外出禁止令が敷かれ、違反した者には4年から8年の服役が科せられます。全国の空港はすべて閉鎖され、飛行を許されているのは国際線の数機のみです。大勢が集まるイベントも、バーでの飲酒も禁止されています。

チリ:8月現在は23時から朝5時まで外出禁止令が敷かれ、公共の交通機関ではマスクの着用が義務づけられています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

公的支援:国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は、中南米・カリブ諸国に対し、コロナ対策として、ベーシックインカム、食品券配布、零細企業支援の3つを提案しました。各国で国単位や市町村単位のさまざまな支援がされていますが、例えばコロンビアでは、貧困層に対してすでにいくつかの支援が行われてきました。それに加え、支払った消費税が返金されるプログラムや、雇用を守るための企業支援プログラムなどが始まっています。しかし、貧困層に約40ドルを配布するプログラムでは、システム上にある住民の登録データが間違っていたり、不正行為があったりと、数々の困難にぶつかっているようです。

教育:新型コロナウイルスの拡大は社会のさまざまな分野に大きな悪影響を与えていますが、なかでも教育分野への影響は、将来、社会に大きな格差を生み出すと危惧されています。ユネスコによる5月のデータでは、休校になった世界の12億人の生徒のうち、1億6000万人が中南米とカリブ海地域の生徒であるとされています。同地域の33か国のうち、ニカラグア以外の32か国で休校措置が執られ、29か国ではいまだに再開されていません。給食もないため、とくに貧困層の子どもたちの食生活に大きな悪影響を及ぼしています。遠隔授業を実施している国のうち、生徒にPCやタブレットを配布している国は、33か国中8か国。ウルグアイはすでに数年前から、電子媒体を生徒に配布する政策を実施しています。PCやWifiがある世帯に比べ(メキシコでは約半数)、テレビはほぼすべての世帯にあるため(メキシコでは92.5%)、多くの国で補習の教育番組がテレビで放送されています。

④近況について、ご自由にお書きください。

世界銀行は、2020年の中南米のGDP成長率を1.8%増と見込んでいましたが、6月には7.2%減へと大幅に修正しました。中南米社会はインフォーマル経済の比重が大きく、外出できなければ人びとはたちまち生活できなくなってしまいます。経済活動も徐々に再開されていますが、再び感染が拡大するのは避けられません。

中南米のなかでもコロナ感染対策においてもっとも優秀なのは、ウルグアイです。医療機関のコントロールに成功し、国の規模も社会的格差も小さいことも相まって、ロックダウンなしにコロナ禍を乗り切ることができています。しかし他の中南米諸国がウルグアイを手本とするには、環境が異なりすぎるので難しいでしょう。

米国の企業「ジョンソン・エンド・ジョンソン」は、近日中に中南米の合計6万人の希望者を対象に、新しいワクチンの臨床試験を行う予定です。一日も早いワクチンの開発に希望が託されています。


ゴンサロ・ロブレド:コロンビア出身のジャーナリスト。スペイン語翻訳者。1981年より日本在住。スペインのエル・パイス紙に寄稿した記事:
https://elpais.com/autor/gonzalo-robledo/

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(18)スロヴェニア

slovenia

スロヴェニア(人口約206万人)

木村高子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スロヴェニアでは5月中旬に流行終息宣言が出され、さまざまな制限も解除されましたが、6月下旬から感染者数が再び増えはじめ、現在は1日あたりの感染者数が二桁台になっています(総人口200万人の国では、これは決して少ない数ではありません)。第一波では、高齢者施設での感染拡大が大問題になりましたが、対策を講じたおかげで今回はそんなことはなく、むしろ若者の比率が高いことが特徴とされます(そのため、少なくとも第二波の死亡率は下がっています)。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

6月に入ってから、すべての海外渡航の中止勧告が引き下げられ、中旬には、国際線を含む旅客交通が再開されました。国内の移動制限もまったくありません。スロヴェニア政府は諸外国を、往来自由国(緑)、2週間の自主隔離が必要な往来制限国(赤)、そのどちらでもない国(黄:スロヴェニア国民及び永住権を持つ外国人がこれらの国からスロヴェニアに入国した場合は、自主隔離義務が免除される)に色分けしています。最近では、南の隣国クロアチアをはじめとするバルカン諸国で感染者が急増しており、8月20日からクロアチアも「赤」に指定されました(他に、ボスニア、マケドニアが「赤」に指定されています。30日には、セルビアが「赤」から「黄」に変更されました。同じく国境を接するイタリア、オーストリア、ハンガリーは「緑」)。クロアチアの海岸でバカンスを過ごすスロヴェニア人は非常に多いので、これは大問題です。

国内でも、特にクロアチアからの帰国者の間で感染が増大しています。国内のほとんどの店が営業再開し、第一波のときに禁止されていた大型店舗の日曜営業も解禁になりました。医療機関も、急ぎでない検査などはずっと延期になっていましたが、いまでは再開しています。500人までの集会も解禁されましたが、その後に感染者数が再び増加したため、許可人数が引き下げられました。一方、室内でのマスクの着用義務については、第一波以来、ずっと続いています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

