コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(9)トルコ

トルコ(人口約8200万人)

西岡いずみ

トルコ、イスタンブルよりメルハバ(こんにちは)! こちらは3月に入って大雪が降り続き、なかなか寒さが緩まないでいましたが、3月末になって一気に夏の気配がしてきました。コロナを取り巻く(あるいはコロナに取り巻かれているとも言える)状況にも緩和が見られます。

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

第三回目のレポート執筆時2021年5月24日の感染者数は7,523人で、その後夏に向けて増加を続け、10月中旬に3万3,000人台になりましたが、その後、減少に転じていました。しかし12月21日トルコで最初のオミクロン株感染者が確認されて、再び増加しました。今年2月8日には感染者数が11万1,096人とピークを迎え、それ以降は減少に転じています。トルコ保健省の発表によれば、3月29日現在の新規陽性者数は16,190人(新規検査数28万8,968件)、亡くなった方は63人。これまでの感染者総数は約14万8,000人で、死者の合計は約9万7,800人になりました。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

外出禁止措置は昨年2021年7月1日に完全に解除され、昨年9月に新学年を迎えて以来全国一律の学校閉鎖は行われていません。また、飲食店もコロナ発生以前とほぼ同じ営業時間に戻っています。週末などは、繁華街のカフェの屋外席は客で溢れかえっています。とりわけ3月3日に、病院、学校、劇場などの閉鎖空間を除いてのマスク着用義務解除と、HES(Hayat Eve Sığar =「命は家に収まる)」の略で、トルコ政府のCOVID-19感染者追跡システム)コード使用解除が行われたことにより、コロナ終息への期待が高まってきました。ちなみに、政府によるマスク着用義務の解除宣言の直後、今まで我が家で購入していた50枚入りマスクの値段が、いきなり40トルコリラ(約330円)から30トルコリラ(約248円)に下がってびっくりしました。

自宅近くの繁華街にて。マスク着用者は半数以上といったところ

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

トルコは国産の新型コロナワクチン(TURKOVAC)を開発し、昨年12月に一般人への接種を始めましたが、感染者数の減少や感染防止措置の緩和などに伴い、接種への関心も薄れつつあるようです。トルコ保健省の発表によると、3月29日時点でのトルコ国内でのワクチン接種状況は、

  • 1回接種 57,776,278人 (全人口の93.08%)
  • 2回接種 52,968,985人 (同85.34%)
  • 3回接種 27,606,020人 (同44.05%)

となっています。3回接種を終わらせた人の数が2回接種を終わらせた人の数よりかなり低いことがわかります。私の友人のなかには早い段階で3回目、あるいは4回目の接種を終えた人もいる一方で、3回目接種については、副反応などを気にして躊躇する人もちらほら見られます。

トルコの各県における、最低2回ワクチンを接種した18歳以上の人の割合の図は以下。西高東低です。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

規制緩和が進むなか、3回目のワクチン接種をした人の数が伸び悩んでいるとは言え、人々の意識が完全に緩んでいるわけでもありません。マスク着用義務解除後もかなりの人が戸外でもマスクを着用していますし、私が通っているいくつかのカルチャーセンターでは、外出規制がないにもかかわらず受講者数が外出規制措置以前の数まで回復せず、大きな経営難に直面しています。

また、外出規制により世界的に宅配サービス業が急成長したと思いますが、トルコも例外ではありません。それに伴い、以前はこちらではあまりみかけなかった原動機付き自転車が増加しました。イスタンブルの道幅は狭く、運転マナーがあまりよくないため、外を歩くときに怖い思いをすることが多くなり、そのたびに「これもコロナのせいだなー」と感じます。公共交通機関の利用を避けて自家用車を購入する人も増えました。そのため自動車の販売価格の高騰も見られます。このように、コロナ発生直後とは異なる状況が発生しています。

公園で。高齢者は遊ぶ子供たちを眺めながら、免疫力アップのために日光浴をしている

さて、このレポートを書いているのは3月末で、2022年のラマダン(断食月)が始まる4月2日まであと数日を切っています。今年のラマダンは多くの規制が緩和され、イフタール(毎日の断食明け)時の人々の集まり、行き来も活発になると予想されます。今年は戸外で多くの人が集まって断食明けの食事をするイベントを復活させる、と宣言している自治体もあります。警戒を怠らず、十分な予防対策をとりながら、人々の交流が以前のような形に戻っていくことを祈っています。


西岡いずみ(にしおか・いずみ):主婦、ときどき翻訳者。トルコ・イスタンブル在住