コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾を終えて

「韓国」からのレポートをもちまして、第三弾も終わりです。

昨年5、6月に第一弾、さらに8月末から10月頭にかけて第二弾と続けてきたこのレポート、第三弾も同じ執筆者のみなさまにお願いしたところ、多くの方が引き受けてくださいました。

なかには、現在は日本に一時帰国されている方、あるいは今回は時間的に難しいという方もいらっしゃいましたが、それでも情報を集めてレポートしてくださったり、代わりに知り合いの方を紹介してくださったり……。

おかげさまで、第三弾も第二弾までとまったく同じ26か国27地域からのレポートをお届けすることができました。

ご協力くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。

変異株が猛威を振るい、新規感染者がほぼゼロの日が続いてコロナ禍が終息したかに見えた国でもまた状況が悪化し、一方でワクチン接種が始まり……と、新型コロナウイルスをめぐる状況は、昨年末以降も、世界各国で変化がありました。

ロックダウンがようやく解除されて店舗や学校が以前のように再開している地域もあれば、いままさに感染のピークにあると思われる国、国内の経済格差の問題がますます深刻化している国もあります。

ワクチンについても国によってさまざまなようです。

そういった違いがある反面、今回のレポートを読み、コロナ禍はまだ終息していないこと、今後もけっして油断できないこと、各国政府がワクチン接種を進めていること、それらは世界共通だということもよくわかりました。

ここ1週間ぐらい、今回のレポートを開始したころにはさほど話題になっていなかったインド型変異株(デルタ株)やデルタプラスによって、いったん落ち着いていた感染者数が急増している国のニュースをよく耳にします。

日本も、多くの都市で緊急事態宣言が解除されたり、ワクチン接種が加速していたりするものの、オリンピックを目前に控えている東京でまた感染者数が上昇し、まったく予断を許さない状況です。

それでも、今回のレポートを通じて、コロナ禍での不安や規制や窮屈さのなかにありながら、今後に希望を抱きながら生き生きと日常を送っていこうとする各国の人々の様子や姿勢が伝わってきたのではないでしょうか。

世界じゅうの人たちが希望とともに闘いつづければ、必ず「コロナ」に打ち勝つことができる――そう信じながら、次回こそ終息レポートをお送りしたいと思っています。

株式会社リベル

コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(27)韓国

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韓国(人口約5127万人)

小佐野百合香

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2020年末は一日の新規感染者が1,000人を超える非常事態だったのですが、それ以降は一日300~600人を前後している状況です。そのうち50%以上が首都であるソウルとその周辺地域である京畿道(キョンギド)に集中しています。

また去年8月のソウルにあるサラン第一教会を中心に起こったような集団感染は起きていませんが、会社や飲食店などでの小規模な集団感染が続いています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

韓国では2021年の2月末からワクチンの接種を開始しました。 当初は韓国政府がワクチン確保に後れを取っているというような批判が国内でありましたが、接種が始まってからは順調に進んでいるという印象です。

韓国には「住民登録番号」という国民に番号を割り当てる制度があるため国民の把握と本人認証が容易であること、あらゆる面でオンライン化が進んでいるためスムーズな予約が可能であることが順調な接種の要因だと思われます。

全ての人がホームページからの予約が可能ですが、デジタル機器に不慣れな高齢者の場合、コロナ予約専用のコールセンターからの予約も可能です。予約が済めば、決められた時間に病院に行き接種を受けるだけです。友人の母親がワクチン接種を受けた時は待機時間もほとんどなくすぐに終わったそうです。

また、ワクチンは1瓶あたり6人程度の接種が可能ですが、予約をキャンセルする人が出るとその分のワクチンを廃棄することになってしまいます。そのような「残余ワクチン」を照会することのできるシステムが導入され、韓国の無料通話メッセンジャーアプリのネイバーやカカオトークを通して予約すると接種を受けることができるようになっています。

現在(6月20日時点)、韓国では1500万人がワクチンの1回目の接種を済ませました。これは韓国の全体人口の29.2%に当たります。2回目の接種まで済ませた人は400万人で7.9%となっています。

7月からは幼稚園と小中学校の教職員、大学入試を控えた高校3年生とその教師の接種が開始し、26日からは50代、8月中旬からは優先接種対象を限定することなく18歳~49歳のワクチン接種が開始します。現在の接種のスムーズさから見て、予定通り進むだろうと思われます。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

ワクチン接種の進行に伴い、7月からはソーシャルディスタンスの規制が改変されることになりました。ソーシャルディスタンス規制(or 防疫レベル)が5段階から4段階に引き下げられ、現在のように新規感染者が500人以上1,000人以下の場合、クラブや飲食店などは6人まで集合可能に変更され(改変前は4人まで)、7月15日からは8人までに緩和されます。

また、営業時間も夜10時までと制限されていたのが夜12時までとなりました。人数制限と営業時間の制限により大きなダメージを受けていた自営業者からの不満が高まっていたため、それに対する配慮もあると思われます。

12月から始まったマスクの義務化は変わらず、違反すると10万ウォン(1万円)以下の罰金が義務付けられています。

また国内での移動制限はありませんが、海外から入国する際には「陰性証明書」の提出と2週間の隔離が義務付けられており、違反すると罰金が科されます。

感染者に対する支援に関しては、先日、韓国人の友人がコロナに感染したのですが、治療施設と食事が2週間無料で提供されたそうです。また、感染者との濃厚接触者になった場合も2週間の隔離が義務付けられているのですが、水やインスタント食品などが家に届けられることになっています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