すべての大学生に対して一時金の給付がありました。また自営業者は、収入が大幅に減少した場合、給付金を受け取ることができます。観光業支援のため、全国民、及び永住権を持つ外国人には、一人当たり200ユーロのクーポンが支給され、年末までなら国内のホテルやキャンプ場で使用できます。我が家もこれを利用して、海岸地方で数日過ごしてきました。なお、その間に日帰りでイタリアに行きました(7月下旬)が、国境検査などはまったくありませんでした。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

町の様子はほとんどコロナ以前に戻りました。少なくとも屋外のカフェやレストランはどこも満員です。アジア系の団体観光客は完全に姿を消しましたが、フランス語やドイツ語を話す観光客はたくさん見かけます。店に入る時のマスク着用と消毒液使用を除けば、コロナのことを忘れてしまいそうなくらいです。ロックダウン中は、町はまるでゴーストタウンのように閑散とし、店に入る時も店員がマスク着用と消毒液の使用を見張るなどピリピリした雰囲気を感じましたが、現在はそんなことはまったくありません。ただし、寒さが厳しい季節になったら、屋外で過ごすのは難しくなるでしょう(知人を自宅に招いたり招かれたり、というのは、今のところ控える人が多いようです)。

小中学校と高校は9月から通学が再開されましたが、大学だけは、現時点で授業再開の見通しは立っていません。

バカンスシーズンの7~8月は、③で述べたクーポンを利用して、多くの人が国内旅行をしていました。今年の特徴としては、可能な限り飛行機の使用を控える人が多いようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

前回のレポートに書きましたが、スロヴェニアでは5月から、毎週金曜日に反政府デモが行われてきました。当初は三密を避けるために自転車に乗ってぐるぐる回るだけでしたが、それも6月以降は政府機関の前に(自転車なしで)集まる形で、現在も続いています。政府に対する不満はさまざまですが、最近では、②で述べたクロアチアの「赤」指定が遅すぎたと考える人も多いようです。

8月いっぱいでバカンスシーズンが終わり、クロアチアの海岸で休暇を過ごしてきた人たちが戻りつつあります。スロヴェニアはクロアチア、セルビア、ボスニアなどのバルカン諸国と歴史的に深い繋がりがあり、いまでも多くの往来があるので、国境を閉鎖するわけにはいきませんが、今後、それが原因で感染者数がさらに増えないか気がかりではあります。


木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(17)ネパール

nepal

ネパール(人口約2,370万人)

勝井裕美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

8月29日現在、感染者数の累計は37,340名。第一弾のレポートを書いた6月2日の2,099名から約18倍となった。8月28日の1日の感染者数は884名。ネパールでは、陸続きのインドから帰国した出稼ぎ労働者やその濃厚接触者からの感染が多く、感染者数の多い地域もインド国境に接する南部だった。それが最近では、首都カトマンズ周辺の都市部にホットスポットが移っている。上記の884名中、186名がカトマンズ周辺の人たちだ。また、当初は政府指定の公立病院だけが新型コロナウイルスの検査や入院対応をすることになっていたが、私立病院も対応するように政府が呼びかけはじめている。すでにカトマンズ周辺では病床数が足りておらず、無症状の人や軽症の人は自宅待機となっているようだ。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

6月中旬から徐々に移動の規制緩和がされていたが、バスやタクシー業界などの訴えを受け、7月22日に突然、全土のロックダウンが解除となった。そのとたん国中の人びとがこれまでの反動のように動きはじめ、慌てた政府は急遽マスク着用やソーシャルディスタンスを呼びかけた。罰金(当初、100ネパールルピー=約100円)なども課されたが、現在のマスク着用率は約7割にとどまっているとの報告がある。カトマンズにも自由に出入りができるようになり、地方から都市部に戻る人が急増。その結果、上に書いたようなカトマンズ周辺のホットスポット化が生まれたと言われている。

再ロックダウン前のカトマンズ。車両が戻ってきた

再ロックダウン前のカトマンズ。車両が戻ってきた

8月に入ると感染者数が急増した郡(日本の都道府県に相当)でロックダウンが再開し、とうとうカトマンズ周辺3郡も8月20日から1週間のロックダウンが宣言された。現在、その期間は再延長され、9月2日までとなっている。しかし、感染者数の減少は見られていないため、さらなる延長の見込みが高い。

ネパールで唯一の国際空港はずっと閉じられたままで、出稼ぎ先の中東などに取り残されたネパール人の退避便を飛ばすだけだったが、9月2日からはいくつかの国との間で国際便が再開している。政府が発表した9月30日までのフライトスケジュールを見ると、通常運行とは言えないが、それでも、日本との直行便が計3回。観光業界が熱望していた外国人観光客の入国はいまだ不可で、ネパール人、もしくは外交官や国連関係者などの外国人のみが入国を許されている。ただし、入国する72時間前までに受けたPCR検査の陰性証明書、入国後2週間の自宅隔離が必須だ。

がらがらの国際空港。野良犬がソーシャルディスタンス休憩

がらがらの国際空港。野良犬がソーシャルディスタンス休憩

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

基本的には何もない。中央政府は市町村レベルでの貧困世帯への食料配布等の支援を促したが、市町村によって実施の濃淡があり、支援が十分に行きわたっているとは言えない状況だ。経営者はローンの返済猶予や低金利のローン貸し付けなどを要望しているが、具体化の話は聞かない。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

