コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(22)ポーランド

poland

ポーランド(人口約3839万人)

岩澤葵

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

第二弾のレポート以降、冬の到来とともに新型コロナウイルス感染者数は爆発的に増えました。2020年10月から11月にかけて新規感染者数が日に日に増え、11月半ばには2万人に達しました。予想もしていなかった感染者数が毎日のように続き、再度ロックダウンが発表されました。この第二波到来以降、最悪な状況がこの先半年以上続くとは、誰も想像していなかった、いや、想像すらしたくなかったでしょう。

その後クリスマスから年末にかけて、政府は外出や帰省、大人数でのパーティーの自粛を要請。年明けの直前に「国民隔離措置」という更に厳しい措置をとりましたが、あまり効果はありませんでした。

3月には1日の新規感染が3万人を超える日もあり、終息には程遠い日々が続きました。

今年の冬は毎日のように氷点下10度前後と過去数年と比べ気温が非常に低く、4月半ばの日中にも雪が降るほど寒さが長く続いて厳しかったため、これも感染拡大の一つの原因ではないかと言われています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ポーランドでは医療従事者や教育関係者、続いて高齢者を優先して接種が開始されました。4月下旬からは一般市民の接種も始まり、これにより規制緩和が進むなど急速に変化が起きています。

一般枠の接種は電話やインターネットよる予約制で、基本的に誰でも受けることができます(対象者はPESELを所持していることが原則。PESELとはポーランド国民が所持する個人ナンバーで、外国人でも住民登録をすることで取得可能です) 。また基本的にワクチンの種類や接種する病院も選ぶことができるため、予約をして実際に受けに行くことについて、特にハードルが高いとは感じません。

年齢別に予約開始日が設定されていて、5月に入ると徐々に私の周りの若い世代(20代)も受け始め、ワクチン接種がより身近に感じられるようになりました。保健省によると (5月6日時点で)、約1,460万人(全国民の38%)が少なくとも1回目のワクチン接種を受け、そのうち750万人(国民の19%)が2回の接種を完全に終えています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

ワクチン接種の広がりと感染者数の減少によって、昨年から継続されていた規制が大幅に解除され、人々は日常生活を取り戻しつつあります。

5月28日から飲食店の店内飲食が可能となり、ショッピングセンターや映画館も営業を再開しました。学校での授業、コンサートやイベント等の集会も次々と再開されています。屋内でのマスク着用・ソーシャルディスタンスの確保・人数制限等、幾つかの制限は残るものの、パンデミック以前の生活に戻ったような気分です。

長く続いたロックダウンと厳しい冬がようやく終わり、みんな太陽の下へ繰り出して心地よいポーランドの初夏を楽しんでいます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

国民隔離措置の厳しい規制にも関わらず第二波の感染拡大が収まらなかったのは、クリスマス休暇前後のイギリスからの変異株流入が大きな原因とされています。この影響を受けて、その後、厳しい国境管理と入国後の隔離規制が追加されました。

このような状況下でワクチン提供は非常に効率的に行われ、規制の緩和に繋がったこともあり良い意味で期待を裏切られました(ポーランド政府のコロナ措置に対しての市民の満足度と期待度がそれほど高くなく、ワクチン提供の効率とそれによる規制緩和等の良い流れはより嬉しい結果となったため)。

今後ワクチンパスポートを所持していることが海外渡航やイベント等の入場条件となる可能性が高くなってきたこともあり、接種希望者は更に増えていくでしょう。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

規制緩和を受けて延期に延期を重ねていたコンサートがついに実現し、私も1年3か月ぶりにお客さんの前でステージ上での演奏をすることができました。これまでオンラインコンサートや無観客開催をするなど、なんとか演奏の場を繋いできましたが、やはり観客を目の前にして、仲間と同じ空間で演奏するのとは全く違います。コンサート当日はたくさんのお客さんとオーケストラが音楽を通して一体となり、興奮と熱気に満ちた一夜となりました。

以前は当たり前に手にしていた喜びを改めて感じ、少しでも早く全ての日常が戻って来てほしいという思いです。


岩澤葵:クラリネット奏者。ポーランド・ヴロツワフ在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(21)ニュージーランド

newzealand

 ニュージーランド(人口約495万人)

目時能理子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

ニュージーランドは現在(2021年6月4日)、基本的に市中感染者はおらず、国外からの帰国者が隔離施設にいるあいだに感染が発覚するケースがときおり報告されるだけです。これは、昨年、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってすぐに厳しいロックダウン体制を敷き、いったん国内の感染者数をゼロにしてから、事実上国境を閉ざしてウイルス流入を防いでいることが大きいと思われます。

これまでのニュージーランドの感染状況は累計で、死者26名、快復した感染者2,639名、現在感染している人が17名となっています。この17名はいずれも海外からの帰国者で隔離施設にいるため、新型コロナウイルスで入院していたり、自宅療養している人はゼロという状況です。

今年2月からワクチン接種がスタートし、優先順位によって以下の4つのグループに分けられています。

1.国境管理および隔離施設関係者等、2.医療従事者、長期滞在型介護療養施設職員と入居者等、3.65歳以上の高齢者、既往症がある人、障がい者、妊婦、4.その他の在住者(16歳以上)

現在は、3.まで実施中で、4.に含まれる一般人は7月以降に接種開始の予定です。ワクチンは現在国内に滞在している人であれば、国籍やビザの種類を問わず、だれでも任意で無料で接種することができます。

とはいえ、ニュージーランドにいる限り、普段の生活で感染する危険性はほとんどないので、個人的には接種が可能になっても積極的に打とうという気は今のところありません。

②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

現在は感染者が市中にいない状況なので、特に制限はなく、平時と同じような生活を送れています(とはいえ、市中感染が発生したらすぐに規制がかかるので、明日はどうなるかわからないというのが正直なところですが)。フェイスカバーリング(マスク)は公共交通機関を利用する時のみ、着用が義務付けられています。

PCR検査(無料)は推奨されており、少しでも体調がすぐれなければすぐに検査を受けるよう繰り返し通達されています。

補償に関しては、政府によるこれまでの給与補償はなくなりましたが(休業命令がないので休業する必要がない)、ビジネスや個人をサポートするプラン(コロナで業績が悪化した中小企業・個人事業主向けの無利子貸し付けや、検査結果を待つ間や自己隔離の必要があるため仕事ができない場合の金銭補助など)が新しくできています。

入国制限はあいかわらず厳格に行われ、基本的にはニュージーランド国籍の者と永住権のある者しか入国できません。しかし最近、オーストラリアやクック諸島とのあいだにトラベルバブル(到着後の隔離義務が免除)が設けられ、相互に観光入国ができるようになりました。このトラベルバブルは柔軟に運用されているようで、相手国で感染例が出た場合には該当地域からの入国が一時的に制限されます。

③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

ニュージーランドでは、現在、ロックダウンもなく、コロナ前と変わらぬ日常生活が送れています。子供たちは学校に通い、大規模集会も制限なく開かれ、買い物やレジャーは平常どおり。とはいえ、在宅勤務は以前に比べて増えたように思います。