周りでも接種を済ませた知り合いがかなり増えました。接種が順調に進んでいることと、規制が緩和されたことで、少し先が見えてきたような雰囲気になっています。

ワクチン接種に伴い、今年の2学期からは幼稚園生から大学生まで対面授業が開始されるとの発表がありました。1年半のオンライン授業では授業の質も落ち、友人との交流が減ってしまうため、精神的につらい面もあったので嬉しい知らせとなりました。

しかし、ワクチン接種が進んでいるといっても感染の可能性が全くないわけではなく、韓国の保守団体や極右キリスト教団体がワクチン接種を否定するようなニュースを流しており、保守的な高齢者がワクチン接種を拒否しています。

また、3か月以上前のことですが、去年8月に大規模な集会を開いて集団感染を引き起こした団体が、3.1独立運動を記念する「3.1節」の時にも大規模集会を開こうとしたことが問題になりました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

私は去年の2月に日本に一時帰国して以来、1年以上帰国できていない状況です。帰国したい思いはありますが、陰性証明書の発行に数万円かかってしまうことと、夏休みの2週間を隔離生活に費やすのが嫌だったため帰国せずに韓国で過ごすことに決めました。

私も今年中には韓国でワクチンを接種できそうなので、年末に日本に帰国しようと思っています。残念ではありますが、コロナ禍でも韓国でできる楽しみを見つけて過ごそうと思います。


小佐野百合香(こさの・ゆりか):ソウル市立大学に在学中。韓国史学科 3年生。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(26)ルワンダ

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ルワンダ(人口約1230万人)

吉田香奈子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

6月19日現在、新型コロナウイルス感染者数は累計30,517人、累計死者数が379人という低い水準で短期的な増減のサイクルを繰り返しています。医療現場も落ち着いており、大きな混乱はみられません。

今のところ、変異株の拡大についても公には発表されていません。感染の中心地は昨年末から今年初めまでは首都キガリだったのですが、今年の5月末には、南部のブルンジとの国境地帯や西部のコンゴ民主共和国との国境地帯に移ってきていました。

しかし、感染の沈静化に伴って移動規制や集会の規制が緩和されるにつれ、6月に入ってから再び首都キガリでの感染が拡大しつつあります。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

海外からワクチンの提供を受け、6月20日現在、約40万人が接種しました。まずは、高齢者、医療関係者、政府関係者など、特に緊急に接種が必要な約30万人が接種し、このグループが2回接種を受けた後に、他の優先順位が高い人々も接種対象となっています。

接種対象者は政府が指定しています。ワクチンに対する拒否的な世論は少なく、概ね平静な環境でワクチン接種が進んでいます。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

2020年3月から2週間おきにルワンダ内閣府から国民に対して、感染予防措置に関する通達が出されつづけています。深夜の移動禁止、公共の交通機関(ミニバス)の座席占有率、一般の企業や会社における従業員出席率、集会の規模、飲食店の営業についての規制で、感染状況によって随時制限内容が変わります。

マスクは公共の場では着用することが義務付けられています。また、入国・出国については、入国前のPCR検査の陰性証明書を提示することと、ルワンダ到着後にもPCR検査を受け、24時間以内に検査結果が出るまでは指定のホテルに滞在することが義務付けられています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

昨年の6月頃から実質的に飲食店の営業が解禁され、公共の交通機関も営業を再開し、学校も再開しているため、市民の生活は以前のような活気を取り戻しつつあります。

ルワンダ人はもとより、外国人の同僚や、国際機関で働いている知人も事務所に出勤しており、かつてのように仕事の合間やランチの時におしゃべりに興じて大笑いすることはありませんが、仕事で、フェース・ツー・フェースで会話できる有り難さをかみしめているようです。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

コロナ以前、ルワンダ人の同僚には、職場で長時間働くことを尊ぶ傾向が見受けられましたが、今では在宅勤務にも慣れてきつつあるようにみえます。

日本人のように相手の顔色を伺いながらコミュニケーションを取ることに慣れていたルワンダ人ですが、コロナ禍が短い期間で沈静化するとは思いませんので、長い目でみると、コロナはルワンダ人のコミュニケーションのあり方まで変えていくかもしれないと思っています。


吉田香奈子(よしだ・かなこ):主婦。夫は国際NPOに勤務している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(25)マレーシア

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マレーシア(人口約3200万人)

橋本ひろみ

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年6月現在、マレーシアは新型コロナウイルス感染症の第三波が到来し、完全ロックダウン(社会・経済部門の完全封鎖)中で、私たちは非常に緊迫した状況の中で生活しています。

6月10日の時点での1日の新規感染者数は5,671人で、重症患者数は911人、そのうち呼吸器装着者は462人です。1日の死亡者数は73人で、累計3,684人となりました。以下のグラフは2021年6月10日時点におけるここ10か月間の1日の新規感染者数の推移です。

マレーシア3-1

マレーシアでは、ラマダンという1か月間の断食月の直後に、ラマダン明けを祝うイスラム教徒最大の祝祭であるハリラヤがあります。帰省したり、家族や親族、友人と集まって食事をしたりして祝います。今年は5月13日と14日で、もちろん様々な制限があったのですが、この祝祭を原因とするクラスターが多く発生し、5月28日に新規感染者数がついに8,000人を超え、陽性患者数が7万人を突破という事態に陥りました。

重症患者の受け入れに支障をきたすなど医療が逼迫していることから、マレーシア政府は6月1日より14日まで完全ロックダウンの期間を設け新規感染者を抑え込む対策を決定しました。その後更に2週間延長され、完全ロックダウンは6月28日まで継続されます。