カトマンズ周辺3郡の8月20日からのロックダウン以降、再度、食料の買い出しと病院・薬局以外の外出禁止は禁止となった。前回の全土ロックダウン時はカトマンズの感染者数は少なかったので、外出禁止令下と言えども「できたら外出したい、店を開けたい」という人が多かったように思う。しかし、今回は空気がピリついている。外に出るのは危険だと、レストランのテイクアウトすら禁止されている。食料品店の営業は朝の9時頃に終わってしまう。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

日本では政府がいくつかの製薬会社からのワクチン購入の交渉をしていると報じられているが、ネパールではそのような話は聞かない。ただ、現在、低所得国でもワクチンを入手できるようにさまざまな国が参加するネットワークが作られつつあり、それを通じてネパールも最低限のワクチンは入手(支援)されるとの楽観的情報はある。また、ロシアや中国、イギリスで開発されているワクチンの臨床試験への協力を検討中だという。これによって、ワクチン開発が成功した暁には優先的、または安価にワクチンが入手できるのではないかという期待もあるようだ。このウイルスの脅威はどの国にも平等だ。でも、その対応力は改めてこの世界にある残酷なまでの経済格差を浮かび上がらせている。


勝井裕美(かつい・ひろみ):NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会(https://www.shaplaneer.org/)ネパール事務所長。ネパール・ラリトプール市在住

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(16)アメリカ・ハワイ

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アメリカ・ハワイ(人口約140万人)

ダニエル・シーモア

①新型コロナウイルス感染について、いまはどうなっていますか?

ハワイでは、4月から6月にかけて感染者「0」の週が何回かあり、多少の増減があったものの、平均的には一桁台で推移していました。しかし、7月の半ばを境に感染者数が2桁台、そして7月末には突発的に感染者が増え、3桁台に突入。7月末から3桁台で推移しています。急増の理由はいろいろありますが、イゲ知事政権の体制の甘さが露呈されており、9月1日、ハワイ保健省の上層部が総辞職をする事態となりました。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

8月27日から9月9日までの2週間「自宅待機・在宅勤務」が再び発令され、8月26日に緊急事態命令第25号(2020年)が公表されました。

オアフ島に居住・滞在するすべての人は、必要不可欠な活動(Essential Activities)や必要不可欠な事業(Essential Business)に従事する場合を除き、自宅に待機し、在宅勤務を行うことが求められます。また、どうしても外出する場合には、6フィート(約183cm)の社会的距離を確保し、マスクを着用しなければなりません。この命令は居住者だけでなく、訪問者にも適用され、違反者は5,000ドル以下の罰金又は1年以下の禁固刑、もしくはその両方が科せられます。

公園やビーチは閉鎖されているほか(ただし海水浴などのために横切ることは認められます)、歌や楽器の演奏についても基本的には禁止(たがいに10フィートの距離をとる、アクリル板を立てるなど感染防止策を講ずる場合には認められる)となっています。

③外国への出国、外国からの入国についての制限はありますか?

ハワイ諸島間のフライトは、必要不可欠なフライト以外はすべてキャンセルされています。ハワイ州以外からの渡航客は14日間の隔離を要請されており、違反者はやはり5,000ドル以下の罰金又は1年以下の禁固刑、もしくはその両方が科せられます。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

医療従事者はPCR検査が必須となっています。私も精神科の閉鎖病棟で働く医療従事者なので、すでに3回PCR検査を受け、3回とも陰性でした。入院患者も全員陰性なので多少は安心して働くことができますが、つい最近退院した患者が陽性となり、濃厚接触があった私は3回目の検査を受けることになりました。また、週に一回「ウォークイン(予約なし)」の外来精神科を担当しているのですが、「ウォークイン」の性質上、患者の大半がホームレスの方なので、毎回ハラハラドキドキしながら診察しています。

学校はすべてオンラインで、子どもたちにはChrome Book(タブレット)が支給されています。親たちもいろいろと不便を感じることもありますが、一番不憫に思うのは子どもたちです。うちの子に限らず、学校で友達と遊ぶこともできずに家の中で悶々としているのはかわいそうだなと思います。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

5月に保護した猫ちゃん(ハナ)が順調に成長しています! また、長女と動物シェルターでボランティア活動も始めました。11月には米国大統領選挙が控えていますが、それについては言及しないほうがいいでしょう。

5月に保護した猫ちゃん(ハナ)

5月に保護した猫ちゃん(ハナ)


シーモア・ダニエル:臨床カウンセラー。2019年よりハワイ在住。

コロナ終息に向けて:各国レポート(15)スペイン

spain

スペイン(人口約4,693万人)

米田真由美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スペインでは、6月中旬に警戒宣言が解除され、7月に国境を解放して以降、感染者数は増加の一途を辿っています。感染者数の累計は44万人、死者数は2万9000人に達しています。8月28日時点で1日の新規感染者数は3800人、1週間で100人以上の方が亡くなっていて、新規の入院患者数は1000人を超えました。