変わったことといえば、公共機関でのマスク着用と外出先で行動追跡アプリのQRコードをスキャンすることぐらいでしょうか。

しかし、いつまたすぐにロックダウンになるかもしれないという思いは常にあるので、心の中でいつも準備はしています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

今年1月の夏休み(南半球なので季節が正反対です)にニュージーランド有数の観光地を訪れましたが、ハイシーズンにもかかわらず閑散としていて、国境閉鎖により外国人観光客が入れなくなったことの影響を肌で感じました。

ホスピタリティ業界(観光・旅行・ホテル・レストラン・ウェディングなど)や留学産業といった、外国人が顧客の業種はなかなか厳しいようで、破格の値段で受講コースを提供している語学学校も見受けられます。

今後ニュージーランドも徐々に国境を開いて、行き来できる国を増やしていくことになると思いますが、そうなるとどうしてもウイルス流入の可能性が高くなります。そうなったときにコロナの洗礼をほとんど受けていないこの国がどうなるのか少々不安を感じますが、今から心配してもしかたないので万事塞翁が馬の気持ちで乗り切りたいと思います。

今は日本への一時帰国が非常に大変になってしまっているので、早く状況が落ち着いて行き来できる日が来ればいいなと願っています。


目時能理子(めとき・のりこ):イタリア語・英語翻訳家、英語・イタリア語コーチ、ニュージーランド・オークランド在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(20)デンマーク

denmark

デンマーク(人口約580万人)

針貝有佳

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年6月上旬現在、北欧デンマークの感染状況は局地的な増加はあるものの、全体的には落ち着いています。2020年冬に感染が急増しましたが、12月~2021年3月の厳格なロックダウンで収まりました。4月には慎重にロックダウンの段階的解除を始め、5月には社会が大きく開き、街には活気が戻ってきています。

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬) 新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

新規コロナ感染者の状況(2020年春〜2021年6月上旬)
新規感染者数:2021年6月3日 1028名、最近1週間以上の1日平均960名

次に、ワクチンについて。

デンマークのワクチン接種は2020年12月に開始し、現在、2021年6月初めには国民の38.7%が1回目の接種済み、22.5%が2回目接種を済ませています。老人ホーム入居者・リスクの高い病気を抱えた人・85歳以上の高齢者・医療や施設関係者などからワクチン接種が始まりました。

高齢者から順番にワクチンを接種し、現在は65歳以上のワクチン接種がほぼ完了して、40代のワクチン接種が始まったところです。ただ、若者が感染源になることが多いので、現在、若者のワクチン接種も同時に進めています。若者のワクチン接種は10代後半が第一優先で、その後20代前半、20代後半と続きます。今、ちょうど20代前半のワクチン接種が始まったところです。夏には上記該当者の大半が、9月には(接種を希望しない人以外は)全員がワクチン接種完了の予定です。

②現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

2021年4月、段階的ロックダウン解除とともにコロナパスポート制度が導入されました。コロナパスポートとは、ワクチン接種済み・感染から回復済み・72時間以内の陰性結果(PCR検査及び抗原検査)を証明するパスポートのことを指し、携帯電話の専用アプリで表示できます。飲食店・美容院・文化施設などを利用する場合にはコロナパスポートの持参が義務づけられています。

コロナパスポート制度はデンマークでは上手く機能しているように感じます。その理由として、検査を無料で簡単に受けられるという点が挙げられます。PCR検査は事前にオンラインで日時場所を指定して予約します。多くの場合、大きな仮設の検査会場で非常にシステマチックに迅速に検査が行われ、たとえ行列ができていてもあまり待たずに検査を受けることができます。抗原検査は予約も不要で、検査会場に足を運べばその場で受けることができ、15~30分以内に結果が確認できます。手軽な無料検査のおかげでデンマーク国民がこれらの検査を受ける率は非常に高く、コロナパスポートも普及しています。

ちなみに、私の場合、普段会わない人に会う際にのみ念のため検査を受けており、今までにPCR検査と抗原検査を合わせて約10回受けました。けれど、デンマークには私よりもはるかに多く検査を受けている人がたくさんいます。とくに、職業柄、日常的な検査を欠かせない人も多く、そういった方は検査を受けることがルーティーン化しています。

また、職場や学校で感染者が出た場合は、該当部署や学年を一時閉鎖して全員に検査を義務づけるなど徹底した対策を行っているので、安全性は高いように感じます。

③変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

2020年の秋冬に再び感染者数が急増し、変異種への懸念もあったことから、12月から厳しいロックダウンが行われていました。寒くて暗い冬、ショップはクローズし、街はゴーストタウンのような雰囲気でした。また、在宅ワークや在宅学習ばかりで人に会うこともできず、若者をはじめとする国民のストレスは限界に達していました。

3か月半にわたるロックダウンの後、4月上旬のイースター休暇明けにやっと慎重に段階的なロックダウン解除が始まり、4月から5月にかけて大きく社会が再開しました。現在はショップも飲食店もオープンしています。ショップに入るためにはマスク着用義務がありますが、コロナパスポートは不要です。飲食店も屋外はコロナパスポート不要なので、晴れた日にはテラス席が多くの人で賑わっています。また、飲食店の中もコロナパスポートを持参すれば入れるので、ちらほらとお客さんが入るようになっています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

12月中旬から2月上旬まで低学年の子ども2人がずっと在宅だったときは本当に大変で、どうなることかと思いました。ただでさえ昼が短く寒い冬、先が見えない暗さと不安感がありましたが、今は子どもたちも学校に通い、街に活気が戻っているので、とても嬉しいです。デンマークでは検査率が非常に高く、ワクチン接種の見通しが立っていることもあり、明るく夏休みを迎えられそうな予感がしています。

ただ、海外在住者として気になるのが「日本に気持ちよく帰国できるのはいつになるのだろう?」ということです。そろそろ日本の家族・友達・温泉・美味しい和食が恋しくなってきました。一刻も早く状況が落ち着き、安心して一時帰国できる日が来ることを願っています。

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています

我が家の庭テント。お天気の良い日にはテントで寝ています


針貝有佳(はりかい・ゆか):デンマーク語の翻訳者、ライター。デンマーク・ロスキレ在住。ホームページhttps://www.yukaharikai.com


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(19)モザンビーク

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モザンビーク(人口約3000万人)

森本伸菜

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか。

モザンビークでは感染者数は増えてはいますが、欧米ほどの急激な増加はなく、医療機関の逼迫も起こっていません。6月1日時点での感染者総数は7万850人、死者は836人にとどまっています。1、2月には1日の感染者数が700人にもなりましたが、今は過去1週間の一日平均は31人です。

隣の南アフリカ発の南ア変異種は世界に広がっていますが、南ア自体の感染者数も1月初旬の1日の1万7000人以上から6月1日時点では3,600人にまで下がっています(しかし2週間前の感染者数は1,700人にまで減っていたことを考えると、最近のこの増加傾向は、第3波が始まっていることを示しているのかもしれません)。

