イタリア(人口約6036万人)
アヤ・ナカタ
①新型コロナウイルス感染状況について、いまはどうなっていますか。
現在、イタリアはコロナの感染状況によって、州ごとにホワイトゾーン、イエローゾーン、オレンジゾーン、レッドゾーンに分け、それぞれのレベルに合わせた規制措置を講じています。ホワイトゾーンは安全と見なされ、外出制限はなし。色が濃くなるにつれて危険度が増し、レッドゾーンはロックダウンとなります。
ピエモンテ州(クネオ地域を除く)は4月26日からオレンジゾーンからイエローゾーンに戻りました。5月31日現在、フリウリ=ベネチア・ジュリア州、モリーゼ州、サルデーニャ島はホワイトゾーン、そのほかの州はすべてイエローゾーンです。
わたしの勤めるトリノ大学はオレンジゾーンでも教室での対面授業可でしたが、外国語学部で教室授業に戻ったのは日本人教師が担当する日本語演習だけだったようです。わたしが教えているアソシエーションでは、イエローゾーンなら「教室授業・可」ですが、ソーシャル・ディスタンスを守らなければならないため、生徒が多すぎて教室を使えず、オンラインを続行するクラスも出ています。
教室授業の場合、登校時に熱を測り、健康宣言書類(熱はない、風邪症状はないなどを自己宣告する書類)にサインして、消毒液で手を消毒することが義務づけられています。授業中、窓やドアも開け放しておかなければなりません。そして、授業のあとは、教室の除菌も必要です。
②ワクチン接種については、どのように進められ、現在(執筆時点)、どのような状況ですか?
ピエモンテ州では2021年2月15日に80才以上の住民のワクチン接種申込みが始まって以来、70代、60代、50代と段階的に摂取可能年齢が下がり、5月17日から49-45歳、5月21日から44-40歳、5月28日から30歳以上のワクチン接種が始まり、6月3日からは16才から29才の人たちの接種が可能になりました。
健康に問題のない人はオンラインで予約ができますが、「虚弱であると判断されている人(持病やアレルギーがある人など)」は、ファミリードクター経由で予約するようです。教育関係、医療関係者に対しては今年の冬(2021年2月ごろ)からワクチン接種が始まっています。わたしは大学講師もしているので、その時点からワクチンを受ける権利はありましたが、授業が終わるまでは受けたくなかったので、申し込みませんでした。
なぜかというと、「血栓症になる」とか「アナフィラキシーショックが起こる」とか「高熱が出る」といったさまざまな噂が飛び交い、「授業終了までは倒れたくない」という思いがあったからです。(いまもその噂で、ワクチン接種を躊躇している人はかなりいるようです)。そこで、学年終了後の5月初めに、ファミリードクター経由で、予約しました。2日後に当局から「予約完了と接種日について」の連絡がSNSで届いたときにはその素早さに驚きました。
ワクチンの種類についてですが、わたしの周囲では、アストラゼネカとファイザーのワクチンを打ったという声をよく聞きます。どのワクチンに当たるかはその場になるまでわかりません。ちなみに、わたしはファイザーでした。なおワクチンは無料です。
③現在(執筆時点)、国や自治体からの規制や制限、援助がありますか?