知人や近所など私の身近でも感染者が出るようになり、かなり緊迫した状況が続いています。重症患者の治療に当たっている知人の医師によると、集中治療室のベッドも全て埋まっており、呼吸器も最後の一つを誰に着けるべきかを決定しなければならないほど、医療も逼迫しているとのこと。何としても感染者の増加を食い止めなければならない状況です。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

マレーシアではワクチン接種は任意であり、18歳以上の外国人を含むマレーシア居住者に対して無料で行われ、ファイザーやアストラゼネカなど現在6670万回分(人口109.65%相当)が確保されています。接種はほとんどが2回必要ですが、なかには1回で済むものもあります。

マレーシア国家ワクチンプログラムが2021年2月24日に開始され、来年の2月までに少なくとも2360万人の接種を終了する予定で、三段階に分けて実施されます。

第1段階は、2021年2月から実施され、政府・民間医療従事者や警察や食料品の販売などを行う日常生活に必要不可欠なサービスを行うフロントライナー。第2段階は、2021年4月から実施され、第1段階で接種を済ませていない残りの医療従事者や65歳以上の高齢者や心臓病などの基礎疾患を有する高リスク者など。第3段階は、2021年5月から2022年2月にかけて実施され、18歳以上の外国人を含むマレーシア居住者が対象となります。

数か月前までは、国の懸命なワクチン接種の呼びかけにもかかわらず、副反応への懸念などにより、特に地方で登録後のキャンセルが相次ぐなど、計画通りになかなか進んでいませんでした。ですが、感染状況がひどくなったこともあり、現在はかなり加速してワクチン接種も進んでいるようです。しかし、6月11日の時点では、1回以上の接種が終了した人は人口の9.2%、必要回数の接種が終わった人は人口のまだ4.1%で、予定よりもかなり遅れています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

マレーシア政府は経済への影響を考慮し、検討を重ねてきましたが、歯止めのきかない新規感染者の増加を何とか食い止めるために、現在、完全ロックダウンを実施しています。基本的に不要不急の外出は禁止で、生活に不可欠な業種を除いた全ての経済・社会活動が停止されていますが、国際貿易省が許可した製造業などのエッセンシャルサービスに関しては操業できることになっています。レストランはテイクアウトのみ可能で、時間制限があります。

店舗や会社に入る前には、My SejahteraというアプリでQRコードをスキャンまたは手書きによる登録が必要で、入場前には体温測定が行われ、37.5度以上だと入場できません。顧客は半径1メートルの物理的距離を保つこと、さらに人数制限やマスクの着用といった厳しい条件があり、違反者には罰金が科されます。学校も全て閉鎖され、授業は全てオンラインで行われています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

現在は完全ロックダウンの真っただ中にあり、ほとんどが在宅勤務です。ライフスタイルも日常の活動はオンラインが中心となり、外出や移動が制限されています。現在急激に感染が拡大し、感染の不安を感じながらも経済活動を止めるわけにはいかないという状況の中、人々のストレスは限界に近くなっています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

去年の感染が始まったころは、マレーシアは封じ込めが成功しているなどという話もありましたが、コロナウイルスが存在する以上、いつでもどこでも爆発的に感染が拡大する可能性はあり、どんな状況にあっても、徹底して予防していくほかないのではないかと思います。ロックダウンのおかげで、今は新規感染者数が減少傾向にはありますが、まだまだ時間がかかりそうです。

コロナをどう抑え込むかというより、どのように付き合っていくか、その中で最善の方法を生み出す力を私たちが持てるよう、進化していかなければならないと思っています。

ロックダウン中の道路

ロックダウン中の道路


橋本ひろみ:マレーシア、クアラルンプール在住。翻訳者、日本語教師


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(24)オーストラリア

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オーストラリア(人口約2499万人)

徐廷美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第2弾の報告から感染状況に大きく変化はなく、新規の市中感染者はほぼゼロという状態が続いていた。新規感染者のほとんどは海外からの入国者で、隔離先のホテルの従業員が感染するケースが数件あった。しかし、5月下旬からビクトリア州メルボルンで市中感染者が出始め、州政府がロックダウンを決定している。

ただ、それでも1日の新規感染者数は15人前後にすぎない。そのため、医療現場が大きな影響を受けることはなく、一般の受診者はコロナ以前とほぼ同じように医療が受けられている。病院のスタッフも、元々マスクの習慣はないため、マスクなしで業務を行っている。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

2月下旬からワクチン接種が開始された。まず医療関係者のなかでも、コロナ患者に接触する確率の高い救急医療従事者に優先接種され、4月ごろからその他の医療職、そして現在では医療関係者の家族にまで接種対象が広がっている。

一方で、老人施設や障がい者施設でのワクチン接種も並行して行われてきた。ワクチンにはファイザー社とアストラゼネカ社製が使用されている。副反応として血栓症が見られるとの情報を受けて、アストラゼネカ社製のワクチンへの懸念が高まっているが、政府は50歳以上には血栓症のリスクが少ないとして、50歳以上の対象者にはアストラゼネカ製を勧めている。

現在、ワクチン接種が完了した人は54万人で、人口の2.2パーセント。市中感染がほとんど見られないためか、積極的にワクチンを接種しようという感覚があまりないように見受けられる。

筆者も看護師であり、すでに2回の接種を完了した。ワクチンの接種は、地域の大型公立病院にハブセンターが設置され、本人確認、問診、接種、接種後の副反応の経過観察という流れが、多くのスタッフによって管理されていた。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在でも、オーストラリア人と永住権者の海外渡航は原則禁止されている。個人的事情がある場合は申請して、許可を受ける必要がある。