世界中の専門家がアフリカで広がると酷いことになると心配していましたが、なぜかそうなってはいません。あえてその理由を考えてみると、ひとつに、人口密度の低さが挙げられるのではないかと思います。その意味でやはり、人口密度が高い首都マプトは感染者数も多いのが実情です。また、先進国では新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初には高齢者施設でクラスターが発生し入所者が多数亡くなったと耳にしましたが、そのような施設がアフリカにはないことも理由のひとつかもしれません。

トーフの食堂街

トーフの食堂街

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

医療従事者のワクチン接種は終了しています。現在は45歳以上の人と免疫系疾患のある人が対象になっています。登録などはなく、単に身分証明書を持って病院に行けばよいだけです。現在モザンビークで使われているワクチンはアストラゼネカとシノバックです。近所の60歳代のイタリア人の友人はすでにワクチンを受けたと言っていました。今のところワクチン接種率は人口の0.2パーセントです(ジョンスホプキンスのデータより)。

また、南アフリカ変異種が騒がれていますが、モザンビークでコロナの変異種まで調べることはおそらくできないと思います。

 ③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

第2回目のレポートでお知らせしましたように、モザンビークでは2020年4月に緊急事態宣言が発出されましたがその延長は3回までと憲法で決まっております。そのため、2020年9月から公的災害宣言(State of Public Calamity)に変更し、宣言期間を何回でも延長することができる法律にしました。6月1日現在の規制は以下の通りです。

  • 夜の11時から朝4時までの戒厳令
  • 商業施設や会社は朝9時から午後7時まで営業可。ただしレストランは夜9時まで可。
  • モザンビークにいる外国人はビザなどの滞在許可証の有効期限が切れている場合、6月末まで有効期限が自動的に延長される(毎月見直すので、宣言が延長されれば、また翌月末まで有効になるようです)。
  • 宗教集会、会議などの人数は、屋内の場合の上限は75人、野外の場合は150人まで。
  • 結婚式のために集まる人数は20人まで可、しかし他の社交的集まりは禁止。
  • マスク着用は義務。フェイスシールドはマスクに代わるものではない。
  • ゲームセンター、レジャー・スポーツ施設は休業。
  • 公共のプールは定員の30パーセントまで可。
  • ディスコ、バーは休業。
  • 酒の販売は酒屋、食品店、スーパーマーケットでのみ可、なお午前8時から午後1までに限る。
  • ビーチは今月(6月)から水泳とウォーキングは解禁。数人で集まったり、日光浴したりするのは禁止。
  • カジノ、劇場、博物館、美術館など文化施設は定員の40パーセントまで可。
  • 大きなスポーツジムは定員の40パーセントまで。小さなジムは休業。
  • ホテルのプールは宿泊客に限って使用可。
  • 海外からの入国者は新型コロナウイルス陰性証明書を提示する義務がある。

このように、人数を制限して営業を認める、営業時間も少しずつ長くするなど、規制緩和に向かっていることは確かです。もちろん休業などによる補償や援助は全くありません。

学校は通常授業に戻っています。しかし幼稚園はまだ休園です。

コロナ前のマーケットの様子

コロナ前のマーケットの様子

コロナ後(現在)のマーケットの様子

コロナ後(現在)のマーケットの様子

⑤近況について、ご自由にお書きください。

さて、私たちは首都マプトから北500キロの海岸にある小さなリゾート地、トーフで日本食レストランと小さな宿B & Bをやっております。昨年6月から少しずつ営業を再開してきました。最初は食事の持ち帰りのみ、そして週末のみの営業を3か月ほどやり、その後は通常営業に戻しましたが、国からの規制で5月までは夜8時までしか営業できませんでした。今月からは夜9時まで可能になっています。

昨年12月末、経営するB & Bの宿泊客1人の感染がわかり、1か月の休業に追い込まれました。当然PCR検査がスタッフ全員に行われましたが、その結果が出てきたのは3週間後で、ウェイターの3人と私の夫も感染していることがわかりました。しかし、検査結果が出てきたときにはすでにスタッフ全員の2週間の隔離は終わり、病状が出たスタッフも回復しておりました。結果が出るのに3週間もかかる状況なので、その結果の信ぴょう性はちょっと疑問です。夫は陽性でしたが、無症状。私と2人の子どもは陰性でした。

まだバーは営業できませんが、食事と共にアルコールを提供することは認められています。そのため、もっと飲んでいたいお客さんに毎晩9時に帰ってもらうのはひと苦労です。一方、そこを狙って、9時10分頃警察官と飲食店の衛生管理をする保健所の人が見回りにやってきます。この先の成り行きはご想像にお任せします。

上記の規制で5月まで閉鎖されていたビーチが今月から再開されましたが、許可されているのは水泳とウォーキングだけ。砂浜に座ったり日光浴をしたりするのは依然禁止。ウォーキングも「通り抜ける感じ」の歩き方と言われています。

ここトーフ・ビーチは水がきれいで観光名所となっています。普段は、週末や連休になると近隣の市町村はもとより、遠くはマプトからも人が押し寄せます。「押し寄せる」と言っても、日本の夏のようにビーチが混むことはないのですが、それでも水泳とウォーキング以外が禁止されているのは、おそらく、バスなどの移動で人との距離を取れなくなる状況が多い、また人の移動は感染の拡大につながるという理由からだと理解しています。

トーフのビーチ

トーフのビーチ

これらビーチの規制はトーフ全体の経済に大きな影響を与えています。しかし、泳ぐだけで、立ち止まって海を見るだけでも咎められそうな状況では国内の観光客はまだ戻ってこないでしょう。

もうひとつ、私たちの趣味であるサーフィンはビーチが再開されてもまだ禁止されたままです。そこで仲間と作っているサーフィン協会でサーフィンを許可してくれるように嘆願書を書き、州書記官に面会しました。それが功を奏して許可され、最新のビーチ規制に関する布告に含まれているのを見たときは、大きな成果を勝ち取った気分でした。1年以上サーフィンもできず、身も心も内に籠っていたものをようやく発散できるようになりました。

毎年、7、8月(当地では冬ですが)は、ヨーロッパからの観光客でホテルはほぼ埋まりますが、昨年はコロナで国境が閉鎖されたため、海外からの観光客はありませんでした。しかし、逆に、例年この時期ヨーロッパに帰る首都マプトの外国人達が帰省できず、トーフを訪れて長期間滞在していました。今年の夏はどうでしょう?