ただ、コロナによる医療崩壊のニュースが大々的に取り上げられるようなことはなくなりました。アリカンテの総合病院もピーク時のような逼迫や混乱はないようです。しかし、今は普通の風邪の症状でも病院へ行くとPCR検査対象となるので、検査数が急増し、検査結果書類の紛失、結果報告の遅延など、杜撰な管理体制が露呈しています。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

行動制限解除後、すぐにマスクの着用が義務化されました。スペインでは観光・飲食産業が国の経済を支えているため、ごく一部の国を除いて入国制限はなく、6月末から7月にかけて入国規制の緩和が急ピッチで進んだほどです。その効果かどうかはわかりませんが、アリカンテのビーチは驚くほど賑わっています。ただ、実際には休業を強いられているリゾートホテルも少なくなく、飲食業界にとっても厳しい夏であることに違いありません。

感染拡大が確認される地域ごとに移動制限が設けられていましたが、8月中旬に宣言解除後、初めてスペイン全土のナイトクラブやディスコなどの閉鎖、路上での喫煙(2m以上の安全距離が確保できない場合)や飲酒の禁止など規制の強化が始まりました。また、普段生活をともにしていない家族や同居人以外との10名以上の集まりは自粛対象となります。このように、スペイン全土で感染防止対策を講じなくてはならなくなりました。観光客の誘致やバカンスシーズンの影響で人の流れが一気に増えるので、第二波の到来は誰もが予想していたこととも言えます。

感染防止意識の低い若者の間ではクラスターが発生することも多く、毎日のように、集会を取り締まっているニュースが流れています。こういった取り締りは自治体のSNSやインスタグラムなどの若者の目に付きやすいところで発信され、自治体も市民への安全防止策と現状の周知に力を入れていることがうかがえます。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

一律での現金支給はありませんが、世界でも話題になったベーシックインカムの導入があります。実際のところベーシックインカムの審査は厳しく、貧困層からの不満も出ています。支給の遅延などもあり、即効性のある救済措置としては機能していないようです。一時的な失業者に対する補償も即席で作られた政策という感じが否めません。新型コロナウイルスに感染した場合の休職補償はあるものの、今後の雇用に関する法整備が急がれます。

アリカンテでは5〜6月にかけて自治体から不織布マスクが支給されました。またホテルや商店にセイフティマーク(ステッカー)を配布したり、無料の市内観光を実施したりと経済活動促進に力を入れていますが、ショッピングや施設利用のクーポン券の配布などはありません。店側は配られたステッカーを貼り、感染防止対策の基準を守っていることをアピールしています。

教育現場ではIT環境の整備の遅れが目立ちました。PCの支給や通信環境の援助などはなく、教員も生徒も国からの支援はほとんどなかったように思います。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

マスクや消毒液不足は早い時点で解消されており、今はどこでも手に入れることができます。品薄状態だったスーパーも通常に戻り、アジア系スーパーにも輸入品が並ぶようになりました。商店では入り口付近に消毒ジェル設置が義務付けられ、利用客の使用が促されています。コロナ以前は法律で規制されていましたが、不景気対策で大手百貨店やホームセンター、ショッピングセンターが日曜日も営業をしています。7月以降、自宅勤務からオフィスワークへ移行している人も増えていますが、引き続き在宅勤務を推奨したり、新しいシフト制での出勤を導入したりする企業も出てきました。

小中学校、高校は9月初旬から中旬にかけて対面授業開始の予定です。各自治体でも教育現場への対応は異なり、教育省と自治体、現場、保護者の間で混乱が起こっています。大学はオンラインと対面を組み合わせた授業のところが多いようですが、海外からの留学生は激減し、あらゆる方面に影響が出ています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

表向きには“日常生活”が戻っているようにも見えますが、もともと高かった失業率の水準がさらに上がり、負の連鎖が起こっています。景気後退の影響で雇用環境や治安の悪化が心配されていて、新しい貧困層の広がりにも大きな不安を抱えています。

この夏休み、海水浴場や集合住宅のプールは混雑しているものの、レジャー施設は閑古鳥が鳴いているようです。積極的に人と会うことを控え、なるべく家族で行動するなど工夫している人は多く、公共交通機関などでもマスク着用を乗客同士で声がけするといった光景も見られます。一部を除いたほとんどの人が、状況をわきまえ、みんなでこの状況を乗り切ろうとしているように思います。感染増加は止まりませんが、コロナウイルスに感染したからといって直接的に職を失ったり、差別を受けたり、責められたりすることのないスペインの社会には感謝したいです。

アリカンテのサンフアン(San Juan)ビーチ

アリカンテのサンフアン(San Juan)ビーチ


米田真由美(よねだ・まゆみ):スペイン・アリカンテ在住のコーディネーター・通訳者。アリカンテ大学語学教育センター勤務。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(14)台湾

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台湾(人口約2,360万人)

メリー・ジェーン

① 新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

新型コロナウイルスの感染が今年の1月に拡大してから8か月が経ちました。台湾の感染状況は、他の国と比べて落ち着いたように見えますが、つい最近も感染者がちょこちょこ出ていて、台湾の人たちはコロナに対する危機感を改めて感じています。現時点(8月30日)では、国内感染者数は累積488人、死亡者数は7人です。

ここのところ国内の感染確認者はほぼゼロだったのですが、最近、海外の空港で台湾からの入国者10人が陽性だということがわかりました。その10人は、到着先の空港でPCR検査を受け、そのうちの4人は台湾以外の国で感染したと判明したものの、残りの6人の感染経路はいまだに明らかになっていません。陽性だった10人と接触した台湾国内の人たちも全員PCR検査を受けましたが、みんな陰性でした。どうして、感染者が台湾にいたのに、国内から1人も感染者が出ないんだろうと、国民からは疑問の声が上がっています。

② 国や自治体からの規制や制限はありますか?

