日常を取り戻しつつある中国
高希
私は現在、中国の成都市に住んでいます。コロナウイルスの感染が大量に発生した武漢市まではおよそ1200キロメートルで、東京から福岡までの距離とほぼ同じです。1月23日に武漢市がロックタウンになってから、中国国内の感染者は2月中旬にピークをむかえ、3月には軽症の人が回復して退院。4月になると帰国者に感染者が増えて、いまはもう落ち着いている状態です。5月10日時点の国内の累計感染者数は8万4,435人、現存の感染者は283人、死亡者数は累計4,643人です。
成都市では現在、ほとんどの店が開いています。飲食店は3月の時点ではまだテイクアウトのみでしたが、いまは店内で友達といっしょに食事を楽しむことができます。人が集まりやすい公共機関、たとえば美術館やジムは入館人数をコントロールしていますが、残念なことに映画館はまだ閉まっています。長時間、狭い空間に人が集まると、やはり感染リスクが高くなりますよね。成都市の学校はだんだん再開していますが、地方によっては今学期いっぱい在宅授業のところもあります。
ですから、町のなかは以前と同じように、人混みで賑やかです。でも、ひさしぶりに地下鉄に乗ったら、「ここは日本なのか?」と不思議に感じました。みんなマスクをしていて、あまり会話をしていないからです。中国人はもともとマスクをつける習慣がなかったのですが、ウイルス予防のためだいぶ変わりました。地下鉄やデパートなどではマスク必須なので、この状況はまだまだ続くでしょう。
以前の生活に戻れたのは、政府やコミュニティ、人々の自粛、特に医療従業者のおかげだと思います。政府は「感染源をすべて見つけ出し、感染者を全て隔離させる」などの方策を作成し、コミュニティの力を活用して、コロナウイルスが発生した地方へ行った人には14日間の居宅隔離を義務付けています。また、武漢などの感染者が多い地域ではモバイルキャビン病院(Mobile Cabin Hospital)が建築され、感染者を集中的に治療、看護されていました。医療従業者が足りないときには、国が感染者が少ない地方から医者や看護者を募集して派遣していました。いまでは国内の感染者数が少なくなったため、海外から帰国した人が厳しく検査されています。帰国者は強制的にホテルで14日間隔離され、症状がある、または感染リスクが高い人に対しては検査が行われます。陽性と判明したら、指定の病院でさらに隔離されるのです。
ウイルスの影響で多くの企業の経営が厳しくなってきていますので、国は家賃減免や社会保険費減免などの政策を講じ、企業の負担を軽くしようとしています。また、ウイルスで膨大なダメージを受けた旅行業を復興させるために、多くの観光地で無料キャンペーンが行われています。私もそれを活用して、成都市の近くにある青城山に行ってきました。写真はそのとき撮影したものです。緑があふれて気持ちよかったです。一日も早く海外の方々にこの絶景を楽しんでもらいたいですね。
2020年は日本にとっては待ちに待ったオリンピックの年。私も楽しみにしていて、オリンピックグッズをたくさん買いました。でも、延期になって残念です。コロナウイルスが早く終息し、来年日本へオリンピックを見に行くのを楽しみにしています。
日本のみなさん、がんばってください!
高希(こう・き):中日・中英翻訳者。中国南西部の四川省成都市在住。