ヨーロッパのコロナ状況が下火になってきているので、今年はそれぞれの国に帰省する人が多いと思います。国境は開いているので、ヨーロッパからの観光客も来るかもしれません。しかし、それも全てそれぞれのコロナの状況によるので予想は難しいです。

私たちの生活は、友達とディナーやパーティーで行き来できないのが普通になってしまいました。今はごく親しい一家族とだけ月に一度会うぐらいです。

すみレストランの様子。こんな日もけっこうあります

すみレストランの様子。こんな日もけっこうあります

幼稚園の休園で2歳と5歳の子どもたちは、友達に会えない半孤立状態が1年以上続き、恥ずかしがり屋になり社交性を失くしたように見えます。いまや感染を怖れるというより、誰にも会わないのがノーマルになってしまったというのが現実です。最近は長く会っていない友達に会うように心がけています。

私は今、「以前のノーマルライフを少しでも早く取り戻したい」、という強い思いに駆られています。


森本伸菜(もりもと・のびな):モザンビーク・トーフで日本食レストラン「すみバー・アンド・キッチン」を南アフリカ人の夫と経営。現地の子どものためのコミュニティなどの活動に深く関わっている。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(18)イタリア

italia

イタリア(人口約6036万人)

 アヤ・ナカタ

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか。

現在、イタリアはコロナの感染状況によって、州ごとにホワイトゾーン、イエローゾーン、オレンジゾーン、レッドゾーンに分け、それぞれのレベルに合わせた規制措置を講じています。ホワイトゾーンは安全と見なされ、外出制限はなし。色が濃くなるにつれて危険度が増し、レッドゾーンはロックダウンとなります。

ピエモンテ州(クネオ地域を除く)は4月26日からオレンジゾーンからイエローゾーンに戻りました。5月31日現在、フリウリ=ベネチア・ジュリア州、モリーゼ州、サルデーニャ島はホワイトゾーン、そのほかの州はすべてイエローゾーンです。

わたしの勤めるトリノ大学はオレンジゾーンでも教室での対面授業可でしたが、外国語学部で教室授業に戻ったのは日本人教師が担当する日本語演習だけだったようです。わたしが教えているアソシエーションでは、イエローゾーンなら「教室授業・可」ですが、ソーシャル・ディスタンスを守らなければならないため、生徒が多すぎて教室を使えず、オンラインを続行するクラスも出ています。

教室授業の場合、登校時に熱を測り、健康宣言書類(熱はない、風邪症状はないなどを自己宣告する書類)にサインして、消毒液で手を消毒することが義務づけられています。授業中、窓やドアも開け放しておかなければなりません。そして、授業のあとは、教室の除菌も必要です。

地下鉄駅前バス待ちの時の様子

地下鉄駅前バス待ちの時の様子

 ②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

ピエモンテ州では2021年2月15日に80才以上の住民のワクチン接種申込みが始まって以来、70代、60代、50代と段階的に摂取可能年齢が下がり、5月17日から49-45歳、5月21日から44-40歳、5月28日から30歳以上のワクチン接種が始まり、6月3日からは16才から29才の人たちの接種が可能になりました。

健康に問題のない人はオンラインで予約ができますが、「虚弱であると判断されている人(持病やアレルギーがある人など)」は、ファミリードクター経由で予約するようです。教育関係、医療関係者に対しては今年の冬(2021年2月ごろ)からワクチン接種が始まっています。わたしは大学講師もしているので、その時点からワクチンを受ける権利はありましたが、授業が終わるまでは受けたくなかったので、申し込みませんでした。

なぜかというと、「血栓症になる」とか「アナフィラキシーショックが起こる」とか「高熱が出る」といったさまざまな噂が飛び交い、「授業終了までは倒れたくない」という思いがあったからです。(いまもその噂で、ワクチン接種を躊躇している人はかなりいるようです)。そこで、学年終了後の5月初めに、ファミリードクター経由で、予約しました。2日後に当局から「予約完了と接種日について」の連絡がSNSで届いたときにはその素早さに驚きました。

ワクチンの種類についてですが、わたしの周囲では、アストラゼネカとファイザーのワクチンを打ったという声をよく聞きます。どのワクチンに当たるかはその場になるまでわかりません。ちなみに、わたしはファイザーでした。なおワクチンは無料です。

 ③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

いま、ピエモンテ州はイエローゾーンですが、徐々に規制緩和が進んでいます。たとえば外出禁止時間も、5月18日から6月6日までは23時~5時、6月7日から6月20日までは24時~5時、6月21日以降は外出禁止時間なしとなります。よい季節なので、誰もが夜遊びをしたくなるでしょうが、6月21日以降、巷で過密状態が起こって、逆戻りにならないことを祈っています。

移動の制限は4月26日から6月15日まで、「州内で、個人の住まい(1軒のみ)への移動が1日に1度のみ許可される」とあります。たとえば、1日に1回だけは、年をとった一人暮らしの親御さんの様子を見に行ってもよいということです。イタリア人は家族間の行き来が非常に密なので、1日1回が多いのか少ないのか、きちんと守られているかなどはなんとも言えません。

お店も5月22日から週末・祝日の営業が可能になりました。屋外でのスポーツは許可されていますが、更衣室は使えません。スポーツジムは5月24日から解禁されています。屋内プールは7月1日からです。

休業補償については、カッサ・インテグラツィオーネ(自宅待機システム)が適用される会社はそのシステムを利用しています。自宅待機システムとは、仕事がなくて休んでいても、国から補助金が支給される制度です。といっても、給与の100パーセントが出るわけではありません。たいていの場合、給与の70%から80%のようですが、職種や期間によってさまざまです。また、自由業の場合も、前年度より収入が30パーセント以上低くなった場合は税金を一部免除してくれるようです。わたしはオンライン授業で乗り切ったので、免税対象とはなりませんでした。

帰り道の夕暮れ

帰り道の夕暮れ

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

日々の過ごし方は、個人的にはワクチン接種後もまったく変わりません。体調について言えば、ワクチンを打つ前は非常に緊張しましたが、けっきょく、腕の痛みと軽い風邪症状が出た程度でしたので、ふつうの風邪薬で対処しました。ただし、接種後1週間くらいはなんとなく体調がすぐれませんでした。

 1回目のワクチン接種場では、「ワクチンを打ったからと言って、『ぜったいに大丈夫』というわけではないのだから、今まで通りに感染予防の規則を守って生活するように」と、口を酸っぱくして言われました。マスクなしで歩くということはまずありませんし、警察の取り締まりに引っかかりたくもないので、わたしも夜遊びはしていません。

それでも、最近では戸外での食事が許されるようになり、夕食時に路上に設置されたデオール(dehors=風よけ付きのテラス)で食事をする人たちを見かけるようになりました。金色に輝く電球の下でフォーク、ナイフを動かしてなごやかに食事をする人々の様子は、「すっかり忘れていた情景」だったので、なんだか嬉しくなりました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

 ワクチンによっては1回目と2回目の接種の間隔を3か月あけなければならないものあれば、そうでないものもあるとのことで、なかなか夏休みの計画が立てられず少し心配していましたが、幸い、私は5週間ほどの間隔で2回目の接種を受けることができます。ただ、「7月は動けない」と思っていたので、いつもは入れない7月の仕事を入れてしまい、ちょっと残念です。

また、わたしは毎年夏はフランスの海で過ごすため、国境を越えます。その場合、どうなるのか、今ちょっと気になっています。ワクチン接種をした人にはグリーンパスが出て、それを見せればPCR検査をしなくても自由に移動できる(少なくともEC圏内は)という話にはなっています。

ただし、1回目の接種場でこの件について質問したところ、「まだグリーンパス制度は実施に至っていない」とのことでした。本格的なヴァカンス期が始まるまでにグリーンパス(あるいは接種証明書)で自由に動けるようになってくれるといいのですが。

国境を越えることがむずかしくなったせいで、国外への留学を予定していた学生はいろいろと辛い思いをしています。せめて、この秋出発の学生たちが希望する場所で学べるようになることを祈っています。