台湾はコロナ感染拡大のピーク(3月)後、は清明節(台湾のお盆)の連休を迎えました。多くの国民は今までの旅行ロスの気持ちが高まり、感染状況が収まっていることも相まって、リベンジ旅行(報復性旅行)という現象が台湾の各地で見られました。清明節以降の連休には、台北近郊の宜蘭(ぎらん)、台湾東部の花蓮(かれん)などは以前よりも観光客で賑わっていたようでした。

③ 国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

もちろん、コロナによる消費低迷の復興に向けて、台湾政府もさまざまな取り組みを進めています。そのなかでもっとも物議を醸したのは「振興3倍券」という施策です。「振興3倍券」というのは、台湾国民であれば、1,000元(約3,600円)で3,000元(約10,000円)分を購入できるクーポン券のようなものです。紙製の振興券は郵便局で購入できますが、7月の頭に受け取りに行く人が多かったため、郵便局の前には行列ができていました。紙のチケットのほか、クレジットカードや電子マネーなどの対応もありますので、暑いなかで並びたくない人にとっては本当にありがたいですね。この給付金の支給により国内の消費押し上げ効果が見込める一方で、なぜ、ただ2,000元を支給するのではなく、国民がまず1,000元を支払わないといけないのか、という批判の声もインターネットの掲示板に殺到しています。

紙製振興3倍券

紙製振興3倍券

また、医療マスクの販売について、最初は政府がリソースを管理していたので、民営企業が医療マスクを売ることはできなかったものの、感染拡大が収まった現在では薬局やスーパーなどの小売業でもマスク箱売りの商品が並んでいます。芸能人とのコラボ商品のレースマスクも一時話題となり、発売日に即売り切れ盛況もありました。これからは、マスクもファッションアイテムの1つとして日常生活を輝かせるかもしれないですね。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

現在、ほとんどの企業はリモート勤務を終わらせていて、ラッシュアワーの通勤電車は以前のように満員です。ただ、電車に乗る際に必ずマスクをする決まりがあり、違反すると罰金が課されます。乗客の顔をじっくり見てみると、鼻の下にマスクを着用したり、布マスクをしたりする人も少なくはないので、あまりマスクをする意味がないのではと思うことも多々あります。

電車内の様子

電車内の様子

⑤近況について、ご自由にお書きください。

他国と比べて、台湾でのPCR検査の数は非常に少ないです。海外から入国した人は14日間の隔離が必要で、その後7日間の自粛要請もあるとはいえ、PCR検査はいっさい不要なようです。台湾国内の感染者はいないのに、外国へ渡った台湾人から続々と陽性反応が出たことから、国内ではもうすでに多くの陽性者がいるとしか思えません。政治家やコメンテーターもよくこの件について政府に提言していますが、いまだに納得のいく理由と対策案は出されていません。毎日しっかり防疫意識を高めて生活をしていくこと。これから自分、家族、大切な人々を守るために、それが唯一の方法なのだと思います。


メリー・ジェーン:台湾在住のアプリマーケター。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(13)韓国

south korea

韓国(人口約5,127万人)

殿垣くるみ

①新型コロナウイルス感染について、いまはどうなっていますか?

韓国では感染者数が8月後半に急増し、現在その余波が未だ残っている状況です。これまで一日の感染者は20~30人ほどで、海外からの入国者が主だったのですが、8月後半は国内感染者が一日200~300人になってしまいました(現在は100人程度)。その原因となったのが8月15日の光復節に合わせて行われた保守団体と極右キリスト教団体が主催した大規模集会です。そもそも100人以上集まる集会は許可されていなかったですが、主催団体が申請を偽り、全国から数万人が集まる事態になってしまいました。しかも厄介なのは、この集会は反政府集会であり、現政府のコロナ対策を批判することを目的としていたことです。集会中も政府の感染予防指針を守らず、信者や集会参加者に検査を拒否するよう促していました。そのため、集会後、多くの感染者が確認されても団体側は感染抑制に非協力的であり、集会参加者が検査を拒否したり、治療施設から脱走したり事例もありました。この事態に対し文在寅大統領は強く非難し、感染予防に非協力的な人への処罰を重くする方針を示しました。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