また、永住権者を除く外国人の入国は厳しく制限され、ほぼ国境を封鎖している状況だ。元々オーストラリアは観光国であり、外国人留学生も多かったため、外貨収入が激減したダメージは大きいだろう。国内の移動制限はなかったが、今回のメルボルンのロックダウンにより、一部地域の移動が制限された。

小中高校は通常通り対面授業で行われているが、大学ではオンライン授業が主流となっている。市中でのマスク着用義務はないが、メルボルンのクラスターの発生に伴い、一時的に公共交通機関でのマスク着用が義務化された。

飲食店と娯楽施設は通常通りの営業を続けている。5月からシドニーを中心としたニューサウスウェールズ州では、18歳以上の住人を対象に飲食クーポンと娯楽クーポンがそれぞれ50ドル分ずつ配布され、経済の活性化を図ろうとする姿勢が見られた。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

ほとんどの新規感染者が海外からの帰国者であったため、イギリス型変異株の流入は早くからあったと思われる。今回のメルボルンの市中感染では、デルタ株(インド型変異株)の発生というニュースもあり、より感染力が高いとの報告もあるため、危機感が広がっている。6月中旬に入って、シドニーでもインド変異株の小規模クラスターが発生し、危機感が多少高まっている様子が見られる。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

市民生活はほとんどコロナの影響を受けておらず、買い物や外食など日々の生活には全く支障がない。しかし、いまも在宅勤務をしている人は多く、大学生もオンライン授業が中心なので、バスや電車の混雑はあまりない。また、海外渡航の禁止によって海外旅行を楽しむことはできず、全体的にレジャーも差し控えている印象がある。

また先に述べたように、観光業、航空業、教育産業への打撃が続いているため、政府としてはワクチン接種を推し進め、国境開放へとつなげていきたい考えだ。筆者は一時滞在者であるため、原則オーストラリアから出ることへの制限はない。

しかし、そうした一時滞在者(労働ビザ、学生ビザ、ワーキングホリデービザ、観光ビザ保持者)がオーストラリアへ入国するのは、非常に難しく、ほぼ認められていない(一部、労働ビザ保持者には渡航許可がおり始めている)。オーストラリアへの行き来が、もう少し制限なくできるようになることを願っている。


徐廷美(そ・じょんみ):オーストラリア・シドニー生活6年目。日豪両国の看護師資格をもち、現在は大学院で看護学を専攻している。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(23)スロヴェニア

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スロヴェニア(人口約208万人)

木村高子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スロヴェニアでは2020年10月以降、再び感染者が急増して、第二波に突入しました。前回のレポート後の12月4日には新型コロナウイルスによる死者数は合計1,653名となり、いくつかの分析サイトによれば、人口10万人あたりの1日の平均死者数が世界で最も高い国、という不名誉な記録を樹立してしまいました。

2020年春の第一波の際には、隣国のイタリアやフランスなどと比べても、それほど深刻な影響は感じられなかったのですが、夏季バカンスから人々が帰ってきた秋から、事態は悪化していきました。しかしその後、年末からワクチン接種が順調に進み、現在では(6月上旬)1日あたりの新規感染者数も300人台まで減少し、落ち着きをとり戻しています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ワクチンは12月下旬に到着し、特に死亡率の高さが問題となっていた介護施設入居者、その職員、医療機関関係者などから接種が始まりました。続く数か月の間に高齢者は次々に接種を受け、また教育関係者も優先接種対象者とされたため、大学職員である夫も接種を受けました。

優先接種の対象者には、個別に連絡がきたようです。高齢者はもちろん、それより若い年齢層の接種も順調に進んでいるようです。5月に高校卒業試験がある若者も、4月から接種対象者となり、また5月6日には、誰でもワクチン接種を申請できるオンライン登録受付が開始されました。5月末の時点で、人口の約30パーセントが1回目の、16パーセントが2回目の接種を済ませています。

4月以降、ワクチン接種の進展とともに感染者数は減少し、政府は6月15日に、コロナ流行終息宣言を出しました。ただし、これで規制状況が劇的に変わるということはないようです。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

感染状況が深刻だった時期には、食料品店やガソリンスタンドといった日々の生活に欠かせない店以外は、レストランも含めすべて閉鎖されていました。また学校もオンライン授業に切り替わりました。ただ、町が文字通りゴーストタウンと化した去年の春に比べると、ロックダウン疲れなのか、人出はそれほど劇的には減少しなかった印象があります。

この4月以降、店舗も徐々に再開され、屋外で飲食する場合は特に規制はありませんが(もちろんソーシャルディスタンスはとりますが)、室内の場合は、陰性証明書、罹患証明書やワクチン接種証明書の提示が求められているようです。4月下旬には国内の移動制限が解除され、すべての地方間の移動が認められるようになりました。

四国ほどの大きさの国土が200余りの自治体に分かれ、行き来ができなかったというのは日常生活に影響する大きな問題でしたので、地方間の移動制限解除にはみんなほっとしています。5月下旬には、すべての国境でコロナ感染予防のチェックがされていたのですが、それも撤廃されました。規制緩和後も、お店や公共施設など、室内でのマスク着用義務は続いています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

大学生の息子も入学以来、ろくに大学に行けないままオンライン授業に移行していましたが、ようやく4月から週3回ほど、大学で授業を受けているようです。

ドラッグストアなどの日用品を売る店舗は、規制が最も厳しかった時期にもずっと開いていましたが、その中の靴下コーナーだけは、ロープで立ち入りできないようになっていたのが、分類の厳しさを示しているようで驚きました。販売が許可される生活必需品に含まれるのは、食料品や医薬・衛生用品、燃料などだけのようです。

またつい最近制限が解除されるまで、友人たちとはオンラインでしか顔を合わせられませんでしたが、クリスマスやイースターなどには、人数を制限して親族が集まることが特別に許可されました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