 日本語関係の仕事についてですが、経済的に大きな打撃を受けているこのような状況の中でイタリアに「日本語を習いたい」と思う人がどのくらいいるのかは見えません。しかし、日本や日本語への興味は「一時のブームではない」ということがわかってきたので、それなりにやることはあるのかな、とは思っています。

わたしはダンスが大好きなのですが、ダンスホールもディスコもまだ禁止です。戸外であっても踊れません。ダンス仲間とは「あと少しの辛抱!」と慰めあっています。


アヤ・ナカタ:1987年イタリアへ移住。トリノ市郊外のコッレーニョ市在住。日本語教師。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(17)オランダ

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オランダ(人口約1728万人)

國森由美子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

オランダでは、ワクチン接種の効果があらわれ始めたのか、新型コロナウイルス感染拡大については落ち着いてきたようです。昨年の同時期にはなにもかもが不確実・不安定だったことを思うと、今は社会全体に安堵の空気が漂っているのが感じられます。

5月末に政府による緩和策の発表がありました。4月末から数えて第三段階目です。これにより、約半年に渡りテイクアウトとデリバリーのみでしのいでいたカフェやレストランなど飲食店の屋内での営業、閉鎖されていた博物館・美術館の再オープンなど、6月5日より規制が緩和されました。ただし、感染予防対策や事前予約の継続が条件です。

4月末の第一段階の緩和では、入店前に要予約など一定の条件下で、飲食店の屋外のテラスが再オープンしました

4月末の第一段階の緩和では、入店前に要予約など一定の条件下で、飲食店の屋外のテラスが再オープンしました

以下、政府がさまざまな数値情報を提供しているコロナ・ダッシュボードよりグラフを引用して、前回2020年8月末のレポート以降の推移を記してみます。

コロナ・ダッシュボードより新規感染者数の推移グラフ

コロナ・ダッシュボードより新規感染者数の推移グラフ

第一波が過ぎたオランダでは、新学期(学年の始まり)とともにふたたび感染者が増え、第二波が押しよせました。ある意味、予測どおりでした。

検査数の拡大やマスク着用を推進しつつ、増加の一途をたどる感染者数に歯止めをかけようと、オランダ政府は教育機関の秋休みが始まる直前の10月13日、ふたたび半ロックダウンに踏み切りました。さらに、新規感染者が一日につき約9,000人に上ったことから、12月14日、ルッテ首相はコロナ禍における二度目のスピーチを全国民に向けて行い、措置の厳格化を発表しました。

本来ならば家族や友人どうしで楽しむイベントの多い時期ですが、最も厳しいハード・ロックダウンでした。これで、秋からしばらく条件つきで開館していた屋外屋内の文化・スポーツ・レジャー施設はすべて閉鎖、生活必需品を扱う店以外はオンライン、テイクアウトあるいはデリバリーのみの営業、教育機関もオンライン授業となりました。クリスマスに家庭に招くことのできる人数もほんのわずか(12歳以下の子どもを除いて最大3名まで)、不要不急の旅行はせず自宅に留まるようにとの政府からの要請、大晦日恒例の花火も禁止という状況での年越しでした。

賑わいのない年末年始が過ぎた今年2021年1月23日からは、英国型や他の変異株への懸念が深刻になったこともあり、夜間外出禁止(午後9時から午前4時30分まで)の措置が取られました。これは延長を重ね、約3ヶ月後の4月29日にようやく完全解除になりました。

ヨーロッパのほかのいくつかの国では第一波の頃から夜間外出禁止措置が導入されていましたが、オランダではこの1月に出された禁止令は、第二次世界大戦のナチスドイツ占領時以来、初めてのことでした。戦時下とはまるで異なる状況とはいえ、国民の行動の自由を大きく束縛することになるので、政府にとっても苦渋の決断だったのではないかと思います。

政府側が苦労してその都度措置を発表していたのはわかりましたが、かたや政府高官や王室の面々にうかつな規制違反など、国民を落胆させるようなお粗末な失態も見られました。

それでも大部分の国民が規制を順守していた一方で、政府に反抗するデモ、若者の集団による店舗や公共物の破壊、医療従事者や関連機関に対する攻撃的な行為などが増えてしまい、警察隊による取り締まりも頻繁に行われるようになりました。わたし自身はそんなようすを間近に目にすることはありませんでしたが、ニュースの映像の中ではかなりシュールな光景がくり広げられていました。

2月からの第三波は若い年代を中心に感染が広まりました。この時期には〈家庭内感染〉という言葉をよく耳にしたように思います。ワクチン接種の始まっていた高齢者では、目に見えて感染者が減りました。3月半ばには総選挙があり、政治的な混乱もありました。そんなこんなで、4月ごろまでは混沌としていました。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在どのような状況ですか?

オランダはヨーロッパ内で最も遅いと国民から批判されていましたが、それでも今年1月6日より、医療・介護従事者や高齢者、知的障碍(がい)者、その関連施設の入居者を優先してワクチン接種が進められました。接種数は当初は徐々に、4月からは急激に増えています。政府のコロナ・ダッシュボードを見ると、6月6日現在、接種総数は約1040万回となっています。

優先順位の高いグループは接種過程をすでに終了しています。現時点での一日あたりの新規感染者数は約1,600人。政府としては、成人(18才以上)の希望者全員が8月末までに接種を完全に終了する計画です。オランダでは、1回で終了するヤンセン(ジョンソン&ジョンソン)接種の人も一部います。感染症の専門家は、英国ではワクチンの2回目を接種済みの人々がインド変異株に感染している例もあるので、まだしばらくは気を緩めずに過ごす必要があると述べています。

筆者も1回目の接種を受けました。オランダでは、順番が来ると政府から個人宛に〈ワクチン接種のご招待〉と印刷された通知が封書で届きます。そこにワクチンの説明や必要事項の記された書類が同封されていて、ネットか電話で申し込みをするようになっています。

筆者の場合は所定のウェブサイトにアクセスして申し込みましたが、1回目、2回目とも同時に申し込む仕様になっていました。当日、必要書類や身分証明書を持参して指定された会場へ予約時刻に行くと、混乱もなく、接種もスムーズに終了しました。

副反応はありました。発熱、接種した側の上腕の張り、肩や首の凝り、首筋や首もと(鎖骨の上あたり)のリンパ腺の腫れなど、10日ほどかかってようやく元どおりになった感じがします。ですが、副反応の個人差は大きいようです。

*オランダ政府のコロナ・ダッシュボードは、オランダ語のみならず、英語でも見ることができます。以下、同ウェブサイトの英語バージョンへのリンクを記しておきます。さまざまな数値について、さらにご興味がおありでしたら参考になさってください。
https://coronadashboard.government.nl/landelijk/vaccinaties

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

前述のとおり、4月末より夜間外出禁止が解除されましたが、基本的な予防策(手洗い、1.5mの距離、所定の場所でのマスク着用)については継続するよう要請されています。PCR検査の数は昨秋からは軌道に乗り、保健所のホットライン経由で予約を取り、誰もが手軽に受けられ迅速に結果もわかる態勢が整ってきました。