15日の大規模感染をきっかけにして、ソーシャルディスタンスの基準が引き上げられました。8月19日からは屋内50人以上、屋外100人以の集会は、原則禁止となりました。展示会、記念式、試験だけでなく、結婚式、葬儀などの集まりも含まれます。また、これまで特に休業要請をしてこなかった韓国ですが、クラブ、カラオケ、ネットカフェなどに休業要請が出ました。飲食店でも8月30日から営業時間の短縮、利用者情報の記録の義務化、2メートル以上を保った席の配置などが要請されています。マスクに関しては、公共交通機関内では引き続き着用が義務付けられ、ソウル市は24日からカフェや飲食店内でも飲食時以外はマスクの着用を義務化しました。国内の移動の制限はないのですが、なるべく控えるように呼びかけられています。このような対策は一部を除いて9月15日までで終わり、短期集中的に感染者数を抑え込む作戦です。急な要請に国民の不満や批判はありつつも、やはり原因をつくった15日の集会主催団体に対する韓国世論の厳しい批判が高まっています。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

15日の集団感染をきっかけに、これまで以上に危機意識が高まりました。現在、韓国は夏休み期間中で、私も15日以前は外出や旅行もしていたのですが、集会を主催したキリスト教団体の施設が私の住んでいる地域から近いということもあり、今は予定をすべてキャンセルして不要な外出は控えています。学校の授業はオンラインと対面授業を並行して行われており、次学期はすべて対面授業に切り替わるのではないかと期待していたのですが、この状況だと難しそうです。

街の様子がどうなっているかはあまり確認できていないのですが、よく行くお店やカフェもコロナ対策を強化しているようです。私は今、「ハスク」という食事つきの下宿に住んでいるのですが、今までは食事の際は文字通りご飯を囲んでみんなで食事をしていたのですが、つい最近から食事中の会話を控え、机も壁を向く配置になりました。仕方のないことですが、毎日の食事がなんだか寂しくなってしまいました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

これまで国内の集団感染は何度もありましたが、今回の8月の集団感染は、感染者たちが非協力的であり、妨害行為までするため非常に厄介です。さらに続くようなことになれば以前とは違った対応が必要になってくるかもしれません。この夏、ソウル市民の定番である「漢江でチキンとビール」を私も予定していたのですが、この様子だと来年まで持ち越しになりそうです。


殿垣くるみ(とのがき・くるみ):韓国ソウル在住。一橋大学大学院修士課程在学中。

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(12)デンマーク

denmark

デンマーク(人口約580万人)

針貝有佳

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

順調に感染者数が減ってゆるゆるモードになっていたせいか、7月末から第2波が到来しています。第1波に比べるとはるかに小規模ですが、局地的に感染者数の増加が見られています。

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日ごとの新しい感染者数(2020年3月10日〜9月4日)

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

第2波到来中の8月上旬に夏休みが明けたこともあり、8月22日から公共交通機関(電車・バス・地下鉄・フェリー・タクシー・駅構内)でマスク着用が義務化されました。違反すると罰金の対象になるので、みんなしっかりルールを守っています(12歳未満は対象外)。また、当初の予定では8月には段階的再開のフェーズ4に移行する予定でしたが、第2波の影響によりフェーズ3に留まっています。そのため、ナイトクラブ・ディスコなどへの休業要請は解除されていません。100人以上の集会も禁止されたままです。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

政府から経済的なサポートがあります。一定の基準を満たすサラリーマンには最大75%の給与補償、時給で働く人には最大90%の給与補償(上限は月約50万円)です。また、30%以上の売上減など一定の条件を満たす自営業者には、所得の90%まで補償(上限は月約39万円)があります。イベントのキャンセル等に伴う費用負担についても、政府が経済補償をしています。このあたりの対応は、デンマークが高福祉国家であることを感じさせてくれます。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

7月の夏休みには弛緩した空気が漂っていました。夏休みは国内で過ごした人が多く、国内の観光地は賑わっていたようです。我が家はユトランド半島北西部の田舎にあるサマーハウス(別荘)で過ごしたのですが、サマーハウス付近は例年以上に賑やかでした。不思議だったのは、電車には人数制限が設けられていたにもかかわらず、フェリーや長距離バスは人数制限もなく満席だったことです。この頃はまだマスクが推奨されておらず、マスクをつけている人もほとんどいなかったので、満席の密室空間に身を置いて「これでいいのだろうか?」と不安になりました。今は公共交通機関でマスク着用が義務づけられましたが、全体的にだんだんコロナ慣れして意識が緩んでいる感じがします。各教育機関や職場での対応はそれぞれです。たとえば、近所の小学校では、親は学校の敷地内に立ち入り禁止で、校舎には仮設の手洗い場が設置されており、手洗いや消毒を徹底しています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

ロックダウン中は意外と元気にひきこもり生活を楽しんでいた我が家ですが、その後も続いた自粛期間や子どもの夏休みを経て、少々コロナ疲れが出ています。春のロックダウン時は天候も良く、屋外空間を存分に使えた点が大きな救いだったので、寒くて暗い秋冬のロックダウンはなんとしても避けたいところです。ときどき、ふと「今度日本に帰れるのはいつだろう」と日本に想いを馳せることがあります。グローバルな時代ですが、国境の存在をハッキリと感じています。それでも今はSNSやメールで気軽に近況報告できる時代。物理的な距離と心理的な距離は比例せず、私たちの想いはいとも簡単に国境を超えていきます。大変なこともありますが、このデジタル時代の到来がありがたく、皆さんとのつながりに感謝する日々です。


針貝有佳(はりかい・ゆか):デンマーク語の翻訳者、ライター。デンマーク・ロスキレ在住

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(11)チェコ共和国

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チェコ共和国(人口約1,069万人)