私自身は、実は1月末に実家の都合で日本に一時帰国し、現在に至っています(ですから最近の状況は直接経験していません)。前述通り、スロヴェニアではワクチン接種も順調に進み新規感染者数も減って、状況は好転していると感じています。もちろん、夏のバカンスシーズンに再び人の往来が激しくなればどうなるか、予断を許しませんが。

数週間後にはスロヴェニアに戻ることを考えています。スロヴェニアでは、日本からの入国者はPCR検査不要とのことですが、経由国ドイツは、たとえトランジットだけでも陰性証明書が必要なので、国際的な移動が不便な状況はまだ当分続くようです。

スロヴェニアに戻ったら、直ちにワクチン接種の予約を取りたいと思っています。スロヴェニアの状況を見ても、ワクチン接種の広がりとともに感染者数は大幅に減少したので、このまま世界の状況が落ち着いていくことを願っています。


木村高子(きむら・たかこ):英語・フランス語・スロヴェニア語翻訳者。スロヴェニア・リュブリャナ在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(22)ポーランド

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ポーランド(人口約3839万人)

岩澤葵

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第二弾のレポート以降、冬の到来とともに新型コロナウイルス感染者数は爆発的に増えました。2020年10月から11月にかけて新規感染者数が日に日に増え、11月半ばには2万人に達しました。予想もしていなかった感染者数が毎日のように続き、再度ロックダウンが発表されました。この第二波到来以降、最悪な状況がこの先半年以上続くとは、誰も想像していなかった、いや、想像すらしたくなかったでしょう。

その後クリスマスから年末にかけて、政府は外出や帰省、大人数でのパーティーの自粛を要請。年明けの直前に「国民隔離措置」という更に厳しい措置をとりましたが、あまり効果はありませんでした。

3月には1日の新規感染が3万人を超える日もあり、終息には程遠い日々が続きました。

今年の冬は毎日のように氷点下10度前後と過去数年と比べ気温が非常に低く、4月半ばの日中にも雪が降るほど寒さが長く続いて厳しかったため、これも感染拡大の一つの原因ではないかと言われています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ポーランドでは医療従事者や教育関係者、続いて高齢者を優先して接種が開始されました。4月下旬からは一般市民の接種も始まり、これにより規制緩和が進むなど急速に変化が起きています。

一般枠の接種は電話やインターネットよる予約制で、基本的に誰でも受けることができます(対象者はPESELを所持していることが原則。PESELとはポーランド国民が所持する個人ナンバーで、外国人でも住民登録をすることで取得可能です) 。また基本的にワクチンの種類や接種する病院も選ぶことができるため、予約をして実際に受けに行くことについて、特にハードルが高いとは感じません。

年齢別に予約開始日が設定されていて、5月に入ると徐々に私の周りの若い世代(20代)も受け始め、ワクチン接種がより身近に感じられるようになりました。保健省によると (5月6日時点で)、約1,460万人(全国民の38%)が少なくとも1回目のワクチン接種を受け、そのうち750万人(国民の19%)が2回の接種を完全に終えています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

ワクチン接種の広がりと感染者数の減少によって、昨年から継続されていた規制が大幅に解除され、人々は日常生活を取り戻しつつあります。

5月28日から飲食店の店内飲食が可能となり、ショッピングセンターや映画館も営業を再開しました。学校での授業、コンサートやイベント等の集会も次々と再開されています。屋内でのマスク着用・ソーシャルディスタンスの確保・人数制限等、幾つかの制限は残るものの、パンデミック以前の生活に戻ったような気分です。

長く続いたロックダウンと厳しい冬がようやく終わり、みんな太陽の下へ繰り出して心地よいポーランドの初夏を楽しんでいます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

国民隔離措置の厳しい規制にも関わらず第二波の感染拡大が収まらなかったのは、クリスマス休暇前後のイギリスからの変異株流入が大きな原因とされています。この影響を受けて、その後、厳しい国境管理と入国後の隔離規制が追加されました。

このような状況下でワクチン提供は非常に効率的に行われ、規制の緩和に繋がったこともあり良い意味で期待を裏切られました(ポーランド政府のコロナ措置に対しての市民の満足度と期待度がそれほど高くなく、ワクチン提供の効率とそれによる規制緩和等の良い流れはより嬉しい結果となったため)。

今後ワクチンパスポートを所持していることが海外渡航やイベント等の入場条件となる可能性が高くなってきたこともあり、接種希望者は更に増えていくでしょう。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

規制緩和を受けて延期に延期を重ねていたコンサートがついに実現し、私も1年3か月ぶりにお客さんの前でステージ上での演奏をすることができました。これまでオンラインコンサートや無観客開催をするなど、なんとか演奏の場を繋いできましたが、やはり観客を目の前にして、仲間と同じ空間で演奏するのとは全く違います。コンサート当日はたくさんのお客さんとオーケストラが音楽を通して一体となり、興奮と熱気に満ちた一夜となりました。

以前は当たり前に手にしていた喜びを改めて感じ、少しでも早く全ての日常が戻って来てほしいという思いです。


岩澤葵:クラリネット奏者。ポーランド・ヴロツワフ在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(21)ニュージーランド

newzealand

 ニュージーランド(人口約495万人)

目時能理子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

ニュージーランドは現在(2021年6月4日)、基本的に市中感染者はおらず、国外からの帰国者が隔離施設にいるあいだに感染が発覚するケースがときおり報告されるだけです。これは、昨年、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってすぐに厳しいロックダウン体制を敷き、いったん国内の感染者数をゼロにしてから、事実上国境を閉ざしてウイルス流入を防いでいることが大きいと思われます。