これまでオンライン授業を併用していた中・高等学校が来る6月7日より完全に対面授業となります。聞くところによると、生徒全員が事前に無料配布されるキットで簡易検査をし、予防対策をしながらの登校となるようです。

スーパーの入口にて。ボードには、①店内マスク着用義務、②カートあるいはカゴの使用義務、③1.5mの距離、④一人で入店と書かれています。右の容器はサニタイザー

スーパーの入口にて。ボードには、①店内マスク着用義務、②カートあるいはカゴの使用義務、③1.5mの距離、④一人で入店と書かれています。右の容器はサニタイザー

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

恐れられていたアルファ(英国発の変異)株については、それほど猛威を奮うということはありませんでした。当時オランダは入国制限をしており、ちょうど今年1月からブレグジット(*)開始だったことともなにか関連があったかもしれません。

でも、英国でのワクチン接種はオランダよりも先に進められていたため、その効果については大いに参考になっただろうと思われます。また、最近になって主に英国でふたたび騒がれ始めたデルタ(インド発の変異)株は、オランダではまだほとんど見られないとのことです。

総じて、飲食店や小売店、企業や役所、教育関係で在宅テレワークやオンライン授業を余儀なくされていた方々は実に大変そうで、そろそろ限界ではないかと思っていた4月ごろに、ワクチン接種がようやく加速し始めました。

*英国の欧州連合(EU)離脱のこと。Britain(英国)とexit(離脱)を掛け合わせた造語。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

個人的には、暮らしが激変したわけではなく、昨年から抱えているオランダ語の文芸作品の翻訳(刊行までまだしばらくかかります……)、ほんの数人ながらピアノの個人レッスン、そして家事・雑用をしながら過ごしています。ピアノの出張レッスンは、一人につき週に一度、一時間弱くらいで、引き続き対面のまま続けています。

朗報もありました。これまで4年ほどみていた小学生が、音楽院のヤングタレントコースの入試にめでたく合格したことです。この子は8月末の新学期から音楽院内に併設されている小学校に通いながら、さらに専門的なピアノのレッスンを受けることになります。小学生にも残念なことが少なくなかっただろうと思われるこのコロナ禍の最中でも、未来への一歩を踏み出すお手伝いができたような気がして、嬉しく思っています。

おそらく、今回のウイルスが完全に消滅することはなく、また、ワクチンを接種すれば絶対大丈夫というわけでもないでしょうが、もう、どうかこのまま終息して、ふつうに暮らせるようになってほしいと切に願っているところです。

自宅裏の水路にて。毎年白鳥が子育てしています

自宅裏の水路にて。毎年白鳥が子育てしています


國森由美子(くにもり・ゆみこ):オランダ語文芸翻訳者、音楽家。オランダ・ライデン在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(16)コロンビア(中南米)

colombia

コロンビア(人口約5034万人)

中南米全体(人口約6.3億人)

ロブレド・ゴンサロ

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

2021年5月22日、パン・アメリカン保健機構(PAHO)は、中南米およびカリブ地域における新型コロナウイルスによる死者が100万人を超えたと発表しました。その時点で累計100万1,781人に上っていた死者数の約89%を、ブラジル(44.3%)、メキシコ(22.1%)、コロンビア(8.3%)、アルゼンチン(7.3%)、ペルー(6.7%)の5か国が占めていました。中米の死者数は全体の3%、カリブ地域は1%でした。

しかし、6月2日の報道で、ペルー政府が7万人弱としていた公式のコロナ死者数を見直し、これまでの2.6倍にあたる18万764人に修正したことがわかりました。その結果、ペルーの人口10万人あたりの死者数は500人以上となり、それまで最多だったハンガリーを抜き世界最悪となりました。

また、どこの国も医療機関はひっ迫しています。チリでは集中治療室の病床占有率が94%、コロンビアの首都ボゴタでも96%に上り、公共病院の病床占有率が100%に達したエクアドルでは、医療関係者たちが政府に厳しいロックダウンを求めました。

一方、同機構のデータでは、アメリカ大陸の1億5350万人がすでにワクチンを接種しているといわれ、接種率がとても高いですが、中南米・カリブ地域に住む人たちの接種率は21.6%に留まっています。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

中南米の多くの国は、複数のメーカーのワクチンを購入したり、途上国へのワクチンの公正な普及を進める世界保健機関(WHO)の枠組みCovax(コバックス*)を利用したりしてワクチンの配給を受けています。

コロンビアは中南米で最初にCovaxを通してワクチンが配給された国で、5月末までに受け取った量は約110 万回分です。その他、ファイザー社、アストラゼネカ社、モデルナ社、シノバック社などのワクチンを購入し、国内で最初の新型コロナウイルス感染者が見つかったちょうど1年後に当たる3月9日に接種が始まりました。首都ボゴタでは400施設の医療機関やスポーツスタジアムを接種会場として利用し、5月23日時点では、830万回以上の接種が実施されています(うち約40%の人が2回目の接種)。

スポーツスタジアムで接種を受けた私の友人は、「接種自体はとてもスムーズだった。会場近くで空いている駐車場を見つける方が時間がかかったよ」と言っています。一方で、元看護師の別の友人は、多くのコロンビア人がワクチンの副反応を心配しており、彼女自身は、できればキューバ製のワクチンが届くのを待ちたいと言っていました。中南米では、キューバ革命以降に発展したキューバの医療体制に信頼をおく人がとても多いのです。

*新型コロナウイルスワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的枠組み。WHO主導により、2020年に発足。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

どの政府も、効果的な感染拡大防止対策を模索し、社会や経済を支えようと尽力しています。各国の補償や支援の政策は以前より手厚くなってきており、それぞれの規模はGDPの4.5%から8.2%を占めています。最も手厚い8.2%の支援策を打ち出したのはブラジルで、続くペルーは7%です。

しかし、インフォーマルセクターで働き、医療保険もなく、生存の保障もされない人々の層が厚い中南米では、多くの人が政府の推奨する対策に反してでも、収入を得るために働きに出ざるを得ません。

パンデミックで社会的格差はさらに拡大しており、大半の人がワクチン接種を心待ちにしている一方で、富裕層の人々はアメリカのフロリダなどに渡航してワクチンを接種しています。アメリカでは、不法移民へのワクチン接種を促進するため、接種希望者に居住証明書の提示を求めないことにしましたが、それと同時に外国からの金持ち観光客を誘致する「ワクチンツーリズム」も盛んに行われているのです。

国際通貨基金(IMF)は、中南米諸国支援の融資制度を拡充しました。しかし、企業や家庭、医療システムを支える補助金が必要な各国政府の債務は増える一方で、2019年に中南米地域のGDPの64%を占めていた負債は、2020年には72%まで膨れ上がりました。

重い債務の影響が最も明らかな形で最初に噴出したのがコロンビアです。コロンビア政府はこの4月、負債に対処するための急進的な税改革として、主に中産階級をターゲットとした増税を発表しました。

