コロナ終息にむけて:各国レポート(1)フランス

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2カ月ぶりにロックダウン解除

白仁高志

私は今年の秋で在仏27年になります。

今回、フランスが外出制限を始めた直後の3月19日に日本からフランスに戻りましたが、その時点ですでに外国人観光客はフランスに入国できなくなっていました。私は10年カードという半永住権のようなものを保有しているので、無事、空港のパスポート審査をパスして、フランスの自宅に戻りました。

フランスの外出制限は大変厳しくて、自宅から1km以内しか動くことができず、それも最低限の食料品の買い物、および1時間以内の、ジョギングなど一人でやる運動が許されているだけ。お店は食料品を扱う店以外は営業が禁止されました。学校も、幼稚園から大学まで全て閉鎖されました。

ちなみに私は、パリではなく、パリの北郊外にあるクレイユという町に住んでいて、すぐ南のサン・マクシマンという町には、ヨーロッパで最大規模のショッピング・ゾーンがあります。日本でいえば、ヨドバシカメラ、東急ハンズ、ヤマダ電機のような店がずらりと揃っているのですが、それら全てが閉店し、唯一営業しているのは、CORAという巨大スーパーと、その他、2、3の食料品を扱うスーパーぐらいでした。CORAのレジのところには、当初から1mごとにマーキングテープが床に貼られ、買い物客もそのテープで示された距離をよく守って、前の人と離れて並んでいました。

ただし、マスクをしている人は、半分以下でしたね。最近はさらに少なくなっています。

また、内務省のホームページから外出証明書のフォームをダウンロードして、それに外出の動機、時間を明示し、署名したものを持ち歩かなければなりません。ダウンロードできない人は、同じことを書いた手書きの紙ですますことができたようです。そのうちに、ダウンロードしたものをプリントアウトしなくてもスマホの画面を見せるだけでOKになりました。単に友達に会うとか遊びにいくという理由では外出が許されず、違反した場合は135ユーロ (約1万6000円) の罰金が科せられます。

私は外出許可書の提示を求められたことはありませんし、クレイユの知り合いでもそういう話はきいていませんが、パリではあちこちの通りに大量の警察官が出ていたようです。4月15日時点での情報ですが、全国で580万件の尋問があり、35万人に罰金が科せられたそうです。その後はさらに増えているはずです。

この外出禁止中は、いつも通っている理髪店ももちろん休業していたので、生まれて初めて洗面所で鏡を見ながら自分で散髪をしました。普段、テニスやゴルフ、筋トレなど、運動は欠かさずやる生活をしていたので、それができないのはかなりのストレスでしたが、自宅リビングでの筋トレと、自宅から1km以内の散歩とを1日おきに交互に続けています。クレイユの周辺は、先ほどご紹介したショッピング・ゾーンとは別に、広大な森で囲まれており、新緑の季節でもあったので、小鳥の声を聴きながら散歩ができたのには随分と癒されました。ニュースによると、今回のコロナ禍を機に、パリジャンでも、どこか郊外の緑の多い所に移住したいと思う人が増えたとのことです。

フランスでは、今回の新型コロナウィルスで2万6000人以上の死者が出ましたが、もし外出制限をやっていなかったら死者数は6万人ぐらいにのぼっていただろうと言われています。

幸い、ようやく収束に向かいつつあり、まさに本日、5月11日から、さまざまな条件付きではありますが、外出制限が解除され、レストラン・カフェを除くお店が営業を再開することになっています。戸外で行う個人のスポーツ 、ジョギング・サイクリング・ゴルフ・テニス (シングルスのみ) は解禁。サッカーなど集団でやるスポーツや格闘技などの人と接触するスポーツは依然として禁止。映画館・美術館も休館が続きますが、これまで自宅から1kmしか動けなかったのが、一気に直線距離で100kmまでの移動が認められ、しかも外出証明書の携行も必要なくなるので、だいぶ解放感があります。ただし、本日から公共交通に乗車する場合にマスクが義務付けられ、違反した人には、やはり135ユーロの罰金が科されることになっています。

先日の国民議会での演説でフィリップ首相は、「コロナウィルスとの共存」を真っ先に強調していました。ワクチンなど有効な対策が見つかるまでは、外出制限が解除されて解放感を味わいつつも、気を抜かずにいこうという姿勢が、フランス国民の間で共有されているものと思われます。


白仁高志(しらに・たかし):フランス語・英語の翻訳・通訳者。フランス・パリ郊外のクレイユ在住

「コロナ終息にむけて:各国レポート」を始めるにあたって

世界各国でまだまだコロナ感染の不安が消えない日々が続いています。

日本でも、東京をはじめ多くの都市において非常事態宣言がさらに延期されることになり、なかなか先が見えません。

国により違いがあるとはいえ、この事態を乗り越えていくためには、日本も他の国に学ぶところは多いと思います。

一方で、今回の災禍は世界規模、地球規模のもので、国境を越えた闘いも必要になってくるのではないでしょうか。

ですが、海外の人々の現状や生活ぶりについては、テレビのニュースでたまに伝えられる程度。紹介される国もとりあげるテーマもとても限られています。

弊社が日ごろ、翻訳などを依頼している方のなかには、海外在住者がたくさんおられます。

そこで、その方たちを中心に各国の現状や生活ぶりをレポートしていただき、「コロナ終息にむけて:各国レポート」と題してこのブログで紹介していきます。

なお、同じ国でも地域によって事情が違い、人によって見方は変わります。それぞれの記事はあくまで執筆者の個人的なレポートであることを申し添えておきます。

ひとりでも多くの方に読んでいただければ幸いです。

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