コロナ終息に向けて:各国レポート第四弾(11)コロンビア

コロンビア(人口約5034万人)

ロブレド・ゴンサロ

①現在(執筆時)の新型コロナウイルスの感染状況について教えてください。

新型コロナウイルスによるパンデミックが始まって以来、コロンビアでは、2022年3月末までに累計608万4,240人が感染しました。そのうち591万7,334人は快復しましたが、13万9,595人はCOVID-19が原因で死亡しています。4月初旬の現在、一日の新規感染者数は300人ほどに減ってロックダウンも解除されていますが、4月30日までは緊急事態の措置が続けられます。

②現在の生活のなかで、コロナウイルス関連で規制や制限されていること、義務付けられていること、支援されていることなどはありますか?

屋内や公共の乗り物内では今もマスクの着用が義務づけられていますが、2022年3月には、ワクチン接種者の割合が70%を超えた地域で、屋外でのマスク着用の義務が解除されました。しかし多くの人が家の外でマスクを外すことを恐れ、着用を続けています。中国などで感染が再拡大しているといったニュースを聞き、油断をしないよう気を付けている人も多いようです。

一部の県や都市ではまだ独自の規制を敷いているところもありますが、政府による、国内旅行を含む移動の禁止令は解除されました。また、エル・エスペクタドール紙は3月末の記事で、4月3週目のイースターにコロンビアを訪れる外国人観光客の数は2万5,000人にのぼるだろうと書いています。これは2021年同期と比べて230%の増加となります。首都ボゴタと地方の合計9空港では国際便も飛んでおり、到着する外国人の半分をアメリカ人、メキシコ人、チリ人、ペルー人、スペイン人が占めています。海外からの渡航者には、隔離は義務づけられてはいませんが、18歳以上の海外からの渡航者(在留資格を持つ外国人は除外)には、少なくともすでに2回のワクチン接種の完了が求められています。

規制の緩和にともなって経済も回復の兆しを見せています。しかし、ロックダウンや強制的な隔離で経済的に厳しくなった人々に対するいくつかの支援は、2022年の12月まで続けられる予定です。「収入と生活の質」に関する公的な調査の結果、400万世帯が、2か月ごとに98ドルの支援を受けています(ひと月の最低賃金は265ドル)。これはパンデミックの影響をできるだけ軽減するために2020年につくられたプログラムです。

さらに若者や高齢者に対するさまざまな支援や、消費税の還付制度なども実施されています。銀行口座を持っていない受給者は、デジタル決済や、現金受け取りのサービス業者を利用することも可能です。送金のお知らせはスマホなどにテキストメッセージで届くため、貧困層の人たちのデジタル媒体の使用率が上がりました。

③ワクチン接種については、どのような現状ですか?

2022年2月末までに、コロンビア全国で7,724万8,506回分のワクチンが接種されています。認可されているワクチンは、ファイザー、アストラゼネカ、ジョンソンエンドジョンソン、シノバック、モデルナ、ジファックスです。

飲食店によっては、入店時に3回接種の証明書を求めるところもあるようです。健康上の理由で1回しか接種ができていないという看護師の友人は、レストランに入るたびに店員にそのことを説明しないといけないと嘆いていますが、医療従事者の証明書を見せるとたいていは入れてもらえるそうです。

学校では今年1月の新学期から、対面の授業が再開されています。政府は新学期に先立ち、ヨーロッパの例に倣って、子供たちにワクチン接種をさせるよう親に訴えかけるキャンペーンを行いました。昨年末までに新型コロナウイルスの感染が確認された子供は、全国の子供の8%に当たる44万人で、そのうち260人が亡くなっています。

④近況や思い、今後の見通しなど、ご自由にお書きください。

社会生活はコロナで大きな打撃を受けています。人々が集まる機会が大幅に減ったことに加え、最低賃金が10%上がったにもかかわらず、物価が上がって購買力が下がっています。2020年には、パンデミックの最中、政府の増税政策に反対するデモ隊の一部が暴徒化し、道路が閉鎖されるなどの騒ぎが起こりました。そのため食料品が届かない地域がでてくるなど問題が拡大し、政府は増税案の延期に追い込まれました。不安定な生活を強いられる国民が増え、コロンビアはOECD諸国のなかで失業率が二桁台にのぼる数少ない国のうちのひとつになっています。

保守派の現政権への不満から、左派政党の人気が高まっており、世論や大方のアナリストは、今年5月の大統領選では政権交代が起こるだろうと予測しています。最も有力といわれている新大統領候補は、1998年に政界入りし、2014年から2015年にボゴタ市長を務めた元ゲリラのグスタボ・ペトロ(61歳)です。彼がコロンビアの大統領になったら、企業の国有化や社会主義政策を進めたチャベス政権下のベネズエラのようになってしまうのではないかと恐れる声も少なくありません。コロンビア人投資家だけでなく、コロンビアでビジネスをしている日本人を含む多くの外国人が、いざとなればすぐに資金を国外に持ち出せるよう準備をしながら、大統領選の行方を見守っています。


ゴンサロ・ロブレド:コロンビア出身のジャーナリスト。スペイン語翻訳者。1981年より日本在住。スペインのエル・パイス紙に寄稿した記事:https://elpais.com/autor/gonzalo-robledo/