異論や拒否反応が出ることは想定していた政府ですが、これが国の歴史上最大の抗議行動にまで発展するとはまったくの予想外でした。学生、農業従事者、会社員、先住民などの団体に一般市民も加わって、「油断するな、大統領こそがウイルスだ!」などと書かれたプラカードを手に、マスクをせず大声で叫ぶ人々が、各地でうねりを作りました。

ドゥケ大統領は、2022年の大統領選での勝利を目論む左派勢力のリーダーたちが、デモ隊を扇動していると抗議しましたが、結局、税制改革案は撤回を余儀なくされ、改革を指揮した財務大臣を解任。

しかし、市民はこれを機にこれまでの積もり積もった愚策を正そうと、政府に次々と困難な要求を突きつけています。いくつかの都市では軍が投じられて死者も出る事態となり、5月末現在もまだ、政府と国民のにらみ合いが続いています。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

パンデミックが中南米にもたらした最大の問題は、極度の貧困層の拡大です。雇用が崩壊したこの地域では、極度の貧困層の割合が人口の33.7%に上りました。つまり、中南米に暮らす人々の3人に1人が究極の貧困に陥っています。これは、過去12年間で最悪のレベルです。

国連ラテンアメリカ・カリブ.経済委員会(ECLAC)の調査によると、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年、中南米諸国のなかで極度の貧困者が特に増えたのは、メキシコ、ホンジュラス、エクアドルでした。その一方で、極度の貧困者層が2つの国で縮小したという、驚きの結果も同調査で明らかになりました。

そのひとつはブラジルで、5.5%を占めていた極度な貧困者層が1.1%に減り、パナマでも6.6%から6.4%に減少しました。ブラジルのボルソナーロ大統領は、新型コロナウイルス感染対策に消極的な姿勢を長い間貫いてきましたが、インフォーマルな経済圏に暮らす最貧困層の人々に向け、中南米で最大の支援予算を充て、それが功を奏しました。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

中南米諸国全体に共通する懸案事項のひとつが、子どもたちの未来です。学校教育が満足に行われていないことに加え、十分な食生活を送れていないことで、子どもたちの認知能力や体力の発達に、修復不可能な悪影響を及ぼすのではないかと危惧されています。

また、各政府は、緊急事態が収まった後、即座に財政再建に取り組まなくてはなりません。それに失敗すると、現在コロンビアで起こっているように、感染拡大のリスクを顧みず、多くの人々が抗議行動を繰り広げることとなるでしょう。来年大統領選を控えているチリやコスタリカでも、パンデミックが政治の切り札として利用されるのではないかと懸念されています。


ゴンサロ・ロブレド:コロンビア出身のジャーナリスト。スペイン語翻訳者。1981年より日本在住。スペインのエル・パイス紙に寄稿した記事:https://elpais.com/autor/gonzalo-robledo/


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(15)スペイン

spain

スペイン (人口約4694万人)

 米田真由美

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

スペインは2020年10月下旬の非常事態再宣言以降、2021年1月26日が感染拡大ピークと言われており、現在はピーク時の12パーセントほどの感染者数で、大きく減少傾向にあります。週平均の感染者数は約5,000人、コロナ患者のICUの占有率も順調に下がっているとのことです。変異株については、5月時点で4人のインド型変異株の症例が確認されています。

1月末から2月初めにかけて医療用酸素が足りなくなるのではないかというほど医療が緊迫した状態だった時期もありましたが、現在、アリカンテ大学病院はスペインおよび欧州のなかでも最もコロナによる病床占有率が低い病院となっています。地域としての感染防止対策が功を奏したのか、天候によるものなのか、いくつか要因があると言われていますが、第4波と言われた時期にかなり厳しい規制が強いられていたマドリード周辺やスペイン北部に比べ、アリカンテ市は段階的かつ順調に規制緩和が行われたように思います。その間も、国内、州内外の移動規制は徹底して行われていましたが、ドイツやフランスなど自国の規制が厳しい国からの渡航者が後を絶たなかったのも事実です。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

5月末現在、1回目のワクチン接種完了者は人口の35パーセント、2回目完了は16パーセントで、この1か月で急ピッチに進んでいます。現在50代の1回目が進んでおり、6月中旬には2回目も完了予定、40代の接種も始まります。

都市部では郊外に大型接種会場が開設され、非常に清潔な環境においてスムーズに接種が可能ということです。

予約の方法、接種会場の規模や場所については年齢や地域によって差はありますが、スペインの場合、国民医療保険が発行している保険番号で接種システムの管理を行なっています。

バレンシア州の場合は、携帯電話のショートメッセージサービスで接種日時が送られてきます。指定の会場へは健康保険カードとIDカードを持参するだけです。健康保険カードとID番号が紐づけられていることが迅速な接種体制に繋がっているのでしょう。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

規制については5月9日に緊急事態宣言が解除され、全国的な規制緩和がありましたが、引き続き、各自治体で独自の規制を設けています。

州をまたいだ移動の規制がありましたが、現在スペイン国内であれば行き来は自由になっています。

飲食店などの規制については、都市間で異なります。マドリードの場合、屋外であれば6名まで、屋内は4名まで、私的な集まりも6名までとなっていますが、アリカンテでは最大10名までが店内飲食も可能です。夜間の外出制限はバレンシア州とバレアレス諸島を除いて全国で解除されています。

また、カタルーニャ州ではマスク義務撤廃の動きもあったようですが、現時点では外出時のマスクは義務のままとなっています。

支援金や援助金については、業種ごとに各自治体で行っているものがいくつかありますが、申請し、審査を通過しても受け取りまでに時間を要するため、即効性のある支援としては機能していないように思えます。また、給与の70パーセントまでが補償される一時休職補償については今年12月までの延長が決定しました。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

在宅勤務については相変わらず推奨されてはいるものの、今年の夏以降テレワークを廃止する会社も出てくるようです。 私の勤務する大学も、9月以降は全職員出勤とすることが決定したばかりです。

学校については前回の第2弾レポートの頃から、学級閉鎖的な個々の対応はあったものの学校全体が休校となることは一度もなく今年度を終えることができそうです。

昨年9月当初は子供よりも親が職場で感染してくるなど、社会生活の始まりとともに感染者も増え、特にクリスマス休暇明けは規制を強化しなかったために感染が拡大し、各学校で混乱も見られました。しかし現在は落ち着いた状況が続いており、卒業式などの学校行事も野外へと会場を移して開催されるなど、可能な範囲で通常の生活を取り戻しつつあります。

 ⑤近況について、ご自由にお書きください。

スペインは先日、5月末にイギリスと日本を陰性証明なしでの渡航OKの安全国リストに加え、さらに6月7日以降はワクチン接種済みであれば安全国からでなくとも観光客を受け入れることを発表するなど、観光産業の巻き返しに躍起になっています。ワクチン接種が世界的に進んでいるなかで、観光立国のスペインとしては、経済的な面の復興に大きな期待を寄せています。

5月9日の非常事態宣言解除から3週間経った今、町はコロナ以前の活気が戻っているといってもおかしくない様子です。飲食店は予約で満席、道にも人があふれかえっています。

とはいえ、まだまだコロナが終息したわけではありません。今後も国、国民の動向を観察しつつ、気を引き締めて感染予防策を講じ、コロナと生きる2回目の夏を迎えたいと思います。