岡戸久美子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

ここ1か月ほどの新規感染数は日々100~300件ほど(8月21日には過去最多となる505件)で、3月の感染拡大時期と同程度に増えてきていますが、そのうちの多くは症状が軽い、もしくは無症状で、病院で治療を受けている人の数は増えていない模様です。一部では「ウイルスが弱まってきているのでは」との意見もあるようです。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

重症患者が少ないとはいえ感染者の数は増えており、9月からの学校再開(コロナのせいではなく、チェコの新学期)によるさらなる感染拡大を懸念してか、8月半ばに政府は9月1日より再度室内でのマスク着用を義務化すると発表しました(現在はプラハ市内の地下鉄乗車時と100名を超える室内イベント時のみ着用義務)。ですが、施行前にすでに何度か指針が変更されており、実際どのような形で施行されることになるのかまだわかりません。

出入国制限については、7月以降かなり緩和されてきています。欧州近隣諸国や日本などは低感染危険国として指定され、PCR検査や隔離などの義務が免除されました。また逆にチェコ自体も欧州諸国から低感染危険国とみなされており、わりと自由に移動することができます。ただしすべての国というわけにはいかず、例えばチェコ人の休暇先として人気のギリシャでは8月半ばチェコからの入国に対する規制を強化し、72時間以内に受けた検査の結果が陰性であることを証明する必要があるとしたため、慌てて検査費用を一部負担することを決めたチェコの旅行会社もあったようです。

9月に入り立て続けに感染者が急増したことを受け、プラハ市内では9月9日からあらゆる店舗入店時のマスク着用義務およびレストラン等の深夜営業停止、14日からは学校施設に入る際のマスク着用義務(子どもたちとその親)が決まりました(ただし教室では外してよい)。また、お隣の国ドイツではプラハもしくはチェコ全土からの旅行者に対して5日間の隔離を求めることを検討中という話も出ています。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

休業補償:
私の知る範囲では、非常事態宣言等が原因で収入が減った個人事業主に対して補償金最大44,500コルナ(約22万円)支給、社会保険料および健康保険料の支払い半年間免除といった休業補償がありました。

自治体による布マスク配布:
私が住んでいた町では、市役所にカラフルな布マスクの入った段ボールが無造作に置かれており、ご自由にどうぞといった感じでした。これは自治体によって差がありそうです。

温泉・スパ施設クーポン:
国内観光を後押しする策として、チェコの温泉・スパ施設に6泊以上滞在し5つ以上のケアプログラム(マッサージなど)を受ける場合に使用できるクーポン最大4,000コルナ(2020年7月1日~12月31日の滞在に限る)というのがあり、これはちょっとチェコならではで面白いかも、と思っています。機会があれば使いたいです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください

ロックダウンが終了し様々な規制が解除されたことで、街にはずいぶんと活気が戻ってきました。日常生活という面では、ほぼ通常に戻りつつあるように感じています。お店や公共機関、地下鉄などの入り口には消毒液が設置されており、多くの人が手を消毒してから入りますが、マスクをしている人はほとんど見かけなくなりました。(ただし着用が義務付けられているプラハの地下鉄では、みんなきちんとマスクをしています)

7・8月はホリデーシーズンで、行き先によって規制内容が違うので注意は必要ですが、感染にじゅうぶん気をつけながら旅行には出かける、というスタンスの人が多いです。

⑤近況について、ご自由にお書きください

日常生活が戻りつつあるとはいえ、コロナ発生前と比べ観光客は格段に減り、経営が立ち行かなくなったお店も少なくありません。伝統あるお店や劇場などが閉鎖されているのを見ると寂しい気持ちになりますし、私の周囲でも転職やビジネスの変更を余儀なくされた人びとがいます。実際、私も家族の転職にともない都市部に引っ越しました。しかしそんな困難も新たな人生のチャンスととらえ、希望を捨てず新しいことにチャレンジしていくチェコの人たちの姿が印象的です。まだまだ第二波の恐れや経済状況など不安要素もありますが、柔軟にとらえて前向きに進んでいかなければと思っています。

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岡戸久美子(おかど・くみこ):英語翻訳者・通訳者。チェコ共和国プラハ在住

コロナ終息に向けて:各国レポート第二弾(10)オランダ

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オランダ(人口約1738万人)

國森由美子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

7月初旬より、オランダ国立公衆衛生研究所(RIVM)のウェブサイトでは、詳細なレポートをPDFファイルにまとめて公開し、一週間ごとに更新しています。検査数に関しては、4月に入ってから徐々に拡大しており、現在は、疑わしい症状のある人はその時点から自宅待機すると同時に、居住地域の最寄りの保健所(GGD)に連絡・予約して検査を受けられる態勢になっています。

また、オランダ政府のウェブサイトでは別途、「(新型)コロナウィルスダッシュボード」というページを開設しており、国全体、そして地域ごとの感染状況を一目で把握できるようになっています。(不謹慎ながら)おもしろいのは、ここでは各地域の下水中のウィルス含有量の測定結果やその推移も見られることで、思えば、これも重要なデータであることに違いありません。