いま、ピエモンテ州はイエローゾーンですが、徐々に規制緩和が進んでいます。たとえば外出禁止時間も、5月18日から6月6日までは23時~5時、6月7日から6月20日までは24時~5時、6月21日以降は外出禁止時間なしとなります。よい季節なので、誰もが夜遊びをしたくなるでしょうが、6月21日以降、巷で過密状態が起こって、逆戻りにならないことを祈っています。
移動の制限は4月26日から6月15日まで、「州内で、個人の住まい(1軒のみ)への移動が1日に1度のみ許可される」とあります。たとえば、1日に1回だけは、年をとった一人暮らしの親御さんの様子を見に行ってもよいということです。イタリア人は家族間の行き来が非常に密なので、1日1回が多いのか少ないのか、きちんと守られているかなどはなんとも言えません。
お店も5月22日から週末・祝日の営業が可能になりました。屋外でのスポーツは許可されていますが、更衣室は使えません。スポーツジムは5月24日から解禁されています。屋内プールは7月1日からです。
休業補償については、カッサ・インテグラツィオーネ(自宅待機システム)が適用される会社はそのシステムを利用しています。自宅待機システムとは、仕事がなくて休んでいても、国から補助金が支給される制度です。といっても、給与の100パーセントが出るわけではありません。たいていの場合、給与の70%から80%のようですが、職種や期間によってさまざまです。また、自由業の場合も、前年度より収入が30パーセント以上低くなった場合は税金を一部免除してくれるようです。わたしはオンライン授業で乗り切ったので、免税対象とはなりませんでした。
④変異株の広がり、もしくはワクチン接種普及の前後で、日常生活や街の様子など変わったことがあれば教えてください。
日々の過ごし方は、個人的にはワクチン接種後もまったく変わりません。体調について言えば、ワクチンを打つ前は非常に緊張しましたが、けっきょく、腕の痛みと軽い風邪症状が出た程度でしたので、ふつうの風邪薬で対処しました。ただし、接種後1週間くらいはなんとなく体調がすぐれませんでした。
1回目のワクチン接種場では、「ワクチンを打ったからと言って、『ぜったいに大丈夫』というわけではないのだから、今まで通りに感染予防の規則を守って生活するように」と、口を酸っぱくして言われました。マスクなしで歩くということはまずありませんし、警察の取り締まりに引っかかりたくもないので、わたしも夜遊びはしていません。
それでも、最近では戸外での食事が許されるようになり、夕食時に路上に設置されたデオール(dehors=風よけ付きのテラス)で食事をする人たちを見かけるようになりました。金色に輝く電球の下でフォーク、ナイフを動かしてなごやかに食事をする人々の様子は、「すっかり忘れていた情景」だったので、なんだか嬉しくなりました。
⑤近況について、ご自由にお書きください。
ワクチンによっては1回目と2回目の接種の間隔を3か月あけなければならないものあれば、そうでないものもあるとのことで、なかなか夏休みの計画が立てられず少し心配していましたが、幸い、私は5週間ほどの間隔で2回目の接種を受けることができます。ただ、「7月は動けない」と思っていたので、いつもは入れない7月の仕事を入れてしまい、ちょっと残念です。
また、わたしは毎年夏はフランスの海で過ごすため、国境を越えます。その場合、どうなるのか、今ちょっと気になっています。ワクチン接種をした人にはグリーンパスが出て、それを見せればPCR検査をしなくても自由に移動できる(少なくともEC圏内は)という話にはなっています。
ただし、1回目の接種場でこの件について質問したところ、「まだグリーンパス制度は実施に至っていない」とのことでした。本格的なヴァカンス期が始まるまでにグリーンパス(あるいは接種証明書)で自由に動けるようになってくれるといいのですが。
国境を越えることがむずかしくなったせいで、国外への留学を予定していた学生はいろいろと辛い思いをしています。せめて、この秋出発の学生たちが希望する場所で学べるようになることを祈っています。
日本語関係の仕事についてですが、経済的に大きな打撃を受けているこのような状況の中でイタリアに「日本語を習いたい」と思う人がどのくらいいるのかは見えません。しかし、日本や日本語への興味は「一時のブームではない」ということがわかってきたので、それなりにやることはあるのかな、とは思っています。
わたしはダンスが大好きなのですが、ダンスホールもディスコもまだ禁止です。戸外であっても踊れません。ダンス仲間とは「あと少しの辛抱!」と慰めあっています。
アヤ・ナカタ:1987年イタリアへ移住。トリノ市郊外のコッレーニョ市在住。日本語教師。