週末のアリカンテ市内繁華街の様子

週末のアリカンテ市内繁華街の様子


米田真由美(よねだ・まゆみ):スペイン・アリカンテ在住のコーディネーター・通訳者。アリカンテ大学語学教育センター勤務。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(14)アメリカ・ハワイ

united states of america

アメリカ・ハワイ(人口約141.6万人)

シーモア・ダニエル

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

現在、ハワイの感染状況は安定して推移しており、先月Tier(*)2からTier3(10人まで集まってよい)に規制が緩和されました。これに伴い、マスク規制も緩和され、外でのマスク使用の義務化は撤廃されました。ワクチン接種状況も着実に進んでおり、現時点で州民の50パーセントが2回目の接種を完了しています。

*ハワイ州における、感染予防をしながら経済活動も再開させていくための行動や社会生活の基準を設定した「リカバリーフレームワーク」の基準。Tier1(ティア1)からTier4(ティア4)の4段階ある。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

私は陸軍病院での医療従事者なので、去年の12月に1回目、そして1月に2回目を接種しました。もちろん、強制ではありませんが、やはりコロナに感染している患者とやり取りをする以上、半強制的に接種した感はありますが悔いはありません。現時点では12歳以上の州民は全て接種可能となっています。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

国レベルでの規制と州レベルでの規制は違いがあり、細かいところは分かりませんが、州が右寄り(保守派)なのか左寄り(リベラル派)かで規制が変わっている状態です。右寄りの州はいち早くマスクの義務化を撤廃し、ロックダウンも解除しております。ちなみにハワイはリベラルです。ただ、今となってはCDC(疾病対策予防センター)自体がマスク着用規制の緩和を発表しているので、全国レベルで規制緩和のムードが高まっています。

今、ワクチンの接種状況は全国的に伸び悩んでいる傾向があり、各州が様々なアイデアを出し、「ワクチン懐疑派」が接種する手立てを模索している状況です。オハイオ州などは「ワクチン宝くじ」を導入し、接種すれば100万ドル(約1億900万円)が当たる計画を実施しており、実際に先日当選者が発表されました(うらやましい感が拭えません)。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

私は医療従事者なのでいち早くワクチンを接種できましたが、だからと言ってマスクを外すとか規制を無視するようなことはしておりません。今は逆にマスクをしないほうが違和感を感じます。

また、ハワイはアメリカ本土からの観光客が徐々に増えはじめていますが、日本の景気が戻らないかぎり、日本からの観光客は以前のようには見込めないでしょう。これを機会にハワイが観光頼みから脱却してくれないかなと思っています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

コロナ禍で被った影響は計り知れません。近い将来、どれだけ損害を受けたかの試算がされると思いますが、一番損害を被ったのは将来を担う子どもたちだと思います。

アメリカでは、最近になってやっと学校が開校されましたが、この1年間子どもたちは友達と会えず、スポーツもできないまま家のなかで悶々とすごしてきました。成長する過程で普通に通る道を歩むことができず、その上、コロナ禍以前には見いだせていた「安定感」が覆される状況となりました。子どもが本来持っている「子どもらしさ」が失われたような感じがしてなりません。

いち早くコロナが収束され、子どもたちが安心して暮らせる世界に変わってほしいことを願います。


シーモア・ダニエル:臨床カウンセラー。2019年よりハワイ在住。


コロナ終息に向けて:各国レポート第三弾(13)スウェーデン

sweden

スウェーデン(人口約1023万人)

久山葉子

①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか?

※5月25日の時点の情報です。

予測されていたとおり、昨年秋からまた感染者が増加し、高校は12月からオンライン授業になり、可能な人は自宅勤務を推奨され、粛々と過ごしたクリスマスとお正月でした。しかし春になっても感染拡大は収まらず、むしろ拡大する一方で、自粛推奨も今までになく厳しいものになりました。

わたしが住む県ではとりわけ感染拡大がひどくて、ついに「お店や公共交通機関ではマスク着用」「一緒に住んでいる人以外とは会わない」という今まででいちばん厳しい推奨が出ました。感染拡大の原因はイギリス型変異株。感染力が強く、若者や子どもにも広まりました。一方で昨年末からお年寄りにワクチンを打ち始めたため、死亡者数はがくんと減りました。

②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?

5月25日の時点で、ワクチンの一回目を打った人は全国で43パーセント以上になっています。県によってはもう60歳以下への接種も始まっています。接種順で言うと、60歳以下に打ち始める前に「あるグループ」を優先して接種するのがスウェーデンらしくて興味深いと思いました。そのグループとは「社会的弱者」。具体的にはホームレスや刑務所に収容されている人たちです。つまりステイホームができない生活状態にある人々。絶対数が少ない(1万人強程度)ので、その人たちを優先することでワクチン接種の予定に大きな影響が出るわけでもなく、自分では声を上げにくい人たちの存在もしっかり認識している社会だなと感じました。

③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?

PCR検査を受けやすくすることは、ロックダウンせずに感染拡大防止に努めるにあたって必須だと感じました。少しでも風邪の症状があれば、ネットで予約して普通はその日にはPCR検査を受けることができます。結果は48時間以内にネット上で確認できますが、わたしのこれまでの経験ではだいたい1日半くらいで結果がきました。

それにより、少しでも風邪の症状があれば絶対に職場や学校には行かない、しかしコロナ陰性であれば2日後には復帰できるという実際的なシステムができました。疾病休業も最低限ですむので、国にとってもメリットがあるのではないでしょうか。病気の人が無理をして出勤しないための予防策として、コロナ前は長く休むためには会社に診断書を出さなくはいけなかったのですが、今は2週間までは診断書なしで疾病休業を取ることができます。

④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。

幸いここ数週間、やっと第三波のピークを越えて、街の様子はすっかりリラックスしています。暖かくなったこともあり、天気のよい日はカフェやバーのテラス席は人でいっぱい。みんなサングラスはかけているけれど、マスクはしていません。先日テレビのコロナ取材でバーのオーナーさんにインタビューをしたのですが、「みんな早い時間に飲みに来るようになった」と言っていました。

今は20時にはお酒の提供を終わらなければいけないのですが、その分お客さんの来店時間が早まったそうです。「おれももう夜中1時までなんて働けないよ~」と笑っていて、スウェーデン全体が早寝早起きの健康生活になったのかもしれません。コロナが終わったときのためにとルーフテラスを増築していて、未来への希望を感じました。もうあと少しで日常が戻ってくると信じています。

⑤近況について、ご自由にお書きください。

夏といえば例年は日本かイタリア(夫の実家)に帰省していたのですが、今年はどうなることやら。今の予定ではうちの県では、わたし(40代半ば)にも7月中には1回目のワクチン接種の順番が回ってきそうですが、それだと夏のあいだに海外旅行に行けるかどうかは微妙です。EUではワクチン証明カードのようなものも発行されるらしいですね。まだまだどうなるかわからない夏休みです。

(動画は街中のカフェの風景)


久山葉子(くやま・ようこ):翻訳家、エッセイスト、日本語教師。スウェーデン中部のスンツヴァル在住。