これまでのニュージーランドの感染状況は累計で、死者26名、快復した感染者2,639名、現在感染している人が17名となっています。この17名はいずれも海外からの帰国者で隔離施設にいるため、新型コロナウイルスで入院していたり、自宅療養している人はゼロという状況です。

今年2月からワクチン接種がスタートし、優先順位によって以下の4つのグループに分けられています。

1.国境管理および隔離施設関係者等、2.医療従事者、長期滞在型介護療養施設職員と入居者等、3.65歳以上の高齢者、既往症がある人、障がい者、妊婦、4.その他の在住者(16歳以上)

現在は、3.まで実施中で、4.に含まれる一般人は7月以降に接種開始の予定です。ワクチンは現在国内に滞在している人であれば、国籍やビザの種類を問わず、だれでも任意で無料で接種することができます。

とはいえ、ニュージーランドにいる限り、普段の生活で感染する危険性はほとんどないので、個人的には接種が可能になっても積極的に打とうという気は今のところありません。

②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在は感染者が市中にいない状況なので、特に制限はなく、平時と同じような生活を送れています(とはいえ、市中感染が発生したらすぐに規制がかかるので、明日はどうなるかわからないというのが正直なところですが)。フェイスカバーリング(マスク)は公共交通機関を利用する時のみ、着用が義務付けられています。

PCR検査(無料)は推奨されており、少しでも体調がすぐれなければすぐに検査を受けるよう繰り返し通達されています。

補償に関しては、政府によるこれまでの給与補償はなくなりましたが(休業命令がないので休業する必要がない)、ビジネスや個人をサポートするプラン(コロナで業績が悪化した中小企業・個人事業主向けの無利子貸し付けや、検査結果を待つ間や自己隔離の必要があるため仕事ができない場合の金銭補助など)が新しくできています。

入国制限はあいかわらず厳格に行われ、基本的にはニュージーランド国籍の者と永住権のある者しか入国できません。しかし最近、オーストラリアやクック諸島とのあいだにトラベルバブル(到着後の隔離義務が免除)が設けられ、相互に観光入国ができるようになりました。このトラベルバブルは柔軟に運用されているようで、相手国で感染例が出た場合には該当地域からの入国が一時的に制限されます。

③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

ニュージーランドでは、現在、ロックダウンもなく、コロナ前と変わらぬ日常生活が送れています。子供たちは学校に通い、大規模集会も制限なく開かれ、買い物やレジャーは平常どおり。とはいえ、在宅勤務は以前に比べて増えたように思います。

変わったことといえば、公共機関でのマスク着用と外出先で行動追跡アプリのQRコードをスキャンすることぐらいでしょうか。

しかし、いつまたすぐにロックダウンになるかもしれないという思いは常にあるので、心の中でいつも準備はしています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

今年1月の夏休み(南半球なので季節が正反対です)にニュージーランド有数の観光地を訪れましたが、ハイシーズンにもかかわらず閑散としていて、国境閉鎖により外国人観光客が入れなくなったことの影響を肌で感じました。

ホスピタリティ業界(観光・旅行・ホテル・レストラン・ウェディングなど)や留学産業といった、外国人が顧客の業種はなかなか厳しいようで、破格の値段で受講コースを提供している語学学校も見受けられます。

今後ニュージーランドも徐々に国境を開いて、行き来できる国を増やしていくことになると思いますが、そうなるとどうしてもウイルス流入の可能性が高くなります。そうなったときにコロナの洗礼をほとんど受けていないこの国がどうなるのか少々不安を感じますが、今から心配してもしかたないので万事塞翁が馬の気持ちで乗り切りたいと思います。

今は日本への一時帰国が非常に大変になってしまっているので、早く状況が落ち着いて行き来できる日が来ればいいなと願っています。


目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(20)デンマーク

denmark

デンマーク(人口約580万人)

針貝有佳

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年6月上旬現在、北欧デンマークの感染状況は局地的な増加はあるものの、全体的には落ち着いています。2020年冬に感染が急増しましたが、12月~2021年3月の厳格なロックダウンで収まりました。4月には慎重にロックダウンの段階的解除を始め、5月には社会が大きく開き、街には活気が戻ってきています。

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬) 新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬)
新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

次に、ワクチンについて。

デンマークのワクチン接種は2020年12月に開始し、現在、2021年6月初めには国民の38.7%が1回目の接種済み、22.5%が2回目接種を済ませています。老人ホーム入居者・リスクの高い病気を抱えた人・85歳以上の高齢者・医療や施設関係者などからワクチン接種が始まりました。

高齢者から順番にワクチンを接種し、現在は65歳以上のワクチン接種がほぼ完了して、40代のワクチン接種が始まったところです。ただ、若者が感染源になることが多いので、現在、若者のワクチン接種も同時に進めています。若者のワクチン接種は10代後半が第一優先で、その後20代前半、20代後半と続きます。今、ちょうど20代前半のワクチン接種が始まったところです。夏には上記該当者の大半が、9月には(接種を希望しない人以外は)全員がワクチン接種完了の予定です。

②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

2021年4月、段階的ロックダウン解除とともにコロナパスポート制度が導入されました。コロナパスポートとは、ワクチン接種済み・感染から回復済み・72時間以内の陰性結果(PCR検査及び抗原検査)を証明するパスポートのことを指し、携帯電話の専用アプリで表示できます。飲食店・美容院・文化施設などを利用する場合にはコロナパスポートの持参が義務づけられています。