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上記PDFファイルの2020年9月1日付の統計によれば、オランダの2月からの感染者は累計71,129名、そのうち入院者は1万2182名、死者は6,230名となっています。これまでの検査数は123万6830件、うち感染陽性は2万3441例、その割合は全体の1.9%です。先週の統計結果を見ると、15歳以上64歳以下の感染者が多く、入院者は全体で23名、死者は12名でした。医療現場の逼迫は、現時点では起きていません。また、今年3月から4月にかけての第一波のピーク時には、再生産数の値が2を超えていましたが、9月初旬の時点ではその値は0.99となっています。

6月に緩和策が徐々に拡大するなか、7月上旬から夏の休暇が始まり、国内外の移動が増えると、それに比例して感染者も増加しました。このままでは大きな第二波が到来するおそれがあるということで、政府は8月6日と18日に記者会見を開き、現状を説明、国内での追加的な措置を指示しました(②に後述)。

②国や自治体からの規制や制限はありますか?

5月中旬から緩和策へ移行した後も、オランダでは引き続きテレワークが推奨されています。公共交通機関の利用者には、6月1日からマスクの着用が義務化されました。その後、マスクについては、政府が記者会見を開いた8月6日以降、国ではなく、各自治体に権限が委ねられる形になっており、アムステルダムやロッテルダムの人の密集しやすい繁華街、ショッピングセンターなどで市の要請による義務化が行われていました。違反者への罰金もありましたが、これは8月末で一旦中止となりました(8月28日付の発表)。したがって、9月1日以降のマスクの義務は、6月1日以降実施されている公共交通機関利用時のみとなります。

基本的な感染予防(手洗い、1.5mの距離を維持して行動、風邪症状があれば自宅自粛して検査を受ける)を続けながらも、社会的・経済的な活動が行えるのが理想であるとはいえ、行政もなにかと苦慮しています。最近は、プライベートな集まりや家庭内での感染が増えています。8月18日の政府の会見で、家庭内での集まりの来客は(基本的な予防策を講じつつ)最大6名までという措置が発表されました。もしも感染者が出た場合の追跡可能な許容人数が6名であるという、感染症専門家のアドバイスによるものです。夏の休暇中、海辺や遊園地など、あまりに人が密集した場合には強制的に閉鎖された例もありました。

オランダ国外への渡航情報は、政府のサイトで日々更新されています。そこには黄・オレンジ・赤に色分けされた世界地図も掲載されています。黄色は要安全確認地域(ただし、同地域内にオレンジで示された都市がある場合もあります)、オレンジは必要な場合のみ渡航可能な地域で、この地域から帰国する国民には10日間の自粛義務があります。赤は渡航を勧めない地域です。本来ならば、ここに緑の安全地域があってもいいようなものですが、残念ながら、今は世界中のどこにも安心して行き来できる地域はないということですね。

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6月中旬の時点でオランダ外務省のページに掲載された地図

9月1日の政府の記者会見によると、オランダでは現在、カフェやレストランなど飲食店は政府の規制に従いながら営業を再開していますが、9月から緩和が予定されていたナイトクラブやディスコは、引き続き、当面は再開しないことになりました。

③国や自治体からどんな援助がありましたか? あるいはありますか?

第一波の際には、国からの休業補償は、各自治体に申請する形で行われました。オランダでは、毎年9月第三火曜日に国会開会式が行われ、その際に一年間の予算が発表されます。それに先立ち、今後の支援策(10月1日施行)については、基本的に来年7月1日まで続けられるという方針が政府より発表されたばかりです。

④日常生活や街の様子など、とくに前回のレポート時から変わったことがあれば教えてください。

他国でも見られるように、オランダでも政府の施策に反対するデモが発生しています。それが以前とは大きく異なることではないかと思います。また、新学期が始まるに当たり、これまでオンライン授業だった中・高等学校(オランダは中・高一貫教育)の通学が再開されたところです。6月に再開した小学校までの教育機関では、幸いにも大きな問題は起こりませんでしたが、15歳以上の生徒たちの集まる環境は未知の世界なので、関係者の緊張が感じられます。大学については、これまでどおり、少なくとも12月まではオンライン講義が続く見込みです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

わたし自身の日常生活はこれまでと変わりなく、文芸翻訳、家事などをしながら過ごしています。もろもろ〆切もあり、それなりに忙しい日々です。7月からは、小学生の子どもたちのピアノのレッスンを以前のように対面の出張レッスンに切り換えました。今のところ、何事もなく続けられています。

先週、ワクチンのニュースが報道されました。オランダでは、9月末よりcovid-19のワクチンの試験接種がボランティアを対象に始まるそうです。ボランティアはこれから募集し、三段階にわたり試験接種を行った後、結果が判明するとのことです。

終息まではまだしばらくかかりそうですが、とにかく、石鹸での手洗い、ウィルスの性質を理解した上での行動を心がけて、気長につきあっていくしか術はなさそうです。

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いつもの散歩コースの川沿いの景色。ベンチの横に設置されているのは「本のおうち」、誰もが利用できるミニ図書館です。古本が主体ですが、時々、オランダ文学基金より新しい児童書が届いたりもします。


國森由美子(くにもり・ゆみこ):オランダ語文芸翻訳者、音楽家。オランダ・ライデン在住。