コロナパスポート制度はデンマークでは上手く機能しているように感じます。その理由として、検査を無料で簡単に受けられるという点が挙げられます。PCR検査は事前にオンラインで日時場所を指定して予約します。多くの場合、大きな仮設の検査会場で非常にシステマチックに迅速に検査が行われ、たとえ行列ができていてもあまり待たずに検査を受けることができます。抗原検査は予約も不要で、検査会場に足を運べばその場で受けることができ、15~30分以内に結果が確認できます。手軽な無料検査のおかげでデンマーク国民がこれらの検査を受ける率は非常に高く、コロナパスポートも普及しています。

ちなみに、私の場合、普段会わない人に会う際にのみ念のため検査を受けており、今までにPCR検査と抗原検査を合わせて約10回受けました。けれど、デンマークには私よりもはるかに多く検査を受けている人がたくさんいます。とくに、職業柄、日常的な検査を欠かせない人も多く、そういった方は検査を受けることがルーティーン化しています。

また、職場や学校で感染者が出た場合は、該当部署や学年を一時閉鎖して全員に検査を義務づけるなど徹底した対策を行っているので、安全性は高いように感じます。

③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

2020年の秋冬に再び感染者数が急増し、変異種への懸念もあったことから、12月から厳しいロックダウンが行われていました。寒くて暗い冬、ショップはクローズし、街はゴーストタウンのような雰囲気でした。また、在宅ワークや在宅学習ばかりで人に会うこともできず、若者をはじめとする国民のストレスは限界に達していました。

3か月半にわたるロックダウンの後、4月上旬のイースター休暇明けにやっと慎重に段階的なロックダウン解除が始まり、4月から5月にかけて大きく社会が再開しました。現在はショップも飲食店もオープンしています。ショップに入るためにはマスク着用義務がありますが、コロナパスポートは不要です。飲食店も屋外はコロナパスポート不要なので、晴れた日にはテラス席が多くの人で賑わっています。また、飲食店の中もコロナパスポートを持参すれば入れるので、ちらほらとお客さんが入るようになっています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

12月中旬から2月上旬まで低学年の子ども2人がずっと在宅だったときは本当に大変で、どうなることかと思いました。ただでさえ昼が短く寒い冬、先が見えない暗さと不安感がありましたが、今は子どもたちも学校に通い、街に活気が戻っているので、とても嬉しいです。デンマークでは検査率が非常に高く、ワクチン接種の見通しが立っていることもあり、明るく夏休みを迎えられそうな予感がしています。

ただ、海外在住者として気になるのが「日本に気持ちよく帰国できるのはいつになるのだろう?」ということです。そろそろ日本の家族・友達・温泉・美味しい和食が恋しくなってきました。一刻も早く状況が落ち着き、安心して一時帰国できる日が来ることを願っています。

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています


針貝有佳(はりかい・ゆか):デンマーク語の翻訳者、ライター。デンマーク・ロスキレ在住。ホームページhttps://www.yukaharikai.com


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(19)モザンビーク

mozambique

 

モザンビーク(人口約3000万人)

森本伸菜

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか。

モザンビークでは感染者数は増えてはいますが、欧米ほどの急激な増加はなく、医療機関の逼迫も起こっていません。6月1日時点での感染者総数は7万850人、死者は836人にとどまっています。1、2月には1日の感染者数が700人にもなりましたが、今は過去1週間の一日平均は31人です。

隣の南アフリカ発の南ア変異種は世界に広がっていますが、南ア自体の感染者数も1月初旬の1日の1万7000人以上から6月1日時点では3,600人にまで下がっています(しかし2週間前の感染者数は1,700人にまで減っていたことを考えると、最近のこの増加傾向は、第3波が始まっていることを示しているのかもしれません)。

世界中の専門家がアフリカで広がると酷いことになると心配していましたが、なぜかそうなってはいません。あえてその理由を考えてみると、ひとつに、人口密度の低さが挙げられるのではないかと思います。その意味でやはり、人口密度が高い首都マプトは感染者数も多いのが実情です。また、先進国では新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初には高齢者施設でクラスターが発生し入所者が多数亡くなったと耳にしましたが、そのような施設がアフリカにはないことも理由のひとつかもしれません。

トーフの食堂街

トーフの食堂街

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

医療従事者のワクチン接種は終了しています。現在は45歳以上の人と免疫系疾患のある人が対象になっています。登録などはなく、単に身分証明書を持って病院に行けばよいだけです。現在モザンビークで使われているワクチンはアストラゼネカとシノバックです。近所の60歳代のイタリア人の友人はすでにワクチンを受けたと言っていました。今のところワクチン接種率は人口の0.2パーセントです(ジョンスホプキンスのデータより)。

また、南アフリカ変異種が騒がれていますが、モザンビークでコロナの変異種まで調べることはおそらくできないと思います。

 ③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

第2回目のレポートでお知らせしましたように、モザンビークでは2020年4月に緊急事態宣言が発出されましたがその延長は3回までと憲法で決まっております。そのため、2020年9月から公的災害宣言(State of Public Calamity)に変更し、宣言期間を何回でも延長することができる法律にしました。6月1日現在の規制は以下の通りです。

  • 夜の11時から朝4時までの戒厳令
  • 商業施設や会社は朝9時から午後7時まで営業可。ただしレストランは夜9時まで可。
  • モザンビークにいる外国人はビザなどの滞在許可証の有効期限が切れている場合、6月末まで有効期限が自動的に延長される(毎月見直すので、宣言が延長されれば、また翌月末まで有効になるようです)。
  • 宗教集会、会議などの人数は、屋内の場合の上限は75人、野外の場合は150人まで。
  • 結婚式のために集まる人数は20人まで可、しかし他の社交的集まりは禁止。
  • マスク着用は義務。フェイスシールドはマスクに代わるものではない。
  • ゲームセンター、レジャー・スポーツ施設は休業。
  • 公共のプールは定員の30パーセントまで可。
  • ディスコ、バーは休業。
  • 酒の販売は酒屋、食品店、スーパーマーケットでのみ可、なお午前8時から午後1までに限る。
  • ビーチは今月(6月)から水泳とウォーキングは解禁。数人で集まったり、日光浴したりするのは禁止。
  • カジノ、劇場、博物館、美術館など文化施設は定員の40パーセントまで可。
  • 大きなスポーツジムは定員の40パーセントまで。小さなジムは休業。
  • ホテルのプールは宿泊客に限って使用可。
  • 海外からの入国者は新型コロナウイルス陰性証明書を提示する義務がある。

このように、人数を制限して営業を認める、営業時間も少しずつ長くするなど、規制緩和に向かっていることは確かです。もちろん休業などによる補償や援助は全くありません。

学校は通常授業に戻っています。しかし幼稚園はまだ休園です。

コロナ前のマーケットの様子

コロナ前のマーケットの様子

コロナ後(現在)のマーケットの様子

コロナ後(現在)のマーケットの様子

⑤近況について、ご自由にお書きください。

さて、私たちは首都マプトから北500キロの海岸にある小さなリゾート地、トーフで日本食レストランと小さな宿B & Bをやっております。昨年6月から少しずつ営業を再開してきました。最初は食事の持ち帰りのみ、そして週末のみの営業を3か月ほどやり、その後は通常営業に戻しましたが、国からの規制で5月までは夜8時までしか営業できませんでした。今月からは夜9時まで可能になっています。

昨年12月末、経営するB & Bの宿泊客1人の感染がわかり、1か月の休業に追い込まれました。当然PCR検査がスタッフ全員に行われましたが、その結果が出てきたのは3週間後で、ウェイターの3人と私の夫も感染していることがわかりました。しかし、検査結果が出てきたときにはすでにスタッフ全員の2週間の隔離は終わり、病状が出たスタッフも回復しておりました。結果が出るのに3週間もかかる状況なので、その結果の信ぴょう性はちょっと疑問です。夫は陽性でしたが、無症状。私と2人の子どもは陰性でした。

まだバーは営業できませんが、食事と共にアルコールを提供することは認められています。そのため、もっと飲んでいたいお客さんに毎晩9時に帰ってもらうのはひと苦労です。一方、そこを狙って、9時10分頃警察官と飲食店の衛生管理をする保健所の人が見回りにやってきます。この先の成り行きはご想像にお任せします。

上記の規制で5月まで閉鎖されていたビーチが今月から再開されましたが、許可されているのは水泳とウォーキングだけ。砂浜に座ったり日光浴をしたりするのは依然禁止。ウォーキングも「通り抜ける感じ」の歩き方と言われています。

ここトーフ・ビーチは水がきれいで観光名所となっています。普段は、週末や連休になると近隣の市町村はもとより、遠くはマプトからも人が押し寄せます。「押し寄せる」と言っても、日本の夏のようにビーチが混むことはないのですが、それでも水泳とウォーキング以外が禁止されているのは、おそらく、バスなどの移動で人との距離を取れなくなる状況が多い、また人の移動は感染の拡大につながるという理由からだと理解しています。

トーフのビーチ

トーフのビーチ

これらビーチの規制はトーフ全体の経済に大きな影響を与えています。しかし、泳ぐだけで、立ち止まって海を見るだけでも咎められそうな状況では国内の観光客はまだ戻ってこないでしょう。

もうひとつ、私たちの趣味であるサーフィンはビーチが再開されてもまだ禁止されたままです。そこで仲間と作っているサーフィン協会でサーフィンを許可してくれるように嘆願書を書き、州書記官に面会しました。それが功を奏して許可され、最新のビーチ規制に関する布告に含まれているのを見たときは、大きな成果を勝ち取った気分でした。1年以上サーフィンもできず、身も心も内に籠っていたものをようやく発散できるようになりました。

毎年、7、8月(当地では冬ですが)は、ヨーロッパからの観光客でホテルはほぼ埋まりますが、昨年はコロナで国境が閉鎖されたため、海外からの観光客はありませんでした。しかし、逆に、例年この時期ヨーロッパに帰る首都マプトの外国人達が帰省できず、トーフを訪れて長期間滞在していました。今年の夏はどうでしょう?

ヨーロッパのコロナ状況が下火になってきているので、今年はそれぞれの国に帰省する人が多いと思います。国境は開いているので、ヨーロッパからの観光客も来るかもしれません。しかし、それも全てそれぞれのコロナの状況によるので予想は難しいです。

私たちの生活は、友達とディナーやパーティーで行き来できないのが普通になってしまいました。今はごく親しい一家族とだけ月に一度会うぐらいです。

すみレストランの様子。こんな日もけっこうあります

すみレストランの様子。こんな日もけっこうあります

幼稚園の休園で2歳と5歳の子どもたちは、友達に会えない半孤立状態が1年以上続き、恥ずかしがり屋になり社交性を失くしたように見えます。いまや感染を怖れるというより、誰にも会わないのがノーマルになってしまったというのが現実です。最近は長く会っていない友達に会うように心がけています。

私は今、「以前のノーマルライフを少しでも早く取り戻したい」、という強い思いに駆られています。


森本伸菜(もりもと・のびな):モザンビーク・トーフで日本食レストラン「すみバー・アンド・キッチン」を南アフリカ人の夫と経営。現地の子どものためのコミュニティなどの活動に深く